部長が課長をすっ飛ばして、課員と直接やりとりをする。
こんな光景は、皆さんの会社では普通ですか?
どうやら、こういった行為は控えたほうが良さそうです。部長のコミュニケーション相手は「課長」ということを徹底したほうが良さそうですよ。 ※もちろん、挨拶や雑談は別です。
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リクルートワークス社さんが公表されているレポートに、こんな調査結果が出ていました。(→ リクルートワークスさんのレポートへ)
部長が「部下マネジメント」を課長に任せ、高い視座で部門全体の仕組みの構築に焦点を当てることが、部門パフォーマンスの向上につながる可能性が示唆された
と。
新鮮な示唆とまでは映りませんね。こういった類のことは昔から言われていることですから。
では、実際はどうなのでしょうか。この点に関して、小林(2024)は
日本企業は、こうしたメンバー間の水平的(横方向)な分業意識が低いだけでなく、管理職同士の垂直的(縦方向)な分業意識も低いのが特徴
と言っています。また、こうも言っています。
部長は、「部全体」を代表し、課長はもちろん、その下のリーダー、さらにその下にいるメンバーたちをも「部下」として内包している感覚が強い
と。
その感覚、確かにあるように思います。企業内における外的キャリアを重視している日本人・男性・正社員の ”出世” に対する欲とも結びついている気がします。
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では他に、”課長飛ばし” をしてしまう部長の意識はどのようなものなのでしょうか。こんな心理が働いている気がします。
*うちの課長たちは多忙過ぎるから、自分も従業員のサポートをしたほうがいいのではないか
*うちの課長は頼りない。自分が直接に従業員に指示したほうが早いし、確実だ
*とにかく、従業員の仕事ぶりがどうしても気になってしまう
*従業員のほうから(課長にではなく)私に相談してくるから、ついつい・・・・
どうでしょうか。
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反対に、”飛ばされた” 課長の気持ちはどうなんでしょうね。
*部長、部下へのご指導、助かります。ありがとうございます! ※こんな気持ちになるかなぁ(怪)
*部長は自分を信頼してくれていないのかなぁ
*部長が勝手なことを言うから、部下をマネジメントしづらいなぁ・・・
*部下は私を信頼してくれていないのかなぁ
まあ、ポジティブな気持ちにはなりませんね。
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部長から指示命令を受けた一般従業員の受け取り方はどうでしょうか。こんなことを心の中で呟いているかもしれません。
*このこと、課長は知っているのかなぁ?
*この前、課長と話し合って決めたことと違うんだけど、どうしよう・・・
*これまでの経緯からして、そのやり方には無理があると思うんだけどなぁ・・・
*それは部長だからできること/言えることであって、私には無理・・・
これまたポジティブな感じではないですね。組織を混乱させているとも言えそうです。
仮に部長の指示が的を射たものであった場合、課長の立場がなくなります。
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やはり、一般従業員のマネジメントは課長の仕事です。部長の仕事ではありません。
上で紹介しましたリクルートワークス社の同調査では、”あらまほしき部長” として、
現在の業績に対する責任を負いつつも、未来を構想し、その実現に向け、組織内および組織外に働きかけ、事業の改善、刷新、変革および創造につなげることである。また、これらにあたって部長は、個人に個別に働きかける直接的な影響力の行使のみならず、構造や仕組みに働きかけて文化や価値観を醸成するという間接的な影響力の行使を行う
としています。文章内にある「個人に個別に働きかける」とありますが、その相手は「課長」であって、一般従業員ではないという理解が良さそうです。
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ジョブ型という思想・概念を「管理職以上」に限定して導入されている企業が増えてきている気がします。当然ながら、管理職のジョブを定義しているわけですので、「部長のジョブ」と「課長のジョブ」は異なっているはずですね。
「部長のジョブ」の中には、「部下の育成」という表現ではなく、「課長の育成」という表現で役割が明記されていると思います。そして、「課長のジョブ」の中には、「部下の育成」と役割が記述されていると思います。
なのに、上述したように、日本企業の管理職は垂直的な分業意識が薄いために、部長が役割を越えて「部下の育成」をしてしまう・・・。これでは、ジョブを定義した意味がありませんね。
いま一度確認しましょう。
部長の育成対象者は課長
です。
一般従業員のことに関与している時間とエネルギーは、仕組みづくりと未来づくりに費やしましょう。
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参考図書:小林祐児 著『罰ゲーム化した管理職』インターナショナル新書(2024)
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