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リワードを意識したマネジメント

man-working-in-modern-office キャリア開発支援/キャリア面談
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このブログでも何度か取り上げている「ジョブ型人材マネジメント」。

私なりの理解として「ジョブ型人材マネジメント」を表現すると、

組織として達成したい目標やビジョンに向けて戦略を遂行する際に、どのような役割や職務が必要なのかを明確にし、人材を採用・配置・処遇・育成・評価していく人材マネジメント手法

といった感じ。

この手法が機能する前提として、働く人の側に キャリア自律の意識 がなければいけない。組織の側は、働く人に 選択権・裁量権 を与えなければならない。人を異動させるには本人の同意がなければならない。

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現在「ジョブ型人材マネジメント」を取り入れようとしている会社は、「従業員のキャリア自律支援の仕組みづくり」をもれなく行っている印象だ。

裏を返せば、これまでの日本の人材マネジメントにおいては、多くの人がキャリアなんて考えてこなかったのではないか。会社都合の異動を受け入れ、階層を上がることだけがキャリア形成という意識だった。(だから、日本にはキャリアアップという言葉があり、それはつまり昇進昇格のことを表している)

※ キャリア支援やキャリア面談方法に関しては、このブログ記事でいくつか書いています(→該当のブログのひとつへ

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キャリア自律による、転職・異動の芽生え

ではもし、従業員の皆さんがキャリア自律をし、自らの仕事を主体的に選択する時代になったら、部下マネジメントはどう変わりそうか。

”自律した部下”・・・いっけん良さげ(マネジメントが楽になりそう)に思えるのだが、マネジャーにとってはこれまで以上に考えなきゃいけないことがあるのかもしれない。

例えば、あなたの部下であるAさん。とても優秀で、あなたとしてはAさんを頼りにしており、この先も一緒に仕事をしていきたいと考えている。そんなAさんが「別の部署で〇〇の仕事をやりたい」とか「転職したい」と申し出てきたらどうするか。

異動希望の場合、自分の担当する組織を超えて、組織全体のベネフィットを考える視点はマネジャーにとってもちろん重要だが、自分のところで活躍し続けてもらいたいと思うのは自然なことである.

では、「他で働きたい」と思わせないように、この組織に惹きつけておくためのマネジメントに考えなければならない。

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そこで知っておいて損はないのが、トータルリワードというもの。

「トータル・リワード」(Total Reward)とは、従業員に対する報酬(=リワード)を総合的な動機づけのしくみと捉える考え方で、金銭的報酬と非金銭的報酬をバランスよく包括した報酬マネジメント体系を指します。働く人の価値観やライフスタイルの多様化に対応するためには、賃金だけでなく、仕事そのものの面白さや働きやすい職場環境、組織文化、能力・キャリア開発、福利厚生、ワーク・ライフ・バランスなども組み合わせた、自社独自の魅力的な報酬パッケージを構築し提供していくことが求められています。(→ 日本の人事部ウェブサイトより

リワードとは、報酬・見返りのこと。

部下に「なんでこの会社・組織で働いているの?」と聞いてみると、

  • 給料がいいから
  • 職場の居心地がいいから
  • 仕事が楽しいから

といったようなことが挙がるだろう。「仕事をする(選ぶ)うえでの最優先する条件って何?」なんて聞いても、似たような答えが出るだろう。

これらは、仕事から得たいリワード(見返り)を表現しているともいえるだろう。

では、全体としてどのようなリワードがあるのか。大きく2つある。上記にもある「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」である。

さらに細かくみてみると・・・

*金銭的報酬(有形報酬ともいう)
 給与、賞与、インセンティブ、昇進昇格、異動、福利厚生 など
*非金銭的報酬(無形報酬ともいう)
 働きがい、成長実感、貢献実感、仕事自体の面白み、承認、裁量権、人間関係 など

といった感じ。

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惹きつけておくためのマネジメント

こういったリワードを提供することで、この組織で働く動機(モチベーション)を維持・向上させる。そうすれば、突然の異動(または退職)希望を防ぐことができるかもしれない。

現状の制度下で、ひとりのミドルマネジャーではコントロールできないもの(給与、賞与など)もあるだろう。そのような場合でも、非金銭的報酬に関して、以下のようなことはできるだろう。

  • 部下に成長実感を提供するために、「昨年できなかった〇〇が、今年はできるようになった」と部下が感じられるような能力開発目標の設定・達成支援・フィードバック
  • 部下に貢献実感を提供するために、任せている仕事の意義や重要性、周囲や顧客からの声を伝える
  • 部下の承認欲求を満たすために、リモートワーク下でも、密にコミュニケーションを取り、成果だけでなくプロセスに対してもよく話を聴く(マイクロマネジメントと思われないように)
  • 部下が自らの裁量権を感じられるように、仕事を任せるときはWHYだけ伝えて、WHATとHOWはできるだけ本人に任せる

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今日は、リワード(報酬)に関する話でした。

「ジョブ型人材マネジメント」において、部下は仕事を選択する権利を行使することができます。その際に、優秀な部下をここに惹きつけておくためには、

  • 会社や仕事、環境から得られるリワードにはどのようなものがあるのか把握しておくこと
  • 部下がどのようなリワードに魅力を感じているのかを知ること
  • 部下に合ったリワードを提供すること

が大切です。

自組織に優秀な人材を留めるための努力は、人材に選ばれる職場になることでもあります。ということは、優秀な人材が集まってくるかもしれません!

リワードをいかに提供するか・・・・・今後考えてみる余地は大いにありそうです。