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”ソーシャルスタイル” に要注意!

photo of man holding pen 研修担当者のための部屋
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「ソーシャルスタイル」という理論をご存じでしょうか。

人のタイプを4つに分類し、相手とのコミュニケーションの改善に役立てるための理論(およびノウハウ)です。

過去に研修で学んだことがあるという方も多くいると思いますし、ネット検索していただくと、非常に多くの情報が出ています。(→ そのうちのひとつ、カオナビさんのサイトへ

私は、以前に勤務していた会社で、ソーシャルスタイル研修を販売し、講師として登壇しておりました。登壇回数は数えきれません。

例えば、

■ミドルマネジャー(課長)の皆さんを対象に、マネジメント能力向上(部下のタイプに合わせたコミュニケーション)を目的として実施
■営業担当者の皆さんを対象に、営業力強化(医師や医療従事者のタイプに合わせたコミュニケーション)を目的として実施

といったものが代表的なもので、とても多くの企業様にご導入いただきました。

応援団長
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10年近く前の話ですが・・・・。

私が所属していた研修会社に限らず、多くの研修会社が「ソーシャルスタイル研修」を取り扱っていました。

ソーシャルスタイル研修に参加した受講生を見ていると、他の研修に比べて、多くの皆さんが楽しげに受講されていたのが印象的です。

応援団長
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ただし、研修後の行動変容が起こっているかどうかは別物です。

そんな、受講生にとても「受けのいい」研修だからこそ、ソーシャルスタイルを実施する側にも、受講する側にも注意してほしい点があります。今回はそれを4点書いていきます。

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1.他者からの見え方こそ、自分のソーシャルスタイル

ソーシャルスタイルは他者とのコミュニケーションに関する理論です。相手のソーシャルスタイルを識別し、それに合わせて対応するというものです。研修では、例えば、目の前の相手に対しては・・・

●会話は雑談から入ったほうがいいか、いきなり本題からでOKか
●本題の進め方は、結論から示した方がいいか、プロセスを追って説明したほうがいいか
●意思決定の進め方は、相手に決断を委ねたほうがいいのか、こちらがリードしたほうがいいのか

といった、各スタイルへの対応方法を学びます。

では、相手のソーシャルスタイルをいかに識別するのか・・・・・それは、

をヒントします。相手が自分や他人に対して言ったりしたりする様子、です。その情報をヒントに自分の対応を変える(相手に合わせる)のです。

その際、自分のソーシャルスタイルを理解しておいた方がより効果的に相手に対応できます。では、自分自身のソーシャルスタイルはどう診断するか・・・・・それは、

に関する情報をもとに診断します。自己診断ではありません!

自分で自分の言動傾向を分析するのは難しいものです。他者からの見え方と異なっていることだって多くあります。自分で「私は●●スタイルだ」と決めつけないことです。

応援団長
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ソーシャルスタイルを学んだ人が周囲にいるのであれば、複数の(できるだけ付き合い期間の長い)人に聞いてみてください。

と。

2.ソーシャルスタイルは相性を決めてしまう?

ソーシャルスタイル研修を受けると、

という質問を受けることが多くありました。結論としては、

です。仮に、自分と相手が対角のソーシャルスタイルであったとしても、

*共通点がある(例:同じ趣味、出身地が同じ、子供が同じ学校に通っている など)
*人間として、ビジネスパーソンとして尊敬できる

とかいった、他の理由で関係良好ということはありますよね。

応援団長
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3.ソーシャルスタイルは2番目に考える要素

ソーシャルスタイル研修を、コミュニケーション改善の万能薬かのように扱い、研修をやっている会社や講師がいます。これには要注意です。なぜかと言いますと、

ソーシャルスタイル理論は、

所詮は対人コミュニケーション上のノウハウでしかない

からです。仕事の成果に関連する、1番目に必要な要素ではないです。

例えば、営業活動でいえば、受注を獲得するための営業プロセスというものがあります。営業プロセスとは、顧客のものに定期的に通い、信頼関係を徐々に構築し、ニーズを聴き取り、それに合った提案し、クロージングをするといったものです。

そのプロセスを理解・実践していない営業担当者に、ソーシャルスタイルを教えても大して意味を持ちません。小手先のコミュニケーションの取り方を教えたところで、営業成績は変わらないでしょう。

部下マネジメントも同じです。そもそも人や組織のマネジメントの基本を知らないマネジャーに、ソーシャルスタイル理論を教えたところで、部下とのコミュニケーションが少しマシになるくらいで、部下のパフォーマンスが大きく変わることはないでしょう。

営業活動や部下マネジメントには必ず「基本的な型」があります。誰が相手であろうが必要な基本的な言動です。まずはそれを学ぶことです。それらを押さえたうえで、次に「個別の顧客や部下に合わせた対応」ができるように、つまり、個別対応力を向上させるというところでソーシャルスタイルを学ぶことの価値が出てきます。

応援団長
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組織開発の取組みの一環で、ソーシャルスタイルを使用する場合も要注意。単に、なまぬるい組織(ゆるブラック職場)を作るだけにならないように注意したいものです。

4.ソーシャルスタイルだけで自分の強みを考える???

ソーシャルスタイルを用いて、「自分の強み」を考える研修があると聞いたことがあります。

ソーシャルスタイルは、他者に見せる言動上の傾向から、その相手の特性を推測し、対応してみるためのノウハウですので、一義的には自分の強みを考えるものではありません。

さらに言えば、自分の強み(や弱み)を考えるにあたり、職場における自分の役割を踏まえたうえで考えないと、自分の強みを考えにくいか、フワッとしたものになると思います。つまり、日常の「具体的な業務において、どのような行動をとることが自分の(ソーシャルスタイルから考えられる)強みを発揮していると言えるのか」がはっきりしないと思います。

ソーシャルスタイル(特に、自己診断)だけを用いて、「では、皆さん自身の強みを考えてみましょう!」というのは何ともナンセンスなことだと思います。

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今日はソーシャルスタイル(を扱った研修)に関するお話でした。

楽しく受講できる研修なので、受講後アンケートの評価も高いのですが、実は行動変容につながっていないとか、まるで星座占いかのように扱われ、ランチ時や飲み会時の小ネタになっているといったことが多いのではないでしょうか。

研修を企画する側も、受講する側も、少し冷静にソーシャルスタイルを扱いましょう。