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あなたが語っている「戦略」って、本当に戦略と言えるようなものになっていますか?

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ビジネス用語の中で、まあまあテキトーに使われている単語の1つに

戦略

があります。(私の独自見解です)

皆さんは「戦略」とは何かを説明できますか?
私が参考にしている書籍から「戦略」の定義を抜き出してみますと・・・

● 競合優位性を活用して、定められた目的を達成しうる整合的な施策群のまとまり
  波頭亮 著『組織設計概論 戦略的組織制度の理論と実際』産業能率大学出版部刊 1999年

● 市場の中の組織としての活動の長期的な基本設計図
● 企業や事業の将来のあるべき姿とそこに至るまでの変革のシナリオ
  伊丹・加護野 著『ゼミナール経営学入門 第3版』日本経済新聞社 2003年

● (経営戦略とは)経営環境下で企業の目的・目標を達成するために必要となる打ち手
● 一定の制約下で、経営資源を活用しながらいかに振舞うかということ
  経営戦略研究会 著『経営戦略の基本』日本実業出版社 2008年

● 平均以上の利益を上げる(一時的ではなく中期的な)方法
  坂本雅明 著『事業戦略策定ガイドブック』同文館出版 2016年

いかがですか?

皆さんが言葉にしていらっしゃる「戦略」は、上記した定義に合致しているでしょうか。
皆さんが方針資料に書いている「戦略」は、上記した定義に合致しているでしょうか。

定義にある、“目的・目標の達成のため”とか、“中長期的”とか、“変革”とか、“競争に勝つ”とか、“シナリオ”とかいった要素を踏まえたものとして使っていますか?

私の経験では、以下のような状況をよく見かけます。

部長にありがちなケース
▲ 目的・目標がはっきりしていないのに「戦略」を語っている(「戦略」が目的?)
▲ 目的・目標と「戦略」との間に整合性・論理性がない
▲ 「戦略」と言いながら、目的・目標を含めて、毎年定期的に変わる
▲ 「戦略」に変革の要素がない(成り行きで目的・目標は実現できるってこと?)
▲ 市場で競争相手にいかに勝つかが考慮されていない内容を「戦略」を語っている
▲ 「戦略」にシナリオや設計図がなく、「やるべきこと」を列挙しているだけ
▲ 「戦略」が、スローガンや意気込みとなっている

課長にありがちなケース
▲ メンバーに語る内容に目的・中期的な視点がない
▲ メンバーに数字を示すだけで、上位組織の掲げるビジョン・ミッションと自組織の業務の関連性を示すことがない
▲ メンバーに語る内容に変革の要素がなく、これまでの業務について「もっと頑張りましょう!」と言ってるだけ

どうでしょうか。

言わずもがな、戦略は大事です。そして、今後ますます重要性が増していくでしょう。なぜそう考えるのかと言えば、 “キャリア自律”が関係しています。

先週のブログで紹介しました書籍『ジョブ型人事の道しるべ』にも書かれていましたが、キャリア自律が世の中で叫ばれている背景には、従業員の面倒を一生みる余裕が会社にないという現実があります。

参考書籍:藤井薫 著『ジョブ型人事の道しるべ』中央公論新社 2025年

つまり、「自分の身は自分で守れ」です。

とはいえ、どこの会社でも、全ての従業員にキャリア自律を求めながらも、人手不足な時代ですので、特に優秀な人材に対しては「うちの会社にできるだけ長く居て活躍してね」という思いが必ずあるはずです。

その思いを叶えるためには、会社や事業の目的・目標と戦略、つまり中長期的な企業価値の向上のためのストーリーを従業員に示し、惹きつけなくてはなりません。(惹きつけ続けるために、処遇や成長機会の提供など、トータルリワード(※)を考えないといけません)

トータルリワードの説明(→ 日本の人事部さんのサイトへ)

ミドルマネジャーの皆さんが、メンバーに事業や仕事の目的や目標、戦略を語り、その実行を求めると、

メンバーA
メンバーA

目の前のことで手一杯ですよ!

とか言うかもしれません。いや、きっと言うでしょうね、中堅以上のメンバーは。

その発言に共感はします。かといって、何も変えなくていいわけがありません。世の中には、競争相手がいるわけですし、現在の顧客が自社に対して、もっと良い商品・サービスを期待しているわけですし。

こんなことを言うメンバーもいるでしょう。

メンバーB
メンバーB

将来のことなんて誰も確約できないじゃないですか!

それはそうですね。変化の激しい時代ですので、戦略通りに事を進めていても、3~5年後に目的・目標が本当に実現できるかどうかは誰も分かりません。戦略だって、環境変化を受け、より最適と思われるものに修正されることだってあります。

戦略は未来への仮説ですので、仮説がズレてれば修正するのは妥当な行為です。戦略が期初の方針発表でしか語られないようでは、メンバーに意識されず、実行されない可能性が高く、仮説の検証ができません。

戦略をメンバーが意識し、実行するように促す。必要があれば戦略を見直す。ミドルマネジャーがそんな活動をしていれば、目先のことしか言わない/追わない組織、変化しない/変化を促さない組織よりはマシな未来が必ず待っています。

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戦略をメンバーに語らないのと同じか、それ以上にマズいのは、その年の目標数字(売上・利益など)のことしか言わない会社、マネジメント層が単年度の数字の帳尻合わせにしか関心がないように見える会社です。

そんな会社に居続けたいですかね?

応援団長
応援団長

私は全く思いません

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