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ミドルマネジャーにとっての戦略とは何か

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”戦略” という単語はよく耳にしますが、要注意なビジネス用語だなぁと感じています。

こんなコメントを聞いたり、思ったり、言ったりしたことはありませんか?

① 「うちの会社には戦略がない!(だからダメなんだ)」
② 「これまで、戦略なんて意識したことがないなぁ~」

③ 「うちの会社・部門の戦略って何だっけ?そもそもあるんだっけ?」
④ 「あの会社が成功したのは優れた戦略があるからだ」

そして、こういったコメントを耳にした相手はどう反応する(した)んでしょうか。例えば・・・

①への反応:「確かに、うちの会社には戦略がないよなぁー」
②への反応:「私も同じ。戦略なんてさ、あってもなくても関係ないよね」

③への反応:「確かに。ホームページかどこかに書いてあったっけ?」
④への反応:「確かに。あの会社は(うちと違って)商売がうまいよなぁ」

といった感じで反応し、なんとなく会話が成り立つのではないでしょうか。

こういったときに使う ”戦略” って、具体的にはどういうことを言っているのでしょうかね。

ふたりの間でなんとなく会話が成り立っているのは、

1.お互いに、 ”戦略” という言葉にさほどこだわりがない
2.お互いに、相手は ”戦略” という言葉に対して自分と同じ理解をしていると信じている

3.お互いに、”戦略” という概念に関する知識を持っていない
4.お互いに、この会話自体に大して価値を置いていない(世間話、雑談の類い)

といった背景や理由が(複合的に)あるからではないか、と推察します。

もし4番目の理由だけであれば、軽く流してもいいと思いますが、1~3番目の理由であれば、このやりとりはミスコミュニケーションになっている可能性があります。

こういったことが、ビジネス上の大切なコミュニケーションの場面で行われているとすれば、もったいないことになっているかもしれません。だから、”戦略” という言葉は要注意と感じています。

戦略の定義

では、ミドルマネジャーにとって、”戦略” とはどのようなものなのでしょうか。まずは、定義らしきものがあったほうがいいですね。

様々な文献に色々な定義が書かれています。ここでは ”戦略” の定義を、

市場の中の 組織としての 活動の 長期的な 基本設計図

としておきます(伊丹・加護野, 2005)。少々説明臭くなりますが、補足しますと・・・

●「市場の中の」とは、顧客を競争相手から勝ち取れる構想でないといけないという意
●「組織としての」とは、組織で働く人たちのベクトルを合わせ、奮い立たせるようなものでないという意
●「活動」とは、実行のための資源配分の裏付けがなされているものという意
●「長期的な」とは、文字通り。短期の目先の事象に囚われたようなものではないの意
●「基本設計図」とは、大きな構想であり、現実の動きに合わせて柔軟に決めていくべきものという意

といった意が、上記した定義には込められています。

個人的には、「活動」のところにある ”実行のための資源配分の裏付け” に関して、「そんなこと言われても、今の人員構成でどうやるの?」と言いたくなる戦略が世の中には結構あるような気が・・・。

加えて思うのは、「組織としての」のところにある ”組織で働く人を奮い立たせる” という部分。そのような戦略を打ち出している会社・組織ってどのくらいあるのだろうか・・・。

近年、ストーリーとして語るということが叫ばれていますが、戦略が論理的でなかったり、論理に飛躍があったり、そもそも思いがないためにグッと来ない、なんてことはないですかね?

応援団長
応援団長

ビジョンを含め、戦略をリーダー/マネジャー自らの言葉で説明せずに、資料や文章だけで従業員に周知しているなんてこと、まさかないとは思いますけど・・・・・

戦略の種類

戦略には種類があるようです。経営戦略(全社戦略)、事業戦略、機能別戦略(株式会社日本総合研究所 経営戦略研究会, 2022)。ちなみに、会社が単一の事業で成り立っているなら、経営戦略≒事業戦略といってもいいでしょうね。

機能別戦略の中には、マーケティング戦略、財務戦略、人事戦略などがあります。

世の中には、”戦略” にこんなに種類があることを知らない人もいるでしょうし、知る必要がない(と思っている)人も多いでしょうから、日常会話で「あの会社の戦略はすごい」とかいう会話も成り立っちゃうのも納得です。

もしベンチマーク先や競合会社について、「あの会社のどこか凄いのか」を考える際に ”戦略” に関する知識があれば、分析する際に役立つと思いませんか?

応援団長
応援団長

話し合いが抽象論にならないと思いますね

部長や課長が学ぶ戦略って

”戦略” というものに関して、ミドルマネジャーは知らないより知っておいた方がいいのは間違いないと思いますが、ミドルマネジャーの立ち位置が会社の規模や組織体制、職種によって異なるので、それを踏まえて何を学んだらいいのかを考えてみましょう。

会社の規模が小さければ、部長≒事業部長≒経営者といった公式も成り立つでしょうから、部長が経営戦略を学ぶことに価値はあると思います。

複数の事業を持つ企業だとどうでしょうか。事業部長は当然ながら事業戦略を考えなければなりません。その配下の部長は何を学ぶと良いでしょうか。

事業部長の掲げる戦略を受けて、管轄する機能(開発・生産・マーケティングなど)の戦略を考えなければなりませんね。ですので、機能別戦略に関する知識は持っておいた方がいいですね。

加えて、事業部長にとって参謀としての機能を果たすには、事業部長のレポート先である社長の視点に立った思考もあったほうがいいですね。つまり、経営戦略に関する知識があるとベターです。

課長はどうでしょうか。

小さな会社であれば、課長の上の上は社長なんてこともあると思います。上記したことの同じ思想で、上司である部長の参謀であるためには、部長のレポート先である社長の視点に立てるといいですね。つまり、経営戦略に関する知識があるとベターです。

大きな会社であれば、上司である部長のレポート先である事業部長の視点に立てるのが理想ですので、事業戦略に関する知識はもっておくとベターです。が、何より押さえたいのは、課長は戦略実行フェーズの要だということです。

会社や事業部門の掲げる戦略を「絵に描いた餅」にするかどうかは部長の責任は大きいと思いますが、餅を腐らせるか否かは課長の責任も大きいと思います。

部長・課長の皆さん、

*上位組織がどのような戦略(会社によっては方針と言っている)を打ち出しているかご存じですか?
*それが、さらに上位の戦略にどう繋がっているか理解できていますか?
*それをメンバーにストーリーとして語ることはできますか?

*もしYESと言えないであれば、目先の業務にばかりやっていませんか?

これだけ変化の激しい時代です。一度決めた戦略をずっと追いかけ続けるなんてナンセンスとも言える時代です。かといって、何の戦略もない経営には数々のマイナス面もあります(リソースの効率的配分ができない 等)。

「戦略なんてさぁ」なんて言わず、まずは自社・自事業の戦略を眺めてみましょう。そこに込められている意図や分析背景などに思いを馳せてみてください。

応援団長
応援団長

そのために、”戦略” に関する知識はある程度持っておいた方がいいですよ

参考図書① 株式会社日本総合研究所 経営戦略研究会 著『経営戦略の基本』日本実業出版社 2008年

参考図書② 伊丹敬之・加護野忠男 著『ゼミナール経営学入門』日経BPマーケティング 2003年