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職場づくりのヒント(読書感想⑦)

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今回読んだのは、

中村和彦 著『マネジャーによる職場づくり 理論と実践』日本能率協会マネジメントセンター 2021年

である。

現場のマネジャーにとっては、”部下育成” という言葉と同じくらいに ”職場づくり” という言葉には耳馴染みがあるだろう。

マネジャーは、部下一人ひとりを何とか成長するように支援したいという意識は持っているだろうが、同じだけ職場(チームと言っても良い)づくりへの意識も持たねばならない。

リモートワークの導入により、物理的な ”職場” への意識が薄れている(なくなっている)中で、どうやって ”職場” をつくっていくのか。

※ この辺の話を、立教大学の中原先生とお話ししたときのことが先生のブログに書かれている。参考までに(中原先生のブログ)。

マネジャーはこれまで以上に、意図的に ”職場をつくる” 行為 をやっていかねばならない。

今回紹介する本の著者である中村先生は、この ”職場づくり” (難しい言葉として、「組織開発」と言い換えられる)における国内の第一人者である。(中村先生の情報)(組織開発の説明

私の感想としては、この本の帯に書かれている言葉「よい理論ほど実践的だ(by クルト・レヴィン)」の通りの本である。理論、理論しておらず、現場のマネジャーが使えるように書かれている。

ただし、書かれている内容を使いこなせるまでになるには、それなりの努力と工夫が必要なことは言うに及ばず・・・。

特に印象的であった箇所と、私的つぶやきを以下に書く。

1.”職場づくり” が重要になってきている背景(38ページ)

以下の理由から、”職場づくり” が大切なようである。

1.チームや職場のメンバーの多様性がさらに増加
2.働く場所や時間がさらにバラバラに
3.個業化により、自分事の範囲が狭くなり協働が困難に
4.競合他社との競争によって、新しい価値や独自の価値を提供する必要に
5.ノンルーティンのタスクで、経験則が使えない事態への創造的な対処が増加

1と2はチームがバラバラになる要素(=遠心力として作用する)であり、4と5は個人頼みではなくチーム内での対話 が対応のカギになる、と書かれている。

つぶやき:多様性が増すことは組織にとって遠心力になるのか・・・。「多様性(ダイバーシティ)の尊重」を経営課題に掲げている会社は多いが、その裏にあるリスクを考えねば。つまり、遠心力に対抗する求心力を作らないといけない。

つぶやき:「対話」とサラッと書かれているが、その実践は相当に難しい。仕事上、我々は多くの場合で「対話」ではなく「議論」をしていることがほとんど。要注意。

「対話」って難しい

仕事では「決めなきゃいけないこと」が多くある。マネジャーの役割の1つと言ってもよい ”意思決定” のことである。

そのために「議論」をする。互いの意見やアイデアについて、それぞれが己の主張を行ったり、他人の意見のダメ出しをしたりして、最後に “決める”(結論を出す)。仕事ではよくあることだ。

一方「対話」は、相互理解を目的に行われる。

自分の意見を伝え、相手の意見(結論だけでなく、背景や理由など)を聴く。どこに一致点があり、どこに相違点があるのかを理解する。これが「対話」である。

皆さんの職場では、上記4と5に関連して、職場で「議論」ではなく「対話」をする機会があるだろうか。※雑談とは全く異なるので注意!

機会はない(少ない)のではないだろうか。

では、どんなふうにやっていけば良いのか。話し合いや会議のやり方が後半に書かれている。

2.話し合いや会議での職場づくり(104~175ページ)

104ページから、話し合いや会議の場をうまく使って、いかに職場をつくるか具体的な手法が複数書かれている。その中に、上述の「対話」の要素が含まれている。

現在皆さんの職場で行われている会議は、職場への求心力を高めたり、協働して知恵を出し合ったりするような場になっているだろうか

会議のように、一堂にメンバーが会す機会をいかに有益な「対話」に場にするか。

その一つの場として、近年 “サーベイ・フィードバック” が注目されている。

多くの会社で行われている 組織サーベイ(社員意識調査、エンゲージメントサーベイなどと呼ばれているもの)の結果を使って、対話を通して職場づくりをやっていこう というものである。

私の所属している会社では、毎年エンゲージメントサーベイを実施している。

今年度のサーベイ結果をもとに、この本に書かれている手法をつかって、私は職場メンバーと対話する機会(約2時間)をつくってみた。

結果としては、運営上で多少ぎこちない面もあったが、参加メンバーの反応はよく、普段は聞けない話(職場をどう見ているか、どこに職場の問題があると思うか、どうなったら良いと思うか 等)がたくさん聞けて、メンバーのものの見方や今後の組織運営のヒントがたくさん得られた。

参加メンバーからも、「他のメンバーが考えていることを知れてよかった」とか、「普段から言いたかったことが言えてスッキリした」とかいった肯定的なコメントがたくさんあった。

同時に、職場に対する見方だけでなく、私のマネジメントに関するストレートな指摘やコメントもあり、個人的には少し落ち込んだりもあった・・・。が、前向きに捉えて今後に活かそうと思っている。

つぶやき:職場に存在する問題の中には、マネジャー(の言動)に関するものもある。それを口に出してもらえるような関係を普段から作っておかないと、こういった場はシラける

マネジャーの皆さんからすれば、

*「全員で集まるのが難しい」
*「どうせ文句ばかり出そう」
*「何も生まれない気がする」

といった声が聞こえてきそうだが、やり方を工夫し、あまり気負わずやってみてほしい。 ”職場づくり” にとっては有益な時間だ。チームへの求心力向上や、創造性の向上に役立つことを期待して是非!

組織サーベイの結果を活用するのは、何もない状態で「皆でなんか話そうぜ!」と言っても、メンバーは何を話せばいいのか困ってしまうことが多いので、話の焦点をある程度絞ったり、話のとっかかりをつくるのに都合がいいからだ。

せっかくやっているサーベイを何にも活用していないのならもったいない。職場づくりに活用しよう!

参考にするなら、以下の書籍。

中原淳 著『サーベイ・フィードバック入門』PHP研究所 2021年