世の中には、様々な種類のコンサルティング会社があります。
戦略コンサル、ITコンサルなど、その分野における、圧倒的な専門知識や経験、実績を以て、クライアントの企業価値向上に貢献していると言われています。
皆さんがお勤めの会社も、何らかのコンサル会社にお世話になっているのではないでしょうか。
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さて、人を中心に据えた経営(人的資本経営)を考える際に取り沙汰される「人材版伊藤レポート 2.0(→ 経産省のサイトへ)」の中で、
経営戦略と人材戦略の連動
という点が、まず考えなければならない視点として挙げられています。
この視点について、皆さんはどう思われるでしょうか?
*うちの会社って、戦略が連動してるのかな?
*そんなこと、意識したことがないわー
*うちの会社の戦略を知らんわ
*ふーん。で、それって自分に関係するの?
といった感じが反応ではないでしょうか。つまり、「うちは大丈夫!」と言い切れる人(会社)は少ない気がします。
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ここで、コンサルの話に戻ります。
”戦略系コンサル” と呼ばれる会社があります。そういった会社が、経営戦略や事業戦略、そして人材戦略を一括してコンサルティングしているのであれば、どうして「連動していない」状態が生まれてしまうのでしょうか。
可能性① コンサル会社は戦略立案までを請け負い、戦略遂行には関与していないから
戦略遂行にまでコンサルが関与しようとすると、コンサル会社にとっては手がかかるし、割に合わない商売になるので、意図的に手を出さないのかもしれませんね。手離れの良さを歓迎しそうですし。
とすれば、コンサルを依頼した側が自社の戦略をしっかり理解し、遂行していかないといけませんね。
でも、「人材版伊藤レポート 2.0」の表現を見ると、現実はそうなっていないようです。
”人材系コンサル” または ”人事系コンサル” と呼ばれる会社もあります。とすれば、経営戦略と人材戦略が連動しない理由にこんなこともありそうです。
可能性② 経営戦略・事業戦略をコンサルする会社と、人材戦略をコンサルする会社が異なるから
戦略検討の順からすれば、(経営・事業を考える)戦略系コンサルのほうが先だと思います。それを受けて人材(人事)系コンサルが関与し、経営戦略や事業戦略との連動性を図るように配慮していると思います。
が、現実にはそうなっていません。なぜでしょうか。
主管部署が異なるからということもあるでしょうか。例えば、経営戦略・事業戦略の立案には経営企画部や事業企画部、人材戦略の立案には人事企画部といったように、別部門が関与していることで、そもそも各戦略に連動性がないなんてことが起こっているかもしれません。
他にも、経営戦略と人材戦略を別々のコンサル会社に依頼すると、戦略系と人材系のいずれのコンサルも、戦略遂行に関与しづらいといったことが想定できます。なぜなら、
現場では「戦略」だの「人材」だの、いちいち分けてマネジメントしていません
から。
各戦略が連動していない、あるいは連動させて理解する機会がないのであれば、戦略遂行も推して知るべし、ですね。
結局は、各戦略に対しても、戦略の連動性に対しても、誰もイニシアティブを持たないまま、戦略は画餅に終わる・・・。
なんだか、よくありそうな気がします・・・
そう考えますと、「各戦略が連動していないこと」が問題なのではなく、そもそも「戦略自体を誰もイニシアティブを持っていないこと」が問題かもしれませんね。
でも、イニシアティブという点で言えば、経営層が自社の戦略に関心を持っていないということはないと思いますので、経営層はきっとイニシアティブを発揮していると思います。
ということは、
可能性③ 組織のどこかで、会社の掲げる戦略に関するイニシアティブが途絶えている
のかもしれません。
戦略は中長期的な観点で語られています。しかし、多くの従業員は目の前の世界で生きています。ハッキリ言えば、会社の中長期的な姿や取組みに興味をもっている人はわずかです。
そう考えますと、従業員に戦略へのイニシアティブを期待するのは酷なのかもしれません。では、経営層の直下にいるミドルマネジャー層はどうでしょうか。
部長層か課長層あたりで戦略へのイニシアティブが途絶えている可能性はどうでしょうか。
そもそも、ミドルマネジャーに各戦略が正しく下りてきていないということも大いにありそうです。
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人的資本経営において、ミドルマネジャーの存在が相当に重要です。経営戦略と人材戦略を連動させる、現場の結節点にいるからです。
今日から4月です。ミドルマネジャーの皆さん、今期の方針を考えるにあたり、
1.自社の経営戦略・事業戦略・人材戦略をご存じですか?
2.組織の運営方針を考える際に、経営戦略・事業戦略だけでなく、会社の人材戦略を意識していますか?
3.人材マネジメントの各要素である、採用、配置・登用、評価・処遇、育成について、組織の運営方針の中に語られていますか?
人材を資本として捉え、理想の組織をつくるためにも、是非考えてみましょう!
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人事部門の皆さん、
1.自社の経営戦略・事業戦略・人材戦略を従業員(特にミドルマネジャー)はちゃんと理解していますか?
2.人事施策を考える際に、経営戦略・事業戦略・人材戦略の連動性を意識していますか?
3.現場のミドルマネジャーが各戦略を連動させながら組織運営することをどう支援しますか?
4.従業員が人材戦略を理解する場を用意していますか?
本当に、現場に役立つ人事となるには、事業と人材の各戦略を連動させること。これを常に意識しないといけませんね。
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コンサル会社に頼り切ることなく、自分たちの手で人的資本経営を実現するためにもミドルマネジャーの活躍が必要ですし、そのためには人事部門の獅子奮迅の活躍がもっと必要です。
ミドルマネジャーと人事部門はもっと結託したほうがいい関係 ですね。
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