昨日まで3日連続で ”モチベーション” をテーマに書いてきたが、今日がモチベーションの最終回。今回も現場のマネジャーにとって、きっと参考にしてもらえる内容だ(と思っている)。
職務特性論
昨日のブログで ”内発的動機づけ” に関して書いた。(昨日のブログ)
仕事で目標を達成して手に入る金銭的・物質的報酬に魅力を感じているのではなく、仕事そのものに興味があり、夢中になっている状態は、”内発的動機づけ” が高い状態である。(できれば、部下にはそうあってほしい)
では、”内発的動機づけ” が高い仕事にはどんな特徴・特性があるのか、それを研究したのが、心理学者のハックマンさんとオールダムさん。
この研究領域は、職務特性論と言われている。私の経験上、これを知っている現場のマネジャーはごくわずか。
是非このブログで知っていただき、自分の部下にどのような仕事を任せれば、彼/彼女らがこれまでよりモチベーション高く、仕事に頑張ってもらえそうか考えるヒントになれば幸い。
内発的動機を高める効果を持つ職務特性は5種
以下の5種の特性が、内発的動機づけに影響を与えている。
1.技能多様性
職務を遂行するために必要とされるスキルの多さ、複雑さ(多い/複雑なほうが良い)
つぶやき:モノを右から左に移すだけの単純な仕事より、そのモノに色付けをしたり、釘を打ったりする仕事のほうが楽しいだろう
2.職務完結性
部分ではなく、初めから終わりまで全体に関与しているか(全体に関与しているほうが良い)
つぶやき:営業で、顧客との接点づくり/ニーズ把握/提案説明/フォローといった各タスクを何人かで分業しているよりも、一気通貫で一人で担当している方が面白そうだ
3.職務重要性
社会や誰かの役立っている/自分は重要な仕事をしているという感覚(を持っている)
つぶやき:まあそうだろうね。
4.自律性
仕事内容や進め方など、自分で決められる裁量がどの程度あるか(裁量が大きい方が良い)
つぶやき:1から10まで上司の言うなり、なんて仕事はつまらないからなぁ
5.フィードバック
仕事の進捗、出来の良し悪しなどについての手ごたえ(があることが重要)
つぶやき:”暖簾に腕押し” だと、「この仕事をやっている意味、あるの?」と思うもんなぁ
これら5つの要素が 部下の ”内発的動機” に影響を与えているようだ。皆さんの部下の仕事の特性はどうだろうか。
実務につながるヒント(その1)
部下に任せる仕事の特性を工夫する(仕事を再設計する)ことで、部下のモチベーションに影響を与えられる
ハックマンさんとオールダムさんは、内発的動機づけを以下のように定式化した。
こんなことも言っている。
- 【技能多様性+職務完結性+職務重要性】が高いと、仕事に対して有意義感を得られる
- 【自律性】の高い仕事は、責任の実感につながる
- 【フィードバック】を得ることで、自分の行った仕事の結果の理解につながる
有意義感、責任の実感、仕事の結果の理解、これらにより、高い内発的動機づけにつながるのだと。
定式を見ていただくと、掛け算になっていることは要注意だ。いずれかが「0」だと、内発的動機づけが「0」になるということ。
成長欲求の強さが関係
今回紹介した職務特性の5つの要素により、個人の内発的動機にどれだけの影響を与えるかは、その個人のもつ成長欲求の強さ(自分を高めたい/成長していきたいと考えている強さ)によって変わるらしい。
強い成長欲求を持っている人ほど、その効果は大きいようだ。
5つの要素の中で、最も大事なものは?
Humphrey et al.(2007)によると、職務意義、つまり「職務重要性」がモチベーションに最も効果があるようだ。
やはり、人は自分の担当する仕事に意義や意味、重要感を持ちたいのだろう。
実務につながるヒント(その2)
どのような仕事でも、必ず意味や意義はある。誰かの何かの役に立っている。地味な仕事をしている部下ほど、職務重要感を感じてもらえるように、マネジャーがその業務の重要性を伝えてあげること
これまで4回にわたって、”モチベーション” をテーマに、現場で役立つ理論を書いてきた。ひとつでも、「おっ、役立ちそう」と思っていただける内容があったのなら幸い。
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まだまだ紹介していない理論があるので、もっと知りたい場合は、以下の書籍をお勧めする。
*鈴木竜太・服部泰宏 著『組織行動 組織の中の人間行動を探る』有斐閣, 2019
*開本浩矢 著『入門 組織行動論 第2版』中央経済社,2014
*服部泰宏 著『組織行動論の考え方・使い方』有斐閣,2020
*スティーブンP.ロビンス著 高木晴夫訳『新版 組織行動のマネジメント』ダイヤモンド社,2010
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