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「管理職になりたくない」調査、を考えてみた

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管理職になりたくない人が増えている

といった論調や調査データをよく見かける。これに対して、

最近の若い人は価値観が変わってきている

的な解釈もよく見かける。

こういった記事やニュースを受けて、企業として何かしらの施策を打っているかというそうでもないのが現実。毎回、狭い世間(主にHR領域の人たち)を軽~く賑わせて終わるだけ。

だが、定期的にこの手の情報は発信される。

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調査元は、どうして「管理職になりたいか」と質問したいのだろうか。

単に、定期的に同じ質問することで、世間の価値観の変化を見たいからということもあるだろう。

それはそれで意味あることなのだが、この質問の前提には、

サラリーマンだったら、管理職になりたいと思うのが普通だろう。

という、昭和な価値観があるように思われる。だから、「なりたくない」という人の数/比率が増えると、こんな結果が出ましたよ!!と大げさ気味に発表する。

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今の管理職は昔の管理職ではない。

純粋に、管理業務だけを担っている管理職(課長)はどの程度いるだろうか。

恐らく、多くの管理職(課長)はプレイングマネジャーである。私が直接ご支援している複数の会社(大手企業)は、殆どの皆さんがプレイヤーを兼ねている。

つまり我々は、管理業務だけを担っている管理職をあまり見かけない環境で働いている。今の若い人に至っては、(管理業務だけを担っていた存在がいた)昔のことを知らない。

そんな状況なので、いま聞いているのは、「プレイングマネジャーになりたいか」ということなのだろう。

仮にそう聞いたとしたら、どんな回答になるのだろうか。

恐らくは、

*マネジャーになって、仕事内容が今と変わらないようなら、単純につまらない
*この先も、今と同じような仕事だと(体力的に・精神的に)きつい
*責任だけは重くなるようだし・・・
*できない部下の責任も背負わなきゃいけないんでしょ

と考え、「プレイングマネジャーなんてなりたくない」と思う人が多いのではないか。

更に、会議や調整業務にも追われ、コンプライアンスやハラスメントに注意を払いながら、部下に気を使いながら過ごしているマネジャーを見れば、

あんなふうにはなりたくない

と思うのも当然だろう。

そのように考えると、「管理職になりたいか」という質問が実態からずれているし、「管理職になりたくない人が増えたのは、若者の価値観が変わったから」という解釈よりも、「管理職をめぐる環境が大きく変わったから」という解釈のほうがもっともらしく思える。

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「管理職になりたいか」はもう聞かなくてもいい

岸田政権は、経済面での持続的発展・成長にむけて、人材の流動化を推進しようとしている。

そんな時代において、「管理職になりたいか」という質問は、最初に入った会社でずっと過ごす(=終身雇用時代)前提の思考から生まれた、時代錯誤の質問だと捉えられるのではないか。

折しも ”ジョブ型” という言葉が世間を賑わせている。

本来、管理職は立派な一職種(専門職)であり、同じ企業の中で、長く居ればいずれ与えられる(機会のある)年功職でもないし、プレイヤーとして優秀だった人がもらえる名誉職でもないはずである。

”ジョブ型” の世界観では、

管理職は「マネジメントのプロ(専門職)」である。なりたい/なりたくないで捉えるものではなく、担える/担えないの世界で捉えるべきものではないか。

ふと思ったのだが、”ジョブ型” の世界にプレイングマネジャーは存在するのだろうか・・・。本来は存在しないはず・・・。

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今日は、よくある調査「管理職になりたいか」について考えてみました。

管理職の実態に合っていないし、施策に活かされている感もないし、人材マネジメントの方法も変革期にあるので、「管理職になりたいか」的なことはもう聞かなくていいと思います。

間違っても、「管理職になりたい」人を増やそうとして、研修だけで何とかしようと考えないことが大切です。管理職が働きやすい環境をどう整備するかを考えるほうが有益ですね。