リーダーシップはよく知られた言葉であるし、仕事でも日常的に使われる言葉である。
では、フォロワーシップ という言葉を聞かれたことはあるだろうか。
フォロワーシップとは、
組織のゴールをリーダーと共有し、フォロワーがそのゴールに向かって行動することで直接的または間接的にリーダーや組織に対して発揮される影響力(西之坊, 2021)
である。
組織におけるリーダーの重要性については、多くの皆さんが肌感覚として同意されるだろうが、フォロワーの重要性についてはどう思われるであろうか。
現在マネジャーの皆さんが若かりし頃、当時の上司(マネジャー)にとってどのようなフォロワーであったであろうか。
そして、皆さんの率いる現在の組織に頼れるフォロワーはいるだろうか。
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今回読んだ本は、西之坊穂 著『日本の組織におけるフォロワーシップ』晃洋書房(2021年)である。
著者は摂南大学経営学部の准教授。この本は専門書なのだが、非常にわかりやすい論理展開で、何より内容がおもしろかった。
定量調査の部分は少し専門的であるが、現場のマネジャーにもお勧めである。
以下は私の感想。
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① 日本人らしいフォロワー行動 ”配慮”
日本の組織に属する従業んが上司をうまく動かすために発揮するフォロワーシップとして「積極的行動」、「批判的行動」そして「配慮的行動」がとられていることが明らかになった。(112ページ)
日本のフォロワーは、リーダーに気遣いを見せる傾向がある。(112ページ)
海外のフォロワーシップ研究でも「積極的行動」と「批判的行動」という要素は明らかにされているようだが、「配慮的行動」は日本人ならではのもの、と考察している。
「配慮的行動」とは、例えば、
- 直属の上司であるA氏を立てるために、A氏の上司であるB氏に説明へいくときはA氏に同席してもらう
- お客様に会う際は、相手の役職に応じた上司を巻き込む
といったことである。
これって日本的なのか・・・。
まあ、上司のメンツを保つとか、上司を気持ちよくさせるといった行動は、(自分がフォロワーとした場合)仕事を思うように進めるうえで重要だな。(面倒と感じるけど)
② 何がフォロワーシップ行動を喚起するのか
情緒的コミットメントがフォロワーシップの先行変数になっていることが示された。(127ページ)
現場のマネジャーとしては、メンバーが優秀なフォロワーとして振舞ってくれて、組織成果があがれば万々歳である。
では、理想とされるフォロワー行動を喚起する要素は何かというと ”情緒的コミットメント” らしい。
情緒的コミットメントとは、所属する組織の掲げる理念やビジョンに共感したり、組織に愛着や一体感を感じている状態。
なんでこの会社にいるの?と質問した時に、「生活のため」とか「給料がいいから」といった理由しか返ってこないのであれば、その人の情緒的コミットメントは高くないと言えそうだ。
では、メンバーの情緒的コミットメントを高めるために、マネジャーは何をすればよいか。
困った時に皆が助け合う文化づくりや、階層に関係なく意見を尊重する文化づくり(154ページ)
のようだ。
やはり、肝は ”組織開発” だ。以前にも記事に書いたが、組織開発の推進力はこれからのマネジャーにとって、かなり重要な能力になってくるだろう。(→ 組織開発に関する記事へ)
③ フォロワーシップ開発の重要性
日本の組織では、成果主義の浸透によってミドルリーダーがプレイングマネジャー化することで、ミドルリーダーがリーダーシップを発揮する機会が減少している可能性が考えられる。・・・(中略)・・・より効果的に組織の成功を得るためには、リーダーに対するリーダーシップ開発に加えて、フォロワーにフォロワーシップ開発を行うことが重要だと考えている。(157ページ)
賛成。
私は、なんでもかんでもミドルマネジャーに押し付けている現状を見直すべき だと思っている。
1on1にしても、評価者研修にしても、キャリア自律支援にしても、上記のようなリーダーシップ開発でも、マネジャー側だけに「あれやれ、これやれ」ではなく、メンバー側にも施策を打ったほうが効果的。
例えば、
*1on1を行う意味を考える研修
*自己成長のための目標設定研修
*キャリア自律を考える研修
*フォロワーシップ研修
といった学習機会を用意すること。(集合しなくても、e-ラーニングでもいける)
実施に向けては、時間も予算もエネルギーも必要だが、中長期的に見れば、経営にとってポジティブな影響はきっとある。
人的資本経営を謳うなら、従来通りの発想と施策から脱却する必要があるだろう。
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