先週実施した、ある会社のマネジャー研修で受講生がこんなことを言っていた。
部下にこの本を読ませたいんだよなぁ。「俺はお前らとは役割が違うんだ」ってことを分からせたいから。
”この本” とは、以前にブログで紹介した以下の本である。
鈴木秀明 著『人事屋が本音で語る 管理職に伝えたい47の言葉』LUFTメディアコミュニケーション 2018年
この本の中には、管理職の心得や仕事の進め方、部下との付き合い方など、人事の観点からのメッセージが色々と書かれている。中には、ドキッとするような指摘もあり、管理職としての自分を見直せる良い本である。
さて、話の戻す。
上記の受講生の部下はマネジャーに対して、「プレイヤーとして一緒に働いてほしい」と思っているようである。
部下がそのように思う理由を勝手に想像してみた。
- 上司として能力を見せてほしい(お手並み拝見)
- 上司として率先垂範してほしい(そもそも上司ってそういうもんでしょ?)
- 暇でしょ?だったら一緒に汗をかいてくださいよ
どうだろうか。
プレマネバランスという言葉がある。プレイヤーとして働く時間とマネジャーとして働く時間のバランスのことである。(中原, 2014)
世の中の多くがプレイングマネジャーと言われている中で、プレイングマネジャーがプレマネバランスをうまくとれている場合、職場業績が良い傾向があるが、プレマネバランスが崩れ、プレイヤーとしての自分に固執している状況であると、統計的有意に職場業績が低い傾向がある。(中原, 2014)
中原は「これだけの結果で断定はできない」としているが、重要な示唆ではないだろうか。
プレイングマネジャーはあくまでもマネジャーである。
ではどうするか。
- 上司として能力を見せてほしい(お手並み拝見)
「上司としての能力を見せてほしい」という部下に対して、プレイヤーの次元で能力を見せずとも、マネジャーとしての能力を見せることで信頼感を得られないだろうか。
例えば、社内外のネットワークの広さ、業務に関連する知識や状況のキャッチアップの速さ、上長への対応・部下を守る姿勢などを適宜示すことが考えられる。
- 上司として率先垂範してほしい(そもそも上司ってそういうもんでしょ?)
「率先垂範してほしい」という部下に対しては、皆が嫌がっていること/恐れていることを率先してみせることはリーダーとして大切だが、いつも行う必要はない。
最初だけと決めて、あとは任せきる。
部下ができることをマネジャーがする必要はない。会社はマネジャーの何に対して給料を払っているかを考えたほうがよい。
マネジャーはマネジャーにしかできない仕事をやることだ。
- 暇でしょ?だったら一緒に汗をかいてくださいよ
普通に考えれば、部下はマネジメントとはどのようなものか知らない。
マネジャーがデスクで書類を見ていたり、パソコンを眺めていたり、会議で離席していたりといった様子をみても、何をやっているのかは分からない。
様子によっては暇そうに見えるのかもしれない。
だから、部下たちは「自分たちだけ忙しい」と考え、上司に不満を抱き、一緒に汗を流してくださいよと文句を言ってくる(か、内心で思っている)。
この点に関しては、自分のやっていること/考えていることを開示できる範囲で部下に示すことだ。
その際には、苦労話や、大変さに共感を求めるような話(オレも辛いんだよ的な話)に聞こえないように配慮しなければならない。できれば、マネジャーの仕事のやりがいを踏まえて話ができるとベター。
マネジャーは現場の大変さに共感と理解を示しつつ、部下とは考えている視点や視野、視座が違うんだという点を意図的に示していくことも人材育成の一環である。
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