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360度評価と人材パイプライン整備

survey 360評価
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昨今、事業としての持続可能性が問われているが、そうあるためには、人材のパイプラインが整っている必要がある。

事業は人なり、である。

例えば、部長は「自分の次を任せられる人物」を課長の中から見つけ、育てる/支援する必要がある。

双眼鏡を覗く人のイラスト(男性) | かわいいフリー素材集 いらすとや

果たして、部長は「適切な人物」を、まずは見つけられるのだろうか。

そのあたりに関して、おもしろいことが書いてあった本を紹介したい。

近年ますますデータ活用が色んなところで叫ばれているが、2017年に出版されたこの本は、人事領域でいかにデータを活用するかに関して書かれている。

本の一部で、上述したことに関する内容が書かれていた。

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私は統計のプロではないし、分析方法などの詳細は今回の主旨ではないので省く。

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このブログでも何度か登場している360評価(多面評価ともいう)。 ※関連するブログ記事

著者は、ある会社で取得した360度評価のデータと、被評価者の業績評価データをもとに分析し、以下のような結果および考察を述べている。※抜粋

データ分析のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

前期の部下同僚による多面評価の結果は、今期の上司の業績評価と強い相関がある(202ページ)

同じ基準で測ってるはずの、上長による多面評価と部下同僚による多面評価はあまり相関しておらず、前者を説明変数に加えても後者の有意性はほとんど低下しません。つまり、管理職(課長)の上長(部長)が見ていない何らかの情報を、部下と同僚は見ている(204ページ)

上長(部長)から評価される人(課長)が、必ずしも部下や同僚から評価される人ではないことを意味しています。部下や同僚から評価される人の業績は改善傾向を示すということと併せて考えると、上長による評価だけで管理職の昇進・昇格を決めることには問題がある(205ページ)

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私が以前に関わった案件でも、360度評価のデータを分析してみると、被評価者に対する上長からの評価と部下からの評価には相関があまりなかったことがある。

ということは・・・

課長が部下に対してどのようなマネジメントを行っているか、上司である部長はあまり見ることができていないのではないか。(私自身も該当するなぁ・・・・)

テレワーク下であれば尚更である。

私服で働く人のイラスト(白人男性) | かわいいフリー素材集 いらすとや

そうなると、課長への印象は「業績」にウェイトを置きがちになるかもしれない。

自分が推挙して部長へ引き上げた人材が、もしその後に組織を崩壊させたとなると・・・組織にとっても、推挙された人にとっても残念極まりない。

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だからといって、360度評価の結果を全面的に信じましょう、ということでもない。

部下からの評価は高いが、業績はサッパリというマネジャーもいる。例えば、部下のご機嫌をとったり、部下と一緒になって会社を批判したりするようなマネジャー。

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このブログで何度も言っているように、360度評価は ”人材育成” にこそ使えるツールである。

被評価者にフィードバックし、結果の解釈や今後への活かし方を学んでもらう場づくりは必ず必要である。

被評価者(課長)へのフィードバックが終わったあと、被評価者の上司(部長)と話し合う場を持つようにして、上司は、被評価者が組織マネジメントについてどのようなことをやっているのか事実や考えを色々と聞いてみると、「次を任せられそうか」という点で有益な情報が得られることだろう。

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本来360度評価は、最も身近で、信頼できる人物からのフィードバックが効果的であろう。(ということは、理想は直属上司)

とはいえ、フィードバックには一定程度の知識やスキルが必要なので、そこはプロ(外部コンサルなど)に任せるとしても、被評価者とその上司で話し合う場をつくることには、被評価者の育成面だけでなく、人材のパイプラインづくり(~事業の持続可能性)にとっても有益である。