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キャリア自律を支援できるマネジャーに(その5)

career キャリア開発支援/キャリア面談
この記事は約5分で読めます。

前回からの続きである。(前回ブログ

キャリア面談で、部下に将来のことを聞いた際に「この会社にずっといるつもりはないです」と言ってきたらどうするか。

これについて述べていく。

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キャリア面談の目的に立ち戻って考える

いま多くの会社で、従業員のキャリア自律を促す目的でキャリア面談が行われている。その面談で、「うちの会社に居続けるつもりはない」と言われたら・・・・。

部下が自分のキャリアを自律的に考えているのであれば、彼らからどのような言葉が出てきても尊重せねばならない。キャリア面談とはそういうものである。

部下がこの会社やいまの職場にいる間に、将来に向けて取り組める能力開発課題を部下と一緒に考えたり、上司に支援してほしいと考えていることなどを聴いたりするのである。

部下に辞めてもらいたくない。考え直してもらいたい。

優秀な人材であれば尚更だろうが、部下にはこの会社/職場に居続けてもらいたい・・・・・その気持ちはわかる。ただし、それはキャリア面談でどうこうすることではない。日常のやりとりで何とかしていく課題である。

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離職を防止するのは別施策で取り組むべし

キャリア支援の話から外れるが、ここ数年 ”エンゲージメント” という言葉が人事界隈でホットワードになっている。

エンゲージメントとは、組織と従業員の関わりの度合(深さ、濃さ)のようなものを表す指標である。従業員が所属組織に対して愛着や満足感をもっている、仕事に対して活力や熱意をもって取り組んで(没頭・集中して)いる、もしあなたの組織がそんな状態であれば、エンゲージメントの高い状態と言える。

参照:労政時報 第3997号/2020.7.24 12ページ(サイト

従来、社員意識調査や従業員満足度調査と言われていた社内アンケートが、最近はエンゲージメントサーベイに切り替わって導入されてきている。

エンゲージメントの高い状態は、従業員にとっても組織にとってもハッピーな状態とされている。組織にとっては、従業員のパフォーマンスにも好影響を与えるとされているし、離職意思の低減にもつながるとされている。

キャリア支援の話に戻すと、キャリア面談で、部下から離職意思を示されないようにするためには、エンゲージメントを高めるような取り組みや働きかけを日常的に行わねばならない。キャリア面談だけで何とかなるものではない。

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継続性こそが、キャリア自律を支援する大きなカギ

ここまで5回に渡って、キャリア自律を支援することについて述べてきたが、最後に2つのことを書いて、このテーマを終わりとする。

1つ目が、部下のキャリア自律の支援は継続的な営みになってこそ意味が出るということ。2つ目は、マネジャー自身がキャリア自律していることで説得力が生まれるということである。

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まず1つ目だが、会社として、キャリア面談を年に1~2回の実施をルール化しているところがあるが、キャリア面談のときしか部下とキャリアに関する話をしていないのであれば、ほぼ無意味だろう。

もともと自律的な部下は心配ないが、そうでない部下は日常に追われ、キャリアに関することは忘却の彼方にあるだろう。そして、時間だけが経過し、結局他律的なキャリアに・・・そして疲弊と不満、不安でエンゲージメントなんてあったもんじゃない・・・。

そんな状況にしないためにも、毎日とか毎月とかまでは言わずとも、四半期に一度くらいはキャリアに関する話を部下に持ち出してみることである。その機会として、1on1は有効である!(関連ブログ

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マネジャーもキャリア自律していることで説得力が生まれる!

2つ目は、マネジャーもキャリア自律していないといけないという点である。

伝統的な企業に勤めるマネジャー(30代後半~)は、会社や上司からキャリア支援をしてもらったことのない世代である。自分が上司にしてもらったことのない支援を自分の部下にしてあげられるのか。なかなか難しいだろう。

実際に、多くのマネジャーはどんな面談をすればよいのかわからずに困っている。加えて、不満もある。「自分もそんな面談してもらっていない・・・」と。

このブログで、キャリアの考え方、キャリア面談のポイントややり方は書いた(つもり)だが、部下へのキャリア自律支援を充実させるための大きな要素は、マネジャー自身がキャリア自律をしていることである。

自らの将来ビジョンをもち、短期的、中長期的な能力開発課題を明確にし、それに向けて日々努力していることで、部下に対して説得力も生まれるし、どう考えればよいのか具体的なアドバイスもできる。うまくいかないこと/計画通りにいかないこともあるという苦労や注意点も伝えることができる。

マネジャーがキャリアを考えるときの注意点としては、もし現在課長だとして、「部長を目指す」はキャリアの表現としては不十分であるということ。

これからどんな経験を積んでいきたいか/将来何をしたいのかという Will を考えることである。

すぐには思いつかないかもしれない。そのときは考え続けるしかない。あるいは、他のマネジャーと話をしてみると良い。マネジャー同士で ”壁打ちの壁” になってみるのである。

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以前のブログにも書いたが、キャリア自律は人事マターではなく、経営マターである。言わずもがな、マネジャーは経営サイドの人材である。経営の一端を担う自覚をもって、部下のキャリア自律の支援を行っていくことで、プロのマネジメント職者としての自分の価値を高めていくことができる。