ここ2年間、ご縁をいただき、大学(経営学部)の外部講師として授業を担当している。テーマは「リーダーシップ」である。
学生(1年生)のうちから、与えられる課題を通じて自らのリーダーシップスタイルを考え、伸ばしていくことのできる素敵なカリキュラムである。(学生は課題対応で大変・・・)
恐らくは、学部の授業で組織行動論や人材開発を学んだことも影響しているのだろうが、授業中にグループワークをしていると、学生は ”モチベーション” という言葉をよく口にする。 ※略して ”モチベ” と言っているようだ
- 今日はモチベが上がらないんだよねー
- ごめん、俺モチベが低い日って、発言が少なくなるから(ゴメンね) などなど
- **************
私はこの状況を少しだけ心配している。なぜか・・・
私の仮説(持論)なのだが、人は言葉を知ることで、それへの意識が高まると思っている。
つまり、”モチベーション” という言葉を知っていることで、彼/彼女らは元気になったり、落ち込んだりすることの理由づけ(自己正当化)を気軽にしやすくなるのではと想像する。
だから、彼/彼女らが社会人になって、仕事がうまくいかないときにモチベーションを理由(言い訳?)にして、自分や周囲を納得させようとするのではないか・・・と心配している。
だってしようがないじゃないですか。俺、なんか最近モチベが低いんっすよねー
ここでとどまらず、
部下のモチベを上げるのは上司の仕事じゃないですかー。ちゃんとやってくださいよ!
なんて言ってくるようなら、世も末・・・上司としてはえらく厄介な話である。考えすぎか。
※ 私がお邪魔している大学にはそんなレベルの学生はいないと信じてます!
**************
先日テレビで、日本電産の永守氏が自ら開校した大学での講義を様子を放映していた。
ある学生がモチベーションに関して永守氏に質問をしていたのだが、永守氏の返答はこうであった。
「トップに立ちたいのなら自分で自分を動機づけしなさい」と。
私見として、たとえトップ(社長)を目指さなくても、自分で自分を動機づけることは「ビジネスパーソンの基本」なのではないかと考えている。
ただし、現実はそんな人材ばかりではない。いろんな部下がいる。組織成果をちゃんと出そうと思ったら、モチベーションの低い部下をどうにかしなくてはならない。
前置きがかなり長くなったが、今回読んだ本はこれ。
モチベーションに関する本で、著者は九州大学大学院の先生。心理学がご専門。
以下は私の感想。
**************
① 自律的モチベーションの醸成
この本では、昨今の環境変化に伴い、はたらく人に「自律的モチベーション」が求められているという主張が軸になっている。
「自律的モチベーション」により、はたらく人は
1. 仕事や職務を自ら進んで、能動的に取り組む状態をつくる
2. 自らのモチベーションを自らで調整する
ようになり、これからの厳しい時代に適応できると。
確かに、部下一人ひとりがそんな状態であれば、上司は前向きな、将来に向けての仕事に時間が避ける。
「自律的モチベーション」の基盤として、以下の3つの心理的欲求を充足させる必要があるとしている。(46~48ページ)
1 自律性への欲求(自ら考え、計画・行動し、主体的に働きたい)
2 有能さへの欲求(自らの能力を高め、他者に認められたい/周囲に影響を与えたい)
3 関係性への欲求(他者と良好な関係を築きたい)
マネジャーとして、以下の点を自分に問うてみてみよう。
● 指示命令(ばかり)ではなく、部下自身に考えてもらうような接し方が本当にできているだろうか?● 部下の意欲や能力を認め、自信を付けさせるようなことを言っているだろうか?
● 部下が(私とだけでなく)周囲と良好なコミュニケーションをとれるような環境につくってあげられているのだろうか?
マネジメントとしては、それはやって当たり前に思える観点だが、丁寧に内省してみるとどうだろうか。自己採点75点・・・。
② シニアのモチベーションを考える
年上部下への接し方に悩んでいるマネジャーは多い。そんな人へのヒントが書かれている。
まず、産業・組織心理学者ラルフ・カンファー氏の唱える、「シニアが抱く3つのモチベーション」を理解する必要があるらしい。(131ページ)
1.就業へのモチベーション(定年を迎えたあとの就業に関するもの)
2.職務遂行へのモチベーション(我々が普段使っているモチベーションという言葉はこれ)
3.退職へのモチベーション(仕事を辞めることへのモチベーション)
退職が迫ってくると、職務遂行への意欲が減退するというイメージはないだろうか。
そうではないらしい。上記2と3は、それぞれ両立させることが可能だと分かっているようだ。
著者がおこなった調査(非管理職1,049名)でも、
業績を上げることや目標の達成を目指す「達成志向モチベーション」は、年齢とともに低下するどころか、むしろ向上している!!!(132ページ)
新たに学習することへの意欲などを表す「学習志向モチベーション」は、年代による変化が見られなかった。(132~133ページ)
注意点としては、若手やミドルに比べて、シニアは個人差が大きくなるようである。
自分はシニア層に対して、ステレオタイプな見方をしていないかどうか。
言葉では「俺はもういいよ」と言っている年上部下も、実は熱いハートを保持しているかもしれない。
***************
③ 職場全体の成果への影響を考えると・・・
最新の研究からは、優秀な人が職場全体の業績を引き上げる効果よりも、困った人がそれを引き下げる効果のほうが相対的にインパクトが大きいことがわかっています。(181ページ)
皆さんの職場に ”困ったちゃん” はいないだろうか。もしいる場合、その人にどう接しているだろうか。
その人物に、皆さんの貴重な時間やエネルギーを使ってしまい、戦略遂行や組織運営に悪影響を及ぼしたり、他のメンバーのモチベーションに負の影響が及び、チームの士気が下がったりしていてはいけない。
3年B組で言うところの「腐ったリンゴ」にはちゃんと対処せねばならない。手に負えないからといって野放しにしていると、あらゆるところに害が出て、皆さんのマネジメントとして評判も下がってしまう。
私が担当している集合研修でも同じである。一部の受講生がふざけたり、クラス運営を妨害するような言動をとった場合は、本人に遠慮のない対応をすべきと考えている。
そうでないと、他の受講者の学びの機会を奪うことになるから。
**************
今日はモチベーションに関するお話でした。
読みやすく、テレワークの環境下を踏まえた内容で、おもしろかったです。
コメント欄