このブログで何度も取り上げている ”キャリア自律” 。(→ 関連するブログ記事へ)
会社が社員をずっと面倒を見てくれる時代は既に終わっている。自分の将来は自分で決めるという、言われてみれば至極当たり前のことが「今頃」求められている。
マネジャーとしては、部下のキャリア自律を促すような働きかけと、組織成果を最大化するためにメンバーの貢献をいかに引き出すかという働きかけ・・・アンビバレントに思えるこの2つの働きかけをやっていかねばならない。
まあ大変。
部下のキャリア自律を支援するにも、部下の貢献を引き出すにも有効な接し方として「コーチング」が挙げられる。「コーチング」もこのブログの頻出ワードである。(→ 関連するブログ記事へ)
私自身、メンバーとの(1on1などの)面談では、トピックによりコーチ役として接する場合がある。メンバーが面談後に、
- 頭の中が整理されました!
- モヤモヤが晴れました
- やることが明確になりました
といったコメントをしてくれたときは、「コーチ役として少しは役立ったかな」と思う。だが、コーチ役としてはまだまだ道半ばだと自覚している。
そこで、今回読んだ本はこちら。
著者は、ビジネスコーチ株式会社の副社長。エグゼクティブコーチをやっておられる方。
以下は私の感想。
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① 現場のマネジャーにコーチ役ができるのか?
本に「ビジネスコーチに求められる条件」として5項目挙げられている。(62ページ)
条件① 誠実な人柄・人格の高い倫理観を持った人間性
条件② ビジネスコーチングの基本スキル・学習能力
条件③ ビジネスに関する基本的理解
条件④ クライアントへのフォーカス
条件⑤ クライアントに対する中立性
5条件をよくよく見てみると、”コーチならではの条件” というものでもなく、”マネジャーとしての条件” と言っても違和感がない気がする・・・。
でも、”マネジャー” の仮面を被っているときは、きっとこれができないのだろう。とすれば、部下にコーチングを提供するときは ”コーチ” の仮面に付け替える必要がある。
上記5条件は、高い専門性を持って、対価をもらうだけの価値を提供できるプロのコーチとしての条件である。そこまではいかずとも、現場のマネジャーが部下にとってのコーチ役を担うにはどうすればいいのだろうか。
上記5条件をヒントに、こんな感じに考えてみた。
条件① 誠実な人柄・人格の高い倫理観を持った人間性
条件② 自分が話すことより部下の話を聴くことを楽しめること
条件③ 自社のミッション・ビジョン・バリューと、ビジネスモデルに関する基本的理解
条件④ 部下の潜在能力を信じ、引き出し、任せ切ること
条件⑤ 部下を威圧しないこと、部下に遠慮しすぎないこと
条件①は、プロのコーチだろうが、現場マネジャーだろうがこの点は関係ない。コーチの基本要素だ。
条件②は、コーチングのスキルどうこうよりも、まずは「話す」より「聴く」を楽しめるかだ。
条件③は、短期的な視点だけでなく、中長期的な視点や普遍的な視点を持ちながら、部下の視座や視野、視点に影響を与えられる問いを投げかけることができるか。
条件④は、自分(の経験)が正しいとか、自分の考えが一番だと思わず、部下の考えに身を委ね、本人のやりたいこと・やると決めたことを全力応援できるかどうか。
条件⑤は、どうやっても上司・部下の関係なので、完全に対等な立場で話すなんて無理だが、できるだけでいいから、何でも話せそうな空気感をつくること。ただし、おかしなことを言ってきたら「それは違うよ」と伝えることも大事。
これらの5条件は、”マネジャー” の仮面を被っていては「できそうでできない」点ではないだろうか。やはり仮面の付け替えは意識してやらないと。
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② コーチングを受ける側の研修
ビジネスコーチングを真の成果につなげるためには、「受ける側」の姿勢やスタンス、問題意識も極めて重要(190ページ)
この点はコーチングに限らず、1on1でも同じである。「受ける側」への教育や啓もうは必須。(→ 関連するブログ記事へ)
指示命令型マネジメントに慣れ切った日本企業の風土において、多くの人にとって、コーチングは違和感を覚える接し方。
コーチングを受ける側が、面談で上司から問われる意味や意義、コーチングの持つ価値、自分にとってのベネフィットを理解すれば、コーチングが今より活用されるのではないか。
私の知っている範囲では、マネジャーに「コーチング研修」を実施する際に、メンバー側に「コーチングを受ける研修」的なものを実施した企業はあまり知らない。
研修でなくてもいいのだが、「コーチングを社内に広めていきますよ!」といった主旨の通達などを社内にアナウンスした会社も知らない。
本の著者もこれまでに多くの企業でエグゼクティブへのコーチング、マネジャーへのコーチング研修などをやって来られているようだが、国内でいまいちコーチングが定着していると言い切れない現状は、コーチングを受ける側へのアプローチが圧倒的に不足しているからかもしれない。
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今日は、コーチングの本を読んでの感想でした。
コーチングという手法に限らず、人材育成は骨の折れる取組です。しかも、成果を出すことと育成はアンビバレントな関係の場合が多いので厄介です。
とはいえ、それを踏まえたうえで、マネジャーが仮面を付け替え、部下のコーチ役としてどれだけ忍耐強く演じられるか。我々にコーチ役を楽しめる余裕があるといいのですけどね。
お互いにがんばりましょう!
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