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モチベーション(その1)

ダッシュ モチベーション
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前回のブログでは、ミドルマネジャーの武器となる学問として “組織行動論” というものがあるということを紹介した。(前回ブログ

今回から、組織行動論の中で扱われるテーマのうち、現場のミドルマネジャーにとって、特に役立つと(私が勝手に)思うものを順に紹介していく。

今回のテーマは、”モチベーション”

マネジャー研修の機会などでお会いするミドルマネジャーから上がってくる声の中に、 ”モチベーション” という言葉が頻繁に出てくる。例えば・・・

  • 部下のモチベーションが低いんだよなぁ
  • 部下のモチベーションの高め方を教えてほしい。部下の「やる気スイッチ」を知りたい
  • うちの上司はモチベーションの下がるようなことしか言わない

皆さんはどうだろうか。

そもそも ”モチベーション” とは、

「目標に向かって努力し、その達成を目指そうとする心理的エネルギー」

と定義され、仕事におけるモチベーションは ”ワーク・モチベーション” (鈴木&服部,2019)と言われている。

我々が日常で使っている意味と大きな齟齬はないだろう。

モチベーションが気になる時代

現在の日本は、(多くの人の)生活は物質的に満たされている。生活面に大きな不満はない。

仕事面はどうか。多くの企業は業績が停滞し、明るい未来像を描きづらい時代である。多くの個人は働くことへのモチベーションを見失っている(頑張って働くことを見限っている)かのように思える。

企業の持続的な成長・発展を考えれば、この状況は非常に大きな課題である。立派な事業方針や戦略を掲げても、それを実行するのは人間である。よって、働く人のモチベーションは欠かせない。

お金や地位をちらつかせても、部下のモチベーションは上がらない

部下のモチベーションをあげようと考えたときに、

「目標を達成したら今度のボーナスは期待できるぞ!」
「今期高い成果を出したら、課長に推薦してやる」

と、”お金や地位で釣る” ようなマネジメントしかできないとしたら、これからの時代は通用しないだろう。特に、若い人たちはそんな言葉に魅力を感じない。昔とは価値観が異なっている。

だからこそ、

現場を預かるマネジャーとして、モチベーションに関する科学的な知識は持っておいた方がよい。現場で役立つヒントがたくさんある。部下へのアプローチ方法に幅ができる。

組織行動論ではどんなことが言われているか、現場で役立ちそうなものを計6つ挙げる予定。今回はそのうちの1つについて書いていく。

※ 詳細さ・厳密さよりも、理論が現場でどう役立つかという点を重視し、書いていくのでご容赦を。

① マズローの欲求階層説

マズローさんが唱えた説で、実証研究では支持されていないが、「わかりやすさ」と「もっともらしさ」により長い間受け入れられているものである。さて、どんなものか。

人間の欲求には5種あり、それが階層上になっていると。下から順に、①生理的欲求 ②安全欲求 ③親和欲求(所属と愛の欲求とも言う) ④自尊欲求 ⑤自己実現欲求 と呼ばれている。

メカニズムはこんな感じ。

  • 下位の欲求が満たされると、上位の欲求が発生する。例えば、①の生理的欲求が満たされない限り、②の安全欲求は発生しない
  • ⑤の自己実現欲求だけは満たされることがなく、ある時点で満たされても、更に高い自己実現欲求が現れてくる

実務につながるヒント(その1)

*企業に勤める人であれば、生理的欲求、安全欲求は満たされているであろう。そうだとすれば、部下のモチベーションは、親和欲求(愛と所属の欲求)から考えていけば良い
*親和欲求は、所属組織に自分の居場所があるかどうかの感覚、居場所感を持てていることがポイント!

さて、皆さんの部下はどうだろう、自分の居場所感を持てているだろうか。

居場所感をつくってあげるマネジメント

リモートワークだと、孤立感や孤独感を抱きがちと言われているので要注意である。特に、新入社員や中途入社者、異動してきた人がリモートワーク下だと、職場での居場所感を得られていないことが予想される。

マネジャーとして、「君もチームの大事な一員だよ」というメッセージを出すことや、他メンバーとかかわる場面を意図的に作ってあげることをぜひやってほしい。

注意!
親和欲求は、会社や組織に所属していれば自然と満たされるものではない。所属していても居場所感のない人はいるし、そんなことを感じる時がある。

実務につながるヒント(その2)

*部下が自己実現できるように支援する前に、自尊欲求を満たしてあげられているかを考えること!

最近「キャリア自律」を掲げて、部下とキャリア面談を行っている企業が急増している(関連ブログ)。

キャリア面談で、部下に「将来のビジョンは?」とか「将来何をやりたい?」と聞いても、「特に何もないです」という返答がきて、どう対応すれば良いか困っているマネジャーは多い。

欲求5段階説だと、将来のビジョンを持っているというのは自己実現欲求に関連する。

自己実現を支援する前に、部下本人の自尊心を気にしてみる

「特に何もないです」と答える部下について、自己実現欲求の下にある ”自尊欲求” が満たされているのだろうかを気にしてみてはどうだろうか。

部下の自尊欲求を満たすには、他者からの尊敬や承認 がカギを握る。

マネジャーとして、

  • 部下の能力や性格上の強みを見出し、”具体的に” ほめたり、認めたりしているだろうか ※具体的にいうのは重要!
  • 自分にはできないこと、その部下のおかげで助かっていることなどについて、素直にこめんとしているだろうか。

”承認” という行為は奥が深い。そして、他人をモチベートするには効果のある行為である。ミドルマネジャーの皆さんには是非学んでみてほしい。

同志社大学の太田肇先生が、この分野の第一人者だ。以下の2冊の本は、後者は少し専門的だが役立つ内容。

*太田肇 著『承認欲求 「認められたい」をどう活かすか?」東洋経済社,2007

太田肇 著『承認とモチベーション 【実証されたその効果】』同文館出版,2011

今日は、組織行動論のテーマの中でも、現場のマネジメントの関心が高いと思われる「モチベーション」について、その中でも「マズローの欲求階層説」から実務に活かせるポイントを書いた。

次回以降、以下のような理論について、順番に書いていく。

② 達成欲求
③ 目標設定理論
④ 2要因理論
⑤ 内発的動機付け
⑥ 職務特性理論