初めてマネジャーになるとき、どのような気持ちになっただろうか。
最近の話ではなく、以前から「管理職になりたくない人が増えている」というニュースは流れている。個人的な印象では、そういった声が近年増えている印象はない。ずっと変わらないという感じ。
嫌な仕事・役割の象徴かのように「管理職」が取り沙汰されるが、世の中全体に、「楽して儲けたい」とか「できれば働きたくない」といった、仕事自体に対する嫌々感が感じられる。
ちょっと話が大きくなってしまったので、管理職に話を戻す。
世間では「管理職になりたくない人が多い」ように言われているが、新任マネジャー研修でお目にかかる皆さんに気持ちを伺うと、否定的なコメントは少数で、多くの人は「責任も感じるが、何とか組織をリードしていきたい」といった前向きなコメントを述べてくれる。
管理職になるとは、ビジネスパーソンにとっては大きな節目(移行期とかトランジションとか言ったりもする)である。
今日紹介する本の中でも紹介しているが、ハーバード・ビジネススクールのリンダ・ヒル先生は、マネジャーになるプロセスとは、”仕事のスター”から”管理の初心者”に生まれ変わる” ことと言っている。
プレイヤーからマネジャーへの移行期、この大切な時期を適切に過ごすためにも、手に取ることをお勧めするのがこれ。
中原淳 著『駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する』中公新書ラクレ 2014年
以下に、印象に残った点を3つ書く。
① あくまでも軸足はマネジメント
”マネジメント” の定義が書かれている。以下のとおりである。
Getting things done through others(他者を介して事を成し遂げること)
自分で直接成果を出すのではない。部下以外の人を含めて、他者を介して・・・である。
プレイングマネジャーが殆どと言われている現代、自分も実務担当者として動くこともあるが、前面に出すぎてはいけない。
「プレイングに過剰に時間を当てているマネジャー」は、一般的なマネジャーよりも職場業績が低いということが本の中のデータに出ている。
プレイングマネジャーであっても、あくまでもマネジメント職である。
つぶやき:
ジョブ型という制度が会社に入ってきた場合、「プレイヤーとしてやっていたほうが気持ちが良い」とか「部下に任せられないことが多い」とか思うのであれば、専門職(エキスパート職)の道を探ったほうが良いのかもしれない。
自分のためにも、部下のためにも、組織のためにも、マネジャーに固執する必要はない。
あくまでも、マネジャーは ”他者を介して” 成果をあげる人。
② 助言をもらえるマネジャーに
分析の結果、「仕事の助言やコメントをもらえるマネジャーは職場業績が高い」と分かったとある。
誰から?という点は、①会社の上司 ②会社の他のマネジャー ③会社外の知り合い・友人 らしい。
「トップは孤独だ」と聞いたことがあるが、ミドルマネジャーだって孤独だ。独りで悩むことがある。愚痴を言いたいときもある。
そんなときに、直接的な利害関係はないが、会社の風土や制度などのことを理解している「会社の他のマネジャー」は、ちょうど良い距離感で、良き話し相手になる。愚痴も言い合える。
つぶやき:
マネジャー研修で会う同期は大切にした方が良い。勤務地や所属部署が異なっていても、研修後に関係性を定期メンテナンスし、交流を深めたほうが良い。
③ 定期的に振り返る
本の中では、人事・研修担当者向けのメッセージとして、1回きりの新任マネジャー研修ではなく、数か月後に「フォローアップ研修」をやったほうがいいと勧めている。
目的は、現場での実践経験を振り返るためである。
つぶやき:
研修機会に頼らずとも、マネジャーとして早く活躍したいなら、定期的に自分のマネジメント行動を振り返る機会を持つことだ。何が良かったのか、そうでなかったのか。
ただし、振り返るときに「マネジメントの基本」のようなものに照合してどうだったかを考えないと、効果的な学びは得られず、マネジャーとしてうまく成長できない。
そういった意味で、会社がせっかく用意してくれる「新任マネジャー研修」を真面目に受講したほうがよい。その学習内容に基づいて、自ら現場で実践&振り返りをすれば良い。
定期的な振り返りを行うのは、自己規律が求められるが、プロのマネジメント職を目指してそのくらいの努力がしたほうが良い。
自主的に本で「マネジメントの基本」を学びたいなら、まず今回紹介した本がお勧め。
マネジメントの基本を学ぶなら、以下の書籍もわかりやすい。参考までに。
JMAMマネジメント教育研究会 編『マネジメントの基本教科書』日本能率協会マネジメントセンター 2020年
大島洋 著『管理職の心得』ダイヤモンド社 2010年
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