上司として、部下のキャリア形成支援をしましょうという風潮が定着しつつあります。
部下との1on1ミーティングの場面で、“キャリア”をお題にし、「部下に将来やりたいことを聞き、その実現を支援していきましょう」と、各社の人事部門は現場のマネジャーにメッセージを出していますよね。
この点に関して、人事側の周知徹底不足、現場側の施策理解不足など、複合的な理由なんでしょうけど、現場では
部下に将来やりたいことを聞くこと=キャリア形成支援
という理解になっています。本当にそうでしょうか。今日はその点を書きます。
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部下に将来やりたいことを聞いたとしても、
「将来のことなんて考える余裕がないです」
「別にやりたいことなんてないです」
「ありたい自分なんて言われても分かりません」
といった返答をしてくることが結構多いのではないでしょうか。(中でもJTCに勤めている人たち)

そういった類いの返答を受けると、現場のマネジャーは、それ以降にどのように対応していいのか分からず、

部下のキャリア形成支援って、どうやっていいのか分からない。難しい・・・
という状況に陥りがちではないでしょうか。
そして、そういった状況を人事部門に報告をしたり、文句を言ったりするとかはなく、結果として、上司と部下との間で “キャリア” に関する対話の機会は増えないまま、キャリア形成支援が終了???

キャリア形成支援って、将来のことだけがスコープではありませんよ!!
マネジャーの皆さんに考えていただきたいのは、「部下の将来を考えること」よりも重要なことがあるということです。それは、
部下の生産性を向上させること
です。
冷たい言い方になりますが、組織としては、部下が自らの将来を考えようが考えまいが、彼/彼女らが組織の掲げる戦略に則って、生産性の向上につながる動きをしてくれればOKです。(本来的には、キャリアは本人が考えることですので。)
ですから、部下が「将来やりたいことはないです」とか「キャリアと言われてもわかりません」とか言っても、組織運営上では何ら問題はありません。
ただし、部下からそのようなことを言われたからといって、それ以降、部下の「将来やりたいこと」を全く聞かなくていいという話ではありません。
今後も会社は変化していきますので、何も考えずに生きていると大変なことになってしまう可能性がありますので、部下を守る意味でも、部下が自らの人生をできるだけ楽しむ意味でも、部下に「将来やりたいこと」を考える機会を定期的に提供することは大切です。

話を戻しますと、上司は部下に現在担当してもらっている役割に関して、生産性向上を必ず求めなければなりません。つまり、
〇 任せる役割のアウトプットを高める目標管理(例:売上前年比20%アップ)
〇 任せる役割の幅を広げる目標管理(例:A商品の企画だけでなく、B商品まで担当)
〇 任せる役割の効率を上げる目標管理(例:前期と同じアウトプットを短時間で出す)
をきちんと行うことが必要です。
このブログで何度も言っていますが、全ての人が現状維持を目標にすることはあり得ません。所属する組織の掲げる戦略を遂行する、つまりは組織の目的・目標を実現するために、一人ひとりが生産性を高める目標に掲げて、それを達成するための活動していく必要があります。
目標管理?と思われるかもしれませんが、目標管理制度の正しい運用は、生産性向上という観点のみならず、短期的な視点でのキャリア形成支援になります。つまり、部下自身の「将来やりたいこと」を一緒に考えるとか、その実現を支援するとかいったことばかりがキャリア形成支援ではありません。
部下がこの組織に所属している以上、組織人として「せねばならないこと」を真剣に考えてもらい、それに対して一生懸命に取り組んでもらうのを支援するのもキャリア形成支援(短期版)なんだということを、現場のマネジャーは理解し、部下と接する必要があります。
繰り返しますが、いまこの瞬間に「将来やりたいこと」がないことは、組織運営上、一向に構いません。が、組織人として「せねばならないこと」、つまり、生産性向上に向けての活動を無視することは許されません。
もし部下が生産性向上を避けたがるのであれば、別の役割を担当することや組織外へ出ていくことを考えてもらうのもキャリア形成支援です。
部下はお客さまでも家族でもありません!
同じ目的・目標を実現するために協働している/役割を分担している仲間です。

我々は皆、上司・部下の関係を一時的に役割として演じているだけです。ミドルマネジャーも役割であって、部下にとって「偉い人」ではありません。そこを踏まえた言動をとる必要があります!
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「将来やりたいこと」に関して、1つだけ注意点を挙げると、今どきの若者のキャリア観です。
今は「将来やりたいことが見つかっていない」という若い部下がいる場合、「会社は、成長・発展するために変わり続けなきゃいけない。その変化に適応し、活躍しつづけるために、少し先の未来を考えるクセを付けていこう!」というメッセージと、その後のフォローアップ(「どう、やりたいことは何か見つかった?」という声掛けや役立つ情報提供、ネットワーク構築支援とか)はやっていったほうかいいですね。
★若者のキャリア観に関して、以下の本は参考になります。
・古屋星斗 著『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』日本経済新聞出版 2023年
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