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リスキリングは進まない?

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会社が従業員の面倒をずっとみる時代ではない。

公言(したら炎上必至なので)していないのかもしれないが、(特に大手)企業は従業員に対して、以下のような見方をしているのかもしれない。

あなたの面倒を一生みることなんてできませんよ。ただし、雇い続けるだけの価値があなたにあるなら別ですけどね。

最近聞かれる ”リスキリング” は、現在のハイパフォーマーに更なる活躍を期待しているコンセプトではない。→ 岸田内閣が進める「リスキリング」に関する日経新聞の記事へ

リスキリングは、

*コスパの悪いミドル・シニア(≒ 働かないおじさん)
*定年まで、目立たず騒がず、静かに逃げ切ろうと思っている人
*役職定年後、くすぶっている/ふてくされている人/ずっとふんぞり返っている人
*AIやRPAなどに置き換え可能な仕事をしている人

みたいな、生産性に問題がある人たちへの

change or out(変わりなさい、さもなくば去りなさい)

という施策であり、メッセージである。

しかし、(炎上を恐れ)誰もそんなことを言わないし、日本では簡単には「(get) out」と言えない。業界によっては人手不足が問題のために、どんな人材であっても辞められては困るという事情もあるかもしれない。

だから「change」のほうだけが残り、しかも「変わりなさい!」ではなく、「学び直してください」といった、なんともフワッとした言葉を使ったり、”リスキリング” というカタカナを使って、格好良く自己変革を迫っているようにみえる。

が、「out」のない世界では、国や企業が考えている ”リスキリング” の切実さ・真剣さは伝わらない。

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当社パーソル総研の調査によると、リスキリングの経験のある人は3割前後らしい。(→ パーソル総研の調査結果サイトへ

意外と多いという印象・・・。

調査結果から、リスキリングを支える「3つの学び特性」なるものを導出している。それは、

1.捨てる学び
2.巻き込む学び
3.橋渡す学び

中でも、(偏回帰係数からみて)リスキリングに最も影響力がある「1.捨てる学び」に注目したい。

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”捨てる学び” をアンラーニングと表現している。

これまでに学習したもの(考え方、行動スタイル、習慣など)を捨てて、新しいものを取り入れる/新しいものに切り替えることだ。

先ほど述べた調査で、「限界認知経験」、つまり「今のままでは成果を出せない」という経験がアンラーニングを促進するのだが、現在の人事制度がそれを抑制していると言っている。

では、どんな人事制度がアンラーニング(ひいてはリスキリング)を抑制しているのか。

私は人事異動と職能資格制度だと考える。

大手企業に勤務している人たちは、これまでと異なる職務への異動によりアンラーニングは何度も経験済み。異動直後は過去の経験が役立たないことが多いので、まさに「今のままでは成果を出せない」状態・・・。

でも、(職能給なので)給料は必ず上がる。

この ”給料モラトリアム” により、リスキリングへの緊張感や切迫感は海外より低いのではないか。

加えて、何に関して ”リスキル” すれば良いのかを国だけでなく、勤め先も示してくれていない(のではないだろうか)。「自分で考えろ!」ということなのかもしれないが、上記したような人たちがキャリア自律していないのは明らか。

これではリスキリングは進まない。

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今日は、リスキリングについての話でした。途中で、

「out」のない世界では、国や企業が考えている切実さ・真剣さの熱は伝わらない

と書きましたが、岸田内閣は経済の活性化に向けて「人材の流動性を高める」とも言っています。つまり、今勤めている会社から人材を「out」させやすい施策を検討することがあるかも???

そうなれば、リスキリングが進む可能性を感じます。

再掲:
あなたの面倒を一生みることなんてできませんよ。ただし、雇い続けるだけの価値があなたにあるなら別ですけどね。

という会社に対して、我々マネジャーは、

まあ、この会社に居続けてあげてもいいですよ。ただし、私を留めておくだけの魅力がここにあればの話ですけどね。

と言えるような、今の会社からの「out」も視野に入れた、更に言えば、どこの組織でも通用可能なマネジメント力を習得する意識を持ちたいものです。マネジャーは経営側の立場とはいえ、一人のビジネスパーソンでもありますから。

同時に、

まあ、この会社に居続けてあげてもいいですよ。ただし、私を留めておくだけの魅力がここにあればの話ですけどね。

と考える部下を引き留めることも必要かつ重要ですね。そう考える人って優秀な場合が多いでしょうし。

キャリア自律を求めながら引き留めも行う・・・。難度の高いマネジメントですが、我々マネジャーもリスキリングしていくことで適応していきましょう。