管理職になりたくない人
に関する調査はずっと以前から行われており、その結果が世間にリリースされる際には「なりたくない人がこんなにも多い!」というトーンで情報発信されることが多い印象です。
最近では、昨年話題になりました書籍のタイトル(※)から、“管理職は罰ゲームである“という表現を強調して、管理職は大変過ぎて誰もやりたくない仕事(役割)だよねーという風潮をメディアが煽っているようにも見えます。
※小林祐児 著『罰ゲーム化する管理職』インターナショナル新書 2024年 → この本自体が煽っているわけではありません!
そんな中、つい先日に外資系コンサルティングファーム(EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社)と立教大学経営学部の田中聡准教授の共同研究として、「管理職への憧憬・志向性を高めるための調査結果報告書」が公表されました。
今回の調査目的はこのように書かれています。
管理職になりたいと思わない若手人材が増えており、各企業において管理職のなり手不足が深刻化していることを受け、現況を適切に把握し、次代を担う若手人材の志向について定量・定性的に分析することで管理職への憧憬・志向性を高める要素を特定する
「多くの若手が管理職になりたくないんですってさ」とだけ世間にメッセージを投げるような調査と異なり、「どうすればなりたいと思うようになるか」というヒントまで得ようとしている点、素敵です!!
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こういった報告書の主な読み手は、経営や人事に関わる皆さんではないでしょうか。現場のマネジャーが読むことはほぼないと思います。
現場のマネジャーに役立ちそうな、この手の報告書は結構あるのですが、実際には、現場のマネジャーに届いていない点をもったいないなーと思っています。
そこで今回のブログでは、この報告書に書かれている内容の中で、現場のマネジャーの皆さんに共有したいことを、私の主観も入れながらではありますが、3つ書きます。
自分の後継者を育成していきたい、若手が管理職を目指すようになってほしい、と真剣に悩んでいるマネジャーの皆さんには有益なヒントが得られる報告書だと思います。要約版ではありますが、中身を読みたい場合はEY Japanさんのサイトへどうぞ。(→EY Japanさんの調査結果報告書のサイトへ)
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1.メリハリのある働き方をしている姿をみせる
分析の結果、
■上司が長期休暇を取得するほど、また、本業に集中する時間が十分にとれるほど、(若手社員の)管理職志向は上がる
■上司が働き方に満足していないほど、また、残業時間が多いほど、(若手社員の)管理職志向は下がる
のようです。マネジャーとしてイキイキと働くためにも、適度なリフレッシュは必要ですね。
若手社員の管理職志向を上げるには、
◆管理職として元気ハツラツ!に働いているとしても、「仕事ばかりやっている」という印象を若手社員に持たせてはいけない
◆若手社員に「うちの課長、疲れてるなぁ」と思わせるような素振り(態度、表情、声の調子、発言)を見せてはいけない
◆管理職自身の働き方(長時間労働、休日勤務など)に関して、若手社員(や周囲)に愚痴るようなことを言ってはいけない
ということでしょうか。どうやら、仕事ばかりしていることを誇っても愚痴ってもいけないっぽいです。
報告書には「ワークハード、プレイハードが鍵」と書いてあります。適度に休んで、元気に働いている姿をみせること・・・・・できていますか?
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2.将来に向けた目的志向を持たせる
上司が個人(部下)に対し、担当業務の意義や意味を伝えるほど、また、上司自身よりも上位者に接する機会がある仕事を任せるほど、管理職志向は上がる
らしいです。
部下に仕事がいかに意義深く、価値あるものかを伝え、将来に向けた目的志向を持たせることが重要と述べられています。この点については、これまでにも様々な文献、調査などで言われていることです。
例えば、高木晴夫 著『プロフェッショナルマネジャーの仕事はたった1つ』かんき出版 2013年
ですから、
◆若手社員に仕事を任せるときに、「これやっといて」だけではダメ
◆仕事の意義や価値なんて「言わなくても分かるだろう」「言う必要はない」という考えはダメ
◆この仕事に意義や価値なんてない(ただの作業だ)、と思っている時点でアウト。どんな仕事であっても、組織にとって大事なことであるという思考を持たないとダメ
ですね。皆さん、若手社員に仕事の意義や価値を伝えられていますか?
