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マンネリマネジャーの評判は下がる

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マネジメント職として実務経験を積めば積むほど、マネジメント能力は落ちる???

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ここ3年位、お付き合いのあるお客様から

うちの管理職って、年齢が高いほど、マネジメントに関するスコアが低いんですよね

という話があった。

この会社(金融業界)では、毎年ミドルマネジャー(部長)を対象に、360度サーベイ(※)を継続実施している。フィードバックレポートは毎回丁寧に振り返る場を用意し、部長の皆さんも熱心に参加している。

360度サーベイのことが書かれているブログ記事へ

360度サーベイの主幹部署である人材開発部門は、取得したデータを活用し、様々な分析をしている。その分析の1つとして「ミドルマネジャーの年齢と周囲からの評価得点の関係性」を見たようだ。

その分析結果(単回帰分析)が、上記した通り、部長の年齢が高いほど周囲からの評価得点が低かったようである。

年齢の高さ=経験の長さ、とは限らないが、分析対象が(課長ではなく)部長であることを考えると、マネジメント経験は一定程度あることが想定される。

そう考えると、マネジメント経験が長いほど、周囲からの評価は低いという見方ができなくもない。

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これと似たような話は過去にも出会ったことがある。

その会社(生活インフラ業界)でも、ミドルマネジャー(課長)を対象に行った360度サーベイの結果をもとに分析を行ったのだが、課長になって4年目以降になると、周囲からの評価得点が低下傾向にあった。(1年目から3年目は上昇傾向)

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経験を積むほど、マネジメント能力は下がる?

360度サーベイの結果に限らず、「マネジメント経験が長いほど、周囲(特に部下)からの評価が低くなる」という点については色々な仮説が立てられる。

例えば、

長く課長(部長)をやっているということは、その上の階層に上がれていないという見方もできるので、”課長(部長)滞留者” の人たちと見れば、徐々に得点が低くなる?

長く課長(部長)をやっていると、経験則で判断・対応できることが増えてくるが、部下から見れば「一緒に悩んでくれない」とか「真剣に捉えてくれない」といった印象に映り、テキトーにマネジメントされているように感じ、不満を抱きがち?

課長(部長)になって間もないころは、部下とのコミュニケーション機会を多く作り、彼/彼女らの話をよく聞き、部下の考えを尊重したマネジメントをやっていたが、マネジメント役割に慣れてきて(自信も生まれ)、指示命令型のマネジメントの色合いが強くなり、部下の自律性を奪ってしまう?

課長(部長)になって間もないころは、自分が組織を変えるんだ!と意気込んで、部下からの意見具申を上司に掛けあい、「頼もしい上司」と映っていたが、変わらない組織にあきらめを感じ、部下からの意見具申にまともに掛け合わなくなり、部下の不満を生んでいる?

どうだろうか。

私が出会った上記2つの会社以外でも「マネジメント経験が長いほど、周囲からの評価が低くなる」かどうかは不明だが、この説に驚きをあまり感じないのは私だけだろうか。

以前と何も変わらない/変えない/変えようとしない組織や上司への不平不満の矛先が、長く管理職をやっている人に向けられがちなのではないかと、個人的には考えている。

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なんちゃってマネジメントはもう無理

かなり乱暴な説だが、自分が過去の上司に受けたマネジメントをヒントに、一定程度のコミュニケーションスキルがあれば、部長や課長っぽいことはできるのかもしれない。

何か困ったこと/嫌なことが起こった場合、会社や制度のせいにしたり、次の人事異動に期待して現状を我慢したり、時が過ぎるのを待ったりすることが多いのではないだろうか。

世の中が高度成長期であったり、部下が会社や組織に依存的であったりすれば、それでもなんとかなっていたのかもしれない。しかし、今はそうではない。ごまかしが効かない時代になってきている。

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40歳前後に課長になるとすれば、多くの日本企業では役職定年までの10数年間、ずっとマネジメント職を担う。その間に、マネジメントに関してちゃんと学ばないとすればどうなるか・・・。

仮に部長に昇進したとしても、おそらくマネジメント能力は課長時のまま。実際に、そんな部長が世の中に存在していると言われている。(→ 関連記事:リクルートワークス研究所

ずっと課長のままであれば、ずっと変わらない(マンネリ化した)言動に、周囲(特に部下)は不平不満を募らせている可能性がある。

人材の流動化を促進しようとしている国や企業。変わらない組織や上司に見切りをつけて、優秀な人ほど転職してしまうケースが増えてくると予想される。

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今日は、マネジメント経験の長さとマネジメント能力の関係性について考えてみました。

私の考えはこんな感じです。

経験を積むことでマネジメント能力が下がるなんてことはない。

部下は、会社や組織がうまくいっていないとき、その責任の所在を、経営者だけでなく、経験の長い(≒年齢の高い)マネジャーに求めてくると想定され、厳しく評価されるのだろう。

マネジメントのやり方がマンネリ化していると、それに拍車がかかる。

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マネジメントの大御所、ヘンリー・ミンツバーグ氏は著書(※)の中で、経営(マネジメント)は「アート」と「クラフト」と「サイエンス」が混ざり合ったものだと言っています。

※ 参考書籍

会社経営という大きな単位でなくとも、部とか課のレベルでも同じなのではないでしょうか。

現場でのマネジメント経験(=クラフト)はもちろん大切ですが、ちゃんと振り返りを行い、マネジメント能力につなげること。そして、「サイエンス」としてマネジメントを学ぶことが、これからの時代はかなり大切なのではないかと思います。

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