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厳しい環境=能力向上の良い時期

learning 360評価
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マネジャーの能力開発にとって、ひとつの手段である360度サーベイ(多面観察とも言う)。

最近ある会社で、360度サーベイの結果についてのフィードバックセッションを行ったのだが、準備の際にサーベイのデータを集計していたら、その会社の置かれている状況を如実に表すような結果が出たので、今日はそれに関連した話をする。

問診票のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

その会社は地方にある銀行で、360度サーベイ対象者は部店長、副支店長・次長(約200名)である。

私の会社が保有している360度サーベイは、ミドルマネジャーに求められる言動につき、15種のカテゴリ(計51問)について回答を求めている。

同時に、15種のカテゴリについて、マネジャー本人、部下に重要度評価(優先順位付け)をしてもらっている。例えば、以下のように聞いている。

*マネジャー本人に対して:あなたは、マネジャーとしてより重要だと考えるカテゴリはどれ?
*部下に対して:あなたは、上司に優先度高く求めるカテゴリはどれ?

ちなみに、カテゴリとしては、以下のようなものがある。

ビジョニング、個別配慮、成長支援、組織目標の明示、公正な評価、職場づくり、などなど・・・
(他のカテゴリに興味のある方は、弊社関連ウェブサイトへ)

この重要度評価につき、マネジャーも部下も、最も多くの得票であったカテゴリが一致していた。

それは・・・

ビジョニング

であった。

マネジャー自身も、部下も、(マネジャーの上司も)「組織としてのビジョンを示すこと」をマネジャーにとって最も重要な要素として認識していたのである。

いかにも、この業界(銀行)らしい結果に思えた。

人口減少、ネットバンキングの一般化、個人や企業の資金調達の多様化など、銀行業界(という括りが崩壊している)は業界を越えての競争が激化し、生き残りをかけて、合併や統合を図るなど必死に模索している。

そんな中で、組織内での階層によらず、皆がビジョンを示すことを大事と考えている・・・ということは、きっとこの会社のトップが明確なビジョンを出していないのだろうなと推察してみた。

※ウェブサイトを見ると、ビジョンは載っていなかった

おそらく、バブル経済のころ(約30数年前)に今回と同じサーベイをやったとしたら、殆どの従業員は「私たちの将来は楽勝だ!」と考えており、重要度評価では ”ビジョニング” が一番にはなっていないと思われる。(予想では、困ったときには助けてよ、ということで「非常時対応」が一番か?)

バブル世代の人々のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

リーダーシップ論の中に、コンティンジェンシー理論というものがある。有効なリーダーシップは状況次第、という考え方だが、景気が良いとき、悪いときで、マネジャーに求められる要素が変わる。

コンティンジェンシー理論の説明へ

景気の悪い、ピンチな状況では、ビジョンを明確に示し、組織をグイグイとリードしてくれるような強いマネジャーを望むのであろう。

反対に、景気が良い状況では、部下としては、自分のやっていることを邪魔してくれるなといった、口出しをしない、優しいマネジャーが望まれる(好かれる)のではないだろうか。

厄介と感じるのは、人の持つバイアスで、「うまくいっているときはその原因を自分の能力に帰結する。うまくいっていないときは自分以外の要素に原因を帰結させる」傾向があることだ。

現在の銀行業界のように、先の見通しづらい環境下ではビジョンを立てづらいのも理解できる。部下はそれに不満を感じる。そして、職場の業績が出ないことへの責任は(会社や)マネジャーにあると考える。(部下自身に原因を帰結させない)

不況下では、マネジャーの本当の力量(能力、胆力)が求められるのかもしれない。

以前に書いた、マネジャーにとって有益な成長経験に ”修羅場” という表現があった(関連ブログ)。景気のよい状況下ではマネジメント能力は鍛えられないのかもしれない。

そう考えると、今がマネジメント能力を伸ばす良い機会なのではないだろうか。

大変な日々の現状を、将来に活かすために、日々のマネジメント経験をできるだけ丁寧に振り返りながら過ごしていきたいものである。きっと気づきが得られるだろう。

振り返ると同時に、マネジメントの基本(理論理屈)を学んでおくと、マネジメント対応力に幅ができる。