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20代の課長級が望まれるわけ

man-working-in-modern-office 課長のための部屋
この記事は約5分で読めます。

10月28日付の日経新聞朝刊に、

富士通が新卒2年目を課長級に抜擢

という記事が載っていた。(→ 日経新聞さんのサイトへ

今年の7月には、別の複数の会社で「20代で管理職への登用が可能に」といった記事も出ていて、このブログでもそれに関連した記事を書いている。(→ 当該のブログへ

大手企業を中心とした動きのようだが、この動きが示唆しているものは何だろうか。考えてみたい点がいくつかある。

今回のブログでは、以下の点について私見を述べる。

1.なぜ20代の登用が必要なのか/有用そうなのか
2.20代管理職がワークするために条件
3.いまミドルマネジャーは何を考えるべきか

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1.なぜ20代の登用が必要なのか/有用そうなのか

今回の記事に「課長級」とある。”級” なので、社内資格等級として課長相当の待遇を受けるということであって、組織を束ねるピープルマネジャーではないような気がする。

もしそうであれば、閉塞感たっぷりの現在のビジネス環境を打開するために、20代社員のもつ感性や独創性を経営に活かすための施策なのかもしれない。課長級の権限を与えることで、スピード感をもって市場の変化に適応できるようにしていると考えられる。

裏を返せば、現在の組織は、

  • 考え方が古い/凝り固まっている
  • 奇抜なアイデアがつぶされる/否定される
  • 稟議やら合意やらで事を進めるので、意思決定が遅い

ということなのだろう。大企業あるある、である。

20代社員の課長級登用に関して、もう1つ考えたいのは、待遇、つまり給料に関する若手社員の不満解消を狙いとしているのではないかということ。そして、それが優秀人材の獲得、引き留めにつながることを企業が期待している気がする。

年功序列の人事制度下では、若手社員の頃は安月給で働かされ、ある程度年齢がいってから ”元が取れる” ようになっている。(これは「働かないおじさん」問題にも関連している)

そういった情報はネット検索すれば直ぐ知ることができるので、今の若者は「そんな理不尽、まっぴらごめん」と、若くても成果や行動をちゃんと評価してくれそうな会社を(既に)選んでいる気がする。

しかも自分のやりたいことがやれる会社であれば、更に魅力的。そこには裁量権、意思決定権は必要。だから、20代であっても課長級/管理職等級というポストを得られる環境は、若者に魅力的に映る(のではないだろうか)。

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2.20代管理職がワークするために条件

(課長”級”の)プレイヤーとして働くのであれば懸念することではないが、もしピープルマネジャーとして組織を束ねる立場となれば、厄介なことがある。

それは、社歴や年齢を大切にする、日本の風土や価値観が組織マネジメントを邪魔しないかという点である。

ここは年齢を気にする風土である。1つでも年齢が上であれば礼節を重んじた接し方を求める空気感がある。

先日のブログでも書いたが、こういった空気感が「役割」としてマネジメントを担おうにも困難な状況を作っている。(→ 先日のブログへ

目上に対する礼節は否定するものではないと思うが、仕事において、年齢が邪魔になる瞬間は誰しも経験していることだろう。(遠慮など)

戦後から高度成長期の製造業を前提にした職能資格制度のおかげ(せい)で、能力が上がっていないにも関わらず毎年給料が上がる。プレイヤーとして好業績をあげたからとか、長年頑張ってきたからとかいった理由で、管理職という、プレイヤーとは全く異なる役割を平気で任せてしまう。

こんな仕組みが、年齢の高い人/社歴の長い人 ≒ 偉い人 みたいな風土が、組織の中に生まれて染みついてしまった。

解決策の1つは、最近下火になりつつある?「ジョブ型人材マネジメント」だろう。

海外とは様々な点で異なるため、日本版ジョブ型(メンバーシップ型とのハイブリッド?)を構築すべきという論調があるが、年齢に関係なく、ポストに見合った人材を当てはめる(採用する/異動させる/登用する)という思想を徹底しないと、中途半端な施策(制度改革)では、20代のピープルマネジャーは機能しないと思う。

参考書籍:濱口桂一郎 著『ジョブ型雇用社会とは何か -正社員体制の矛盾と転機』岩波新書(2021)

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3.いまミドルマネジャーは何を考えるべきか

1.で記載した通り、20代が管理職に登用される背景を考えてみると、

  • 考え方が古い/凝り固まっている
  • 奇抜なアイデアがつぶされる/否定される
  • 稟議やら合意やらで事を進めるので、意思決定が遅い

といった点について、いまの自分(のマネジメント)はどうなんだろうと内省してみたいところである。

経験は重要。物事の判断の正確さが増したり、効率的に物事を進めたりできるのは経験のおかげである。ただし、負の側面もある。

経験が冒険を阻害することが(大いに)ある

ことを心に留めたい。

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今日は、20代の管理職登用に関する動きに関する私的意見でした。

何歳だろうが、何年目だろうが、デキる(デキそうな)人に仕事を任せ、それ相応の処遇をする。聞けば当たり前のことが成立していない世の中、なんだかモヤりますね。

こんな点が、この国の閉塞感の一因だと思います。皆さんはどうお考えになりますか?

20代で管理職(級)に登用された人たちがイキイキと活躍できるビジネス社会になるといいですね。