「この研修、メンバー側にもやってくださいよ!」
こんな声が研修受講者であるミドルマネジャーから聞かれる時があります。
*************
ミドルマネジャーの業務量的・心理的な負担が大きくなるばかりの状況に対して、以前のブログで、メンバー側に「被〇〇研修」をやってはどうかという話を書きました。(→ そのときのブログへ)
例えば、従業員の”キャリア自律”を促すために、ミドルマネジャー向けに「キャリア面談のやり方研修」のような施策をやるとします。その際に、従業員側にも「キャリア面談への臨み方研修」や「キャリアを考える研修」といった施策も同時にやることで、ミドルマネジャーの負担を少しでも軽減しようというアイデアです。
従業員側には、「あなたの上司は、先日「キャリア面談のやり方研修」を受けており、・・・・といった内容を学んでいます」といったことも伝える。
このアイデアは、小林祐児 著『罰ゲーム化する管理職』インターナショナル新書(2024)にも(4つのアイデアのうちの1つとして)書かれています。
こういったやり方は、ミドルマネジャーの負担軽減につながると予想(期待)されるだけでなく、本来の目的、上の例で言えば、”従業員のキャリア自律” がより促されることも予想(期待)されます。
*************
では、研修のテーマが ”マネジメント” であった場合、受講者であるミドルマネジャーからはどんな声が聞かれるでしょうか。
これまでに私が担当した課長クラス向けのマネジメント研修で出会った皆さんから、
「この研修、うちの上司にもやってくださいよー。今回学んだこと、全くできてないんですよ!」
という声をたくさん聴いたことがあります。うちの上司、つまり部長クラス(や経営層)のことを言っているようです。まあ、研修内容がマネジメントに関するものですので、「メンバーにもやってください」という声が出ないことに違和感は感じませんね。
では、課長から名指しされた部長クラス(や経営層)の皆さんは、以前にマネジメントに関する学習機会がなかったのでしょうか。いいえ、きっとあったはすです。ただ、残念ながら「学び」をすっかり忘れているのでしょうね。そして、我流のマネジメントを実践し、部下(課長)が嫌がっている・・・。
さて、ここでミドルマネジャーの皆さんに聞いてみたいことがあります。それは、
マネジメント研修で学んだ内容を、メンバーが知っても構いませんか?
ということです。
上記しましたように、メンバー側に、上司がどのような研修を受けたか(何を学んだか)を伝えることは、本来の目的を実現する可能性を高めることにつながりそうですので。
しかし、メンバー側に伝えることで予想される懸念があります。
ミドルマネジャーの皆さんが受けた研修内容をメンバー側が知ることで、現場で実践・活用していなければ、メンバー側から突っ込まれる余地が生まれるということです。
例えば、
*課長、先日の研修でキャリア面談のやり方を学んだんですよね?(私、やってもらってません)
*課長、先日の研修でコーチングについて学んだんですよね?(やってませんよね?)
*部長、先日の研修でビジョン・ミッションの立て方を学んだんですよね?(示してくださいよ!)
と。
こういった状況により、メンバーは上司に不信感を抱く可能性もあります。上司の発する言葉に説得力がなくなるかもしれません。そして、メンバーに「学べ」とか「成長しろ」とは言えなくなりますね。
*************
本日の結論です。
マネジメント研修で学ぶ内容は、ミドルマネジャー側にとってはもちろんですが、メンバーにとってもポジティブな影響(パフォーマンスやモチベーションの向上など)を及ぼすものが殆どだと思います。
マネジメント研修の内容をメンバー側に共有し、ミドルマネジャーは学びを実践することにより、組織の成長・発展につながる・・・。メンバー、ミドルマネジャー、組織、三方良しになるはずです。
マネジメント研修の内容をメンバー側に知られたくないという心理が働いているミドルマネジャーの皆さん、その理由は何でしょうか? それは自身・メンバー・組織にとって健全な理由でしょうか?
感情面の理由でしょうか。組織の中長期的な視点で考えると、その理由は妥当ですか?
ちょっと真剣に考えてもらえると嬉しいです。
コメント欄