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ビジョンをつくる

vision ビジョンづくり
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前回のブログで、ミドルマネジャーは「ビジョン」や「理念」を日常のマネジメントに活かしたほうが良いといった主旨の内容を書いた。(前回ブログ

今回は、ビジョンについて、現場で活かす際のポイントを4点書いていく。

1.方向性という言葉

ビジョンと同じように用いられる言葉がある。「方向性」である。

先日登壇したマネジャー研修の中で、グループ討議中のマネジャーの一人からこんな言葉を聞いた。

やっぱり、部下にはちゃんとビジョンや方向性を示したほうがいい。

このマネジャーは、方向性という言葉をビジョンと同義で使っているのだろうか。あるいは使い分けているのだろうか。真意は本人にしかわからない。

注意したいのは、言葉の持っている意味からして、ビジョンと方向性は別物であるということ。

  • ビジョンは、”将来像” なので、最終ゴールイメージである。 例:富士山の頂上に立っている
  • 方向性は、文字通りに方向を示すものである。 例:御殿場ルートから登る

つまり、ビジョンを実現するための手段を「方向性」と捉えるのが自然である。

そう考えると、「方向性」は「方針」とか「戦略」という言葉に近い印象だ。

言葉遊びをするつもりは毛頭ない。ここでは、言葉を正しく理解して、部下にメッセージを出そう!ということを言いたいのである。

個人的には、先ほどのマネジャーが以下のような文章を述べていたならスッキリと理解できた。

部下にはビジョンを示している。そして、実現するための方向性も示している。

方向性を示すだけではメッセージとしては弱く、最終ゴールイメージ(ビジョン)があってこそ、部下に響くものになる。

2.ビジョン・ステートメント

さて、マネジャーとして掲げるビジョンはどのようなもの(表現)が良いのだろうか。

先人が言うには、”関わる人々を動機づけるようなもの(表現)” が理想としている。例えば、ある書籍では以下のような要件があると良いと言っている。

1.期待や希望が持てる・・・メンバーにとって「ワクワク感」がある
2.ストーリー性がある・・・ビジョン実現に向けてのストーリーが明確である
3.社会的な観点が込められている・・・いかに社会に役立とうとしているか実感できる

 JMAMマネジメント教育研究会 編『マネジメントの基本教科書』日本能率協会マネジメントセンター

「2.ストーリー性がある」に関して、メンバーにビジョンを語る際には、数値目標も併せて示すと、自社の成長イメージを持たせることができると書かれている。

注意:
前々回のブログで、「目標(数値)は人をワクワクさせない」と書いたが、ビジョンを語る際の一つの要素として数字を示すことはアリだ。数字が前面に出過ぎないように。

”ストーリー” と言うくらいなので、単調・無機質な内容でなく、ビジョン実現時の様子だけでなく、ビジョンにたどり着くまでの過程を含めた、表現豊かな内容として語る必要がある。

『リーダーシップ・チャレンジ』という名著の中には、「ビジョンは3~5分程度で語れるくらい」が理想と書かれている。短すぎても長すぎてもダメなのだろう。

クーゼス&ポズナー 著『リーダーシップ・チャレンジ』海と月社 2014年

3.部下を巻き込んでつくる

ビジョンは部下に受け入れられなければ意味がない。マネジャーがビジョンを語ったときに、”私たちの” ビジョンと捉えてもらえるのが理想である。

そのために、ビジョンを部下とともに考え、つくっていくという方法がある。ベースはマネジャーが考え、部下を途中から巻き込んで仕上げていくのである。

部下にだって「こんな将来にしたい」という思いがある場合がある。それを組み入れる。

話し合いは重要だが、マネジャーはある組織単位の最終責任者である。話し合いがどうにもまとまらない場面などでは、最後は「これで行く!」とマネジャーが独断で決断することがあって良い。

ビジョンを考えるにあたって、もう1冊紹介したい本がある。個人的に良書だと思う。

ケン・ブランチャード&ジェシー・ストーナー著『ザ・ビジョン』ダイヤモンド社 2004年である。

この本では、未来イメージ(将来像)と有意義な目的(存在意義・理念)と価値観(バリュー)の3要素を合わせて「ビジョン」と呼んでいる。

それぞれの要素に関して、ストーリー+解説という構成で書かれており、ビジョンの大切さや意義を非常に理解しやすい。

注意:
前回のブログで、「ビジョンと理念は区別して扱ったほうが良い」と書いたが、”扱う” という意味は、両者の違いを理解し、マネジメントに活用するという意味であり、”ビジョンと理念を別々に部下に伝えたほうが良い” ということではない。

4.構造をつくる

どんなに耳障りのいいビジョンステートメントを思いついたとしても、部下と一緒になってビジョンを編み出したとしても、ポイントは いかにそれらを組織の隅々に伝達し、部下のパフォーマンス向上につなげられるか、である。(理念も同じ)

せっかく掲げたビジョンが、誰も気に留めない ”壁にかかった綺麗な文言” にならないためには「構造」をつくることだと上記本の中で言っている。

構造をつくるとは、ビジョンに向けた習慣や行動パターンを明らかにして、メンバーの日常に組み込んでおくこと。

ビジョンを実現するために必要な行動を明確にし、それを部下の日常のルーティンに入れておくのだ。

そうでないと、メンバーは目先の対応に追われ、ビジョンが画餅に終わる。

絵に描いた餅のイラスト(女性) | かわいいフリー素材集 いらすとや