※本記事は、約1年前に書いたものを改訂したものです。
経営サイドからのメッセージに対して、こんな風に思ったことがありませんか。
*そんなのキレイごとだ!上の人は現場のことを何もわかっちゃいない!
*メッセージが抽象的で何を言っているのか分からない!具体的に示してくれ!
*そんなの無茶だ。現場はそれどころじゃない!できるわけないだろ!
あからさまに反発したり抵抗したりせずとも、上司や周囲に文句や愚痴をこぼした経験がある人は多いかと思います。
では、もし皆さんの部下が上記のような声をあげた場合、ミドルマネジャーの立場でどう答えますか。
今日はそんな話です。
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はいはい、またキレイごとを言ってるわ・・・
従業員に「キレイごと」と思わがちなメッセージの代表格として ”理念” があります。ミッションやパーパスといった類似語がありますが、その意味はどれも似たようなものだと私は理解しています。(→ 理念に関連するブログへ)
理念は、自分たち(組織)の存在意義を表しており、多くの会社が「●●に貢献する」といった表現で、自分たちの存在意義を世間や従業員などのステークホルダーに示しています。
これは私見ですが、外資系企業に比べますと、日系企業では軽視されているように見える理念ですが、何かのイベントのたびに持ち出される理念を、従業員の皆さんは「また言っているよ。はいはい」と思っているのではないでしょうか。
キレイごとのA代表である ”理念” は、なぜそんなふうに受け取られるのでしょうか。一つの理由としては、
日常業務との結びつきが感じられないから
だと思います。
組織は分業と協業で成立していますね。企業は理念を日々遂行するために役割分担(分業)をしています。ですので、はたらく個人は理念を遂行するための一部の役割を担っているパーツやピースになっています。
ですので、自分のやっている仕事や日常の頑張りが理念にどう繋がっているかなんて、企業規模が大きくなればなるほどピンとこないのは当たり前ですね。全体を意識しないまま、部分を担当していますのでね。
しかも、日々忙しく、時に上司やお客様などから怒られたり、理不尽な要求を浴びたりしながら仕事をやっていますので、理念は、自分にはますます無関係な「キレイごと」に思えてしまうのは当然のような気がしませんか。
本来、自分の存在意義を感じられるかどうかは働きがいやモチベーションに関係する大切なポイントです。
ミドルマネジャーとしてできることは、会社の理念を遂行する上で、自分の担当する部門がどのような役割を果たしているのかを考え、部下から共感を得られるようにそれを語ること。そして、部下一人ひとりに任せている仕事が部門の役割にどう関係しているのかを、何度でも、大真面目に語ること、語り合うことなのではないでしょうか。
理念以外のこと、例えばビジョン、バリュー、行動指針、コンプライアンス、DE&Iのような、組織の存続や成長にとって大切なことが従業員に 「キレイごと」 として受け取られてしまう風土があるのであれば、組織としては不健康な状態ですね。
日常のマネジメントを通して、決して「キレイごと」ではない、自分たちにとって当たり前のことだと認識させるのがマネジャーの役割ですね。
どれだけ伝えても、ねじ曲がった受け取り方しかできない人はいますけどね。
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もっと具体的に言ってもらわないと・・・
先ほどの ”理念” も該当しますが、”ビジョン” や ”バリュー” など、経営サイドの出すメッセージは大抵の場合、抽象度が高いものです。
それを受けて、従業員は
*何を言っているのかわからない。具体的に言ってくれないと。
*言いたいことは何となくは分かる。だけど、方法を具体的に示してほしい。
といった反応を見せることがありますね。
繰り返しますが、組織は分業と協業で成立しています。上位者の掲げる目的・目標を実現するために下位者は役割(の一部)を担っています。下位層になればなるほど個別具体的な言動(5W2Hといった計画)になるのが普通です。
そして、上位層からのメッセージの抽象度が高いからこそ、下位者の自由度や裁量が増すということを認識しておきたいですね。上位者は下位者に業務の目的(WHY)と大まかな方向性(WHAT)だけを示し、詳細な手法(HOW)は下位者が自律的に決められるからこそ、仕事に面白さを感じられるのではないでしょうか。
詳細な手法まで上位者に決められていたら仕事は全く楽しくないはずです。マイクロマネジメントを受けたい人なんていないはずです。
部下が「経営のメッセージは抽象的でよくわかんないですね」と言ってきたら、自分がメッセージをかみ砕いで伝えられていないのかなと振り返ってみたり、「じゃあ、我々の仕事とどう関係するのかを皆で考えようぜ!」と持ち掛けたりしてはどうでしょうか。
実際には、上の人だって、具体策に関して解を持っていない可能性もありますからね。
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そんな無茶な!
経営サイドが「無茶」と思われる目標を掲げることってありますね。仮に、市場の成長見込みが昨年比3%なのに、
うちの会社は、昨年比130%アップの目標を掲げるぞ!
なんて掲げるとか。
道筋の提示、どうやってそれを達成しようとしているのかという説明、戦略や方針を明示してほしいですよね。
現在のリソースでの実現が困難なのであれば、必要なリソースをどう見込んでいて、そのリソースをいつ・どうやって獲得するつもりなのか、そのプランの実現確率の見込みはどうで、Bプランはどうなっているのか なども聞きたいですよね。部下としては当然に気持ちです。
組織の都合で降りてくる ”無茶” なことに対して、上司を説得して翻意させることは難しいと思いますので、
ミドルマネジャーができることは、無茶な目標に対する具体的な達成プランを(上司を巻き込みながら)一所懸命に考え、部下に示すこと。そして、プランはあくまでも仮説なので、途中でマメに見直すこと
ではないでしょうか。
ちなみに・・・
目標の設定に関しては色んな理論があります。その中の1つに、達成欲求の高い人ほど、無茶な目標だとモチベーションが高まらない というものがあります。本当に目標を達成したいと思うからこそ、目標を現実的なものにしたいという欲求なんでしょうね。(→ 目標設定に関するブログへ)
その観点からみますと、目標を決める立場である場合、”無茶” な目標を示すのはやめたほうが良い気と思います。もし示すのであれば、必ず道筋とリソースを示すこと。そうでないと、目標が従業員のモチベーションを削ります。
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今日は、経営サイドが発信するメッセージに対する従業員のありがちな反応、それに対してミドルマネジャーとしてどう対応することがベターかを述べてみました。
当たり前の対応を書いていますが、部下の感情や本音を意外と放ったままにしていませんかね。
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