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マネジャーの皆さん、鍵を握ってますよ(読書感想㉕)

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今回読んだのは、こちら。

中原・関根・島村・林 著『 「研修評価」の教科書 』ダイヤモンド社(2022年)

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なーんだ、研修関係の本か。自分には関係ないや・・・・と思わずに、現場のマネジャーにも関心をもってもらいたい内容 なのですよ。

皆さんの部下が受講する研修に関連して、マネジャーとしてどのような関わりをすれば、部下の成長につながるか。知っていて損はない(どころか得がある)!

以下は私の感想。

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① 研修は成果や業績に間接的に影響

研修には、成果・業績を直接高めるような、いわゆる直接効果はないと考えるのが、多くの専門家の一致するところです。(44ページ)

研修には「媒介変数(研修と成果・業績との関係を側方から後押しするような要因)を経由して、成果・業績に対して、良い影響を与える「間接効果」があります。(44ページ)

成果・業績を上げるには、会社が設定した戦略の実現、目標の達成に向けた従業員の行動こそが重要である(47ページ)

その研修を受ければ成果が出るのか?

と、いやらしい質問をする人がいるが、そんな簡単なわけないじゃん、ってこと。

研修によって「とるべき行動」を学び、実践し、習慣化(行動変容)し、成果・業績があがるということなのだ。

そう考えると、研修内容が会社の戦略や目標を見据えた、しっかりと練られたものでないと、全く価値がない。(そうでない研修は結構ある)

ここは研修部門にとって、超重要なミッションである。

マネジャーの皆さんには、本当に現場で役立つ研修を用意するために、研修部門からインタビューの協力依頼が来た場合、意見やリアル状況を是非お話ししていただきたい!

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② マネジャー、部下の学びを邪魔していないですか?

カークパトリックは、「レベル3:行動」について、職場において受講者の行動変化が起きるためには、次の4つの条件が必要であると述べています。
(1)個人が、「変化したい」という欲求を持つこと
(2)個人が、「何をどうやればよいか」理解していること
(3)個人が、「適切な雰囲気」で働いていること
(4)個人が、変化することで評価されること  (59~60ページ)

マネジャーの皆さんに知っておいてほしいのは、(3)の「適切な雰囲気」について。

”雰囲気”には5段階あって、抑止的~やる気をそぐ~中立的~奨励的~要求的 とある。

簡単に言うと、部下が学んできた研修内容にマネジャーがどれだけ関心を持っているか、部下が研修内容を現場で実践する際にマネジャーがどれだけ支援しようと思っているかの程度を表している。

例えば、

  • 抑止的・・・「研修で学んだことなんて無視しろ!そんなもん役に立たん!」的な感じ
  • 要求的・・・「研修で学んできたことを実践していこうぜ!私も支援するよ!」的な感じ

皆さんは、部下が研修から戻ってきたらどんな関わりをしていますかね?

私の見立てでは、多くのマネジャーが「中立的」なのではないかと思う。例えば、こんな感じ。

  • 部下が受講する研修に関心があまりないので、内容を知ろうとしていない
  • 部下に受講の感想を聞くこともない(かといって、否定もしない/邪魔もしない)

前提として、研修部門が現場に役立つ研修をしっかりと準備・提供してくれるという状況が必要なのだが、もし役立つ研修を用意してくれているのであれば、マネジャーの皆さんには、部下に対して奨励的ないしは要求的な関わり方をしてもらいたい ところなのです!

それにより、部下が成長したり、働きがいを感じたりすれば、組織にとってもプラスだし、マネジャーの皆さん自身も助かる。

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③ マネジャー、研修に巻き込まれてください!

部下(受講者)が研修で学んだことを現場で活かし、行動変容や成果につなげるためには、上司である現場マネジャーの積極的な支援が欠かせない(185ページ)

研修部門はきちんと考えて現場に役立つ(成果につながる)研修を用意してくれているはずである。(そうでないなら、研修部門に建設的な文句を言ったほうがよい)

役立つ研修で学んだ行動を実践し、習慣化させることは、部下の成長にもつながるし、成果にもつながる。ということは、マネジャーにとってうれしいことなはず。

なので、マネジャーは、もっと(部下の受ける)研修に関わっていったほうが良い。マネジャーから研修に巻き込まれに行きましょう!

具体的には、以下のような行動を! (186~188ページ参照)

1.部下が受講する研修の目的と内容をマネジャーから研修部門に取りにいく
2.マネジャーから部下に研修目的や期待をつたえる
3.部下が研修から戻ってきたら、感想や学びを聴き、支援を申し出る
4.マネジャーも部下の研修内容を理解し、それに沿って指導する

面倒くせ~と思うかもしれないが、もし部下育成に関して悩んでいるのであれば、これまでのやり方を何も変えないよりは何倍も何十倍もやってみる価値はある。

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今回読んだ本は研修に関するものなので、本来の読者は人事や研修に関係する人だろう。現場のマネジャーは手に取らない可能性が高いと思われる。

しかし、研修が意味を持ち、個人や組織にとってプラスの影響を与えるには、どうしても現場マネジャーの関与が必要なのである。研修成果とマネジャーの関与は切り離せない。

マネジャーと研修部門がもっと関わり合って、協力し合って、ともに従業員の成長や組織の発展につなげていけたら・・・。