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要注意:理念は ”いつか実現するもの” ではない

mission wooden blocks on white surface 課長のための部屋
Photo by Tara Winstead on Pexels.com
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組織の掲げる理念ですが、各社で用いている言葉が異なります。経営理念、企業理念、ミッション、パーパスなど。各社のサイトを覗くと、その定義も異なっているようです。

とはいえ、理念は概ね「存在意義」を表現したものと言われることが多いです。皆さんも、自社の理念やミッションを改めて読んでみてください。ちゃんと「存在意義」っぽいことが書かれていますと思います。つまり、

を述べていると思います。

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ここで、「存在意義」を述べているという点をちょっと突っ込んで考えてみます。

今日も明日も1か月後も来年も、いかなるときも組織の掲げている「存在意義」を果たすような活動をしていなければ、その組織が ”存在している意義” はありませんよね。

例えば、あなたの組織が「お客さまの生産性向上に貢献する」といった理念・ミッションを掲げているとします。

その場合、お客さまからすれば、あなたの組織には「今日も明日も1か月後も来年も、生産性向上に常に貢献してほしい」わけであって、「まあ急ぎませんから、来年でいいから貢献してね」なんてことはありませんね。つまり、理念は

なはずです(一般的には)。ですから、

といったステートメントは、理念やミッションを適切に表現しているとは言えません。

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ちなみに、ビジョンは ”実現する” ものです。

ビジョンは「X年後には・・・な状態になるぞ!」という、“今は存在しない状態” を語るものだからです。ですので、

というステートメントは、ビジョンを表現しているとは言えません。

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まあ、そんな細かいことを言わなくても・・・と思うかもしれません。しかし、ちょっと考えてみてください。

もし、理念やビジョンが同じ意味を持っているのであれば、わざわざ両方を掲げる必要性はありませんね。それぞれに意味があるからこそ両方を掲げているわけで・・・。さらに言えば、理念やビジョンに意味がなければ、わざわざ掲げる必要もないわけで・・・。

組織を束ねる立場として、理念やビジョンを掲げるのであれば、それらの持つ意味をきちんと理解して組織マネジメントに活かしたいところですね。

これまでの私のビジネス経験上、世の中の多くのマネジメント職(特に部長以上)は、自組織の理念(ミッション)やビジョンを掲げていると思います。

ですが、それらの意味をちゃんと理解してステートメントを打ち出している方は少数に思えます。

辛口なことを言いますと、マネジメントの皆さんが、自ら掲げた理念の遂行やビジョンの実現を ”心から願って、それに則ったマネジメントを毎日やっている” という方は、ごく僅かしかいない気がしています。

部下側も、自組織の理念やビジョンがどんなステートメントであっても「ふ~ん」で終わってしまい、期初くらいにしか聞かれないという現実もあり、理念やビジョンは「あってないような文言」で終ってしまっていることが多いのではないしょうか。

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近年、経営環境に関してよく言われることですが、今の時代は、キャリア自律、働き方や人材の多様化など、組織から人材や人の気持ちが遠のいていく、まさに「遠心力」が強く働いています。放っておくと、組織は解体・崩壊・消滅するかもしれません。ですから、組織を束ねる「求心力」を生み出す力がマネジメント職には求められます。

その「求心力」の役割を担う要素に、理念やビジョンがあります。関わる仕事の意味や意義をもたらし、人々を質の高い仕事へ動機づける。魅力的な未来を語り、人々が日々挑戦することを動機づける。

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マネジメント職の皆さんは、理念やビジョンの意味をちゃんと理解し、自らの言葉でそれらを部下に語ること、語り続けることをやっていかないといけませんね。

ついでに言えば、“戦略” はビジョンを実現するための取組み(リソースの獲得・配分の方向性)を示すものですので、ビジョンがおかしなものだと本来戦略は描けないはずです。

マネジメント職を取り巻く環境は、ネガティブなことが多い世の中ですが、「マネジメントに関する基本的なこと」を見直すだけでも、組織を元気にしたり、個人のパフォーマンスを高めるようなことになる気がしています。

本日は、理念やビジョンに関する基本的な考え方をお伝えしました。

応援団長
応援団長

基本は無視できませんね、何事も。