「人材育成・組織開発を考える部屋」にもお立ち寄りください!

支援型マネジメントを考える

vision 課長のための部屋
この記事は約3分で読めます。

前回のブログに記載したが、ここ最近「支援型マネジメントへの転換」をテーマにした研修の相談を複数のクライアントから受けている。 (前回のブログへ

”支援型マネジメント” という言葉は弊社が謳っているわけではなく、クライアントから出てきた言葉である。

それぞれのクライアントに言葉の意味や意図を尋ねてみると、「指示命令型マネジメントからの脱却」ということを皆がおっしゃる。

**************

恐らくではあるが、こんな思考や議論の末のお考えなのではなかろうか。

  • 環境変化に素早く適応するには、従業員の主体性が重要だ。待ちや受け身を姿勢では変化に乗り遅れてしまう
  • 上からの指示命令ばかりでは、”やらされ仕事” になり、従業員のエンゲージメントやモチベーションは低くなる

だから、指示命令型マネジメントの文化がこのまま続くと・・・

  • 会社は時代の変化には乗り遅れるし、従業員も主体的に学ばないので、いずれ衰退する
  • 優秀な従業員は、自己裁量や工夫の余地がないので、仕事が面白くないと思い辞めてしまう

だから、マネジャーは、従業員を下から(後ろから)支援し、応援するスタイルに変わるべきだと。

**************

何を支援するのか

では、”支援” と言っても、マネジャーとして部下の何を支援するのか。

業務支援、内省支援、精神的支援の3種がある。(金井・中原、2009年)

  • 業務支援:業務に必要な知識やスキルを提供してもらったり、業務をスムーズに進められるよう取り計らってもらうこと
  • 内省支援:自分自身を振り返るきっかけを与えてもらうこと
  • 精神的支援:息抜きや心の安らぎを与えてもらうこと

いずれも大切な支援であるが、もともとの課題(指示命令型マネジメントが引き起こすマイナス現象)を踏まえて行わねばならない。

例えば、業務支援を指示命令型マネジメントで行っては無意味。

精神的支援といっても、仕事への主体性を引き出すことを念頭において行わないといけない。部下の悩みに対して、とんちんかんで一方的なアドバイスを提供することは支援として的外れだし、会社や仕事への愚痴を聞いたり、雑談をしたりして、彼/彼女らの息抜きに付き合うのも的外れかもしれない。

そして内省支援は、なんでもかんでも振り返させればいいのかというと間違い。会社と本人の成長につながる振り返りこそが目指す支援。

指示命令型マネジメントが引き起こす可能性のある課題を踏まえたうえで、部下の支援をおこなっていかないと、表面的な支援型マネジメント(業務を教えればOK、話を聞けばOK、など)では何も変わらないだろう。

**************

組織ビジョンのない状況での支援

最後に言いたいのは、組織ビジョンが掲げられていない中で「支援型マネジメント」を実践することにどれだけの意味や価値があるのだろうかという点。

”組織ビジョンが掲げられていない” という表現には、ビジョンは掲げられているが部下に認知されていないという状態も含む。

組織として向いている方向が同じでないと、個々の部下が好き勝手な方向に進むのを ”支援” することになりかねない。そうなると、リソースの無駄遣いが生じる。

ビジョンだけではない。目指す目標も部下に明示したうえで支援するのが理想と考える。

**************

今日は「支援型マネジメント」について書きました。

”支援” とは言っているが、マネジャーが組織の向かう方向や目指すものをビシッと示すことをしない限り、本来意図している ”支援型” にはならないと思います。

さらに言えば、「指示命令型マネジメント」を行っている現実と、そこから脱却しなければならない理由について、マネジャー自身が納得しないといけません。

行動が変わるのはそれからです。



参考書籍:中原淳・金井壽宏 著『リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する』光文社新書(2009年)