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モチベーション(その3)

ダッシュ モチベーション
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今回も ”モチベーション” に関する内容。参考になる理論はまだまだある。

2要因理論

アメリカの臨床心理学者のF. ハーズバーグさんが唱えたもので、彼は働く人に満足や不満足をもたらす要因を明らかにした。

満足をもたらす要因を動機付け要因と言い、不満足をもたらす要因を環境要因と言う。ということで、2要因理論。

動機付け要因にはどんなものがあるか。つまり、部下のモチベーションを高めるものは

達成、表彰、責任、成長といった仕事そのものから生じるもの

が挙げられた。

個人的には、”表彰” というのだけちょっと異質な気がする(”承認” と言われるとしっくりくる)が、”達成”や”責任”、”成長” が感じられるような仕事や役割が部下のモチベーションに好影響というのはわかる気がする。

(実務につながるヒント①)

部下が達成感や成長感を得られるように、自分の現在地(現状)の客観視させたり、チャレンジ目標を設定させたりすること

自分の現状を客観視できる部下は多くないし、チャレンジが必要な目標を自分で立てられる部下も多くない。マネジャーとして支援する。期初の目標設定面談はとっても重要だ。

では、不満足をもたらす環境要因は・・・

上司や同僚との関係、職場環境、給与、会社の方針といった、仕事そのものではないもの

が挙げられた。

おおっ!上司との関係(の悪さ)は不満足をもたらす要因か・・・。職場環境の悪さや低賃金が不満足をもたらすのは想像できる。会社の方針が不明確だったりしても不満は出るよなぁ、たしかに。

「満足」の反対は「不満足」ではない!

ここで要注意!この2要因理論では、「満足」の反対は「不満足」でないのである。

「満足」の反対は「満足でない」。「不満足」の反対は「不満足でない」。

つまり、動機付け要因である ”達成” や ”責任”、”成長”といった要素が仕事になくても「不満」が生じるわけではなく、「満足でない」だけである。

環境要因である ”職場環境” や ”給与” に不満がないからといって「満足」なわけではない。単に「不満なし」なだけである。ということは・・・

(実務につながるヒント②)

部下との関係性に気を配って、うまくいったとしても、それは部下のモチベーションにつながるわけではない。「不満なし」なだけ。

あくまでも、部下が仕事そのものに面白さややりがいを感じられるような意味づけ(※)をしていく必要がありそうだ。そうしないと、部下のモチベーションが上がらない。

※ 仕事の意味づけに関して、ジョブ・クラフティングと言う言葉が流行っている(参考サイト

内発的動機づけ

これも興味深い理論である。心理学者のエドワード・デシさんが提唱。

内発的動機づけ(内発的モチベーションともいう)とは、仕事そのものに面白さを感じ、それに熱中している状態だ。

別に仕事以外のことでも構わないのだが、何かに熱中して時間が過ぎるのを忘れていた経験はないだろうか。あの状態は、内発的に動機づけられているといえる。

対の概念に ”外発的動機づけ” がある。「アメとムチ」という喩えがわかりやすいだろうか。

「これをやったら〇〇がもらえるから」とか「これを失敗したら罰が与えられるから」といった理由で行動を起こすのは、外発的な動機づけによるものだ。

アンダーマイニング効果に注意しよう

仕事に対して内発的に動機づけられている部下がいるとしよう。

彼/彼女はイキイキと仕事している。あなたは頑張っている彼/彼女に対して金銭的・物質的な報酬を与えたとする。次のときも、彼/彼女はイキイキと頑張っている。そしてまた報酬を与えた。ある時、会社が不景気で報酬を与えることができなくなった。彼/彼女はどうなったか・・・

なんと、イキイキが低減し、以前ほど頑張らなくなった。なぜだろう・・・・。

以前は「仕事そのものが楽しい → モチベーション → 努力」だったのが、「仕事 → 報酬 → モチベーション」という関係になり、「仕事 → 無報酬 → だったらやらない」になってしまったと考えられる。

アンダーマイニングとは「ひそかに害する」という意味があり、「仕事そのものが楽しい → モチベーション → 努力」の関係を害してしまったということである。

(実務につながるヒント③)

頑張っている部下に、良かれと思って、金銭的・物質的報酬を与えたり、ちらつかせたりして、モチベーションをあげようとするのは危険!

ただし、金銭的・物質的報酬にも良い効果があるようだ。ポイントは、与え方・伝え方!

金銭的・物質的報酬を「業績達成したことへの承認」として捉えたり、「自分の有能さの証し」として捉えたりするようにメッセージを出したうえで与えれば、もともと持っていた仕事へのモチベーションを下げることがないどころか、上げることもあるとのこと。

(実務につながるヒント④)

人はお金や物で動機づけられるのだ!という思考の持ち主は、部下をモチベートできない可能性あり。伝え方に注意しよう

まだまだ面白く、役立つ理論はある。次回もモチベーションをテーマに書こう。

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*鈴木竜太・服部泰宏 著『組織行動 組織の中の人間行動を探る』有斐閣, 2019

*開本浩矢 著『入門 組織行動論 第2版』中央経済社,2014

*服部泰宏 著『組織行動論の考え方・使い方』有斐閣,2020


*スティーブンP.ロビンス著 高木晴夫訳『新版 組織行動のマネジメント』ダイヤモンド社,2010