加えて、管理職になれば、よりハイレベルな仕事ができること(の魅力)を教え、若手社員の視座を高める意味でも、マネジャーの皆さんの上位者に接する仕事機会をつくることも、管理職志向を高めるようです。
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3.配慮のしすぎはマイナス
上司が個人(部下)に対し、尊重し、傷つけないよう配慮するほど、管理職志向は下がる
興味深い分析結果です。
この分析結果を受け、「部下を慮るばかりでなく、組織に心理的安全性を持たせ、オープンに議論できるようにすることで、個人に対し、今の仕事に対する満足度を高め、かつ、会社への愛着を高めること」が重要と、報告書には書かれています。
正直、このインサイトは直感的に理解できませんでした。調査結果の詳細を見ていないからかもしれませんが。
報告書内の別パートに、こんな分析結果が書かれています。
若手社員に、「管理職にはコミュ力が必要」「管理職は周囲から推された人がなるもの」「管理職はメンタルを犠牲にするもの」といった認識が強いほど、管理職志向は下がる
とのこと。
上記の分析結果と合わせて考えてみると、もしかして、若手社員は「管理職のコミュ力」を”部下への気遣い、配慮”と捉えているのでしょうか。だから、「管理職って、部下にめっちゃ気を遣って、大変そうだわー。(だから、なりたくない)」と思っているということなのか???
普段の現場を想像するに、気を遣う相手は、若手社員だけでなく、年上部下もそうだと思います。
例えば、元上司を部下にもち、彼らに気を遣いながら組織をマネジメントしている課長の姿を若手社員が見て、「課長、なんだか大変そう」と感じ、自分はそんなのやりたくないと思う・・・。
ここで少し話題を変えるようですが、最近、20代~30代を管理職に登用する動きがありますが、果たしてうまくいくのでしょうか。(私は、この動き自体を否定しているわけではありません。心配しているだけです)
※ 参考:以前に書いた、若い人材を管理職に登用することに関するブログ記事へ
世の風潮からして、20~30代の若い管理職も、自分より若い社員には(個を尊重しないといけないので)気を遣わないといけない。そして、元先輩・元上司へも(以前にお世話になった手前、)気遣うためにコミュ力を存分に発揮しないといけないと考えるのではないでしょうか。
20~30代の若い管理職のそんな姿を若手社員が見ると、やはり「自分には管理職はできない」「管理職はやりたくない」と思うのではないでしょうか。それでは、管理職の魅力がますます下がりかねません。
私の意見としましては、
会社(経営・人事)として、管理職が部下に対して(倫理観をもったうえで)シビアに接することもできるような応援メッセージを出してあげることで、管理職が堂々を振舞える素地ができると思います。ハラスメントで訴えられるかもしれないと縮こまっている管理職を助けてあげてほしいです。
管理職としては、会社の出しているビジョンや戦略、行動指針などを組織運営上の”葵の御紋”として扱い、相手が若手であろうが年上であろうが、譲れない軸として指導・育成に活用することを徹底する必要があると思います。そこに気遣いや配慮は不要だろうと思われるところにまで部下に気を遣っている面がありそうですので。
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上記したようなこと以外にも、結果報告書には、会社として取り組んだほうがいいことや、若手社員自身が取組んだほうがいいことも書かれています。つまり、報告書は、ミドルマネジャーの皆さんだけに「ああしろ、こうしろ」と言っているわけではありません!
私は人事の立場として、現場のミドルマネジャーの皆さんがイキイキと活躍するための支援を主にやっておりますが、会社として、若手社員が「管理職ってやりがいありそう。やってみたいな」と思うような仕掛けを、現場のミドルマネジャーの皆さんや人事部門の仲間と共に考えていきたいと思います。
その際に、このような報告書や、調査データなどは有益な情報ですよ!
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