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早期退職時代のサバイバル術(読書感想⑮)

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「働かないおじさん」という言葉。

ぐーたら寝ているおじさんのイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

テレワークの環境になり、仕事ぶりを周囲に見られることが少なくなっている現在、「あの人(おじさん)は何をやっているのか」と周囲に訝しがられ、それに尾びれ背びれが付いて、「あの人は大した仕事をしていないのに、そこそこ良い給料をもらっている」なんて陰口を叩かれる始末に・・・。

そんな状態は、”おじさん” 本人はもちろん嫌だろうし、組織にとって何のメリットもない。

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働かないおじさんは、非管理職の人たちばかりではない。

マネジャー研修に参加されている人たちの口から

  • いやぁ~、もう50代だし、今さらキャリアビジョンだの自己啓発だの言われてもねぇ
  • あと数年で定年と思うと、あとは無事におとなしく過ごすだけ
  • 役職が外れたらどうしようかね。まあ、そのときに考えるか・・・

といったコメントを聞くことが何度もある。

部下から「働かないおじさん」と思われていないかと心配になってしまう発言である。

仮に、いまはマネジャーとして何とかやっているのかもしれないが、この先、こういった思考の人たちは組織の中で価値発揮し続けられるのだろうか。

考え事をしている女性会社員のイラスト(スーツ) | かわいいフリー ...

今日紹介する本の中で「心理還元主義」と表現し指摘しているが、「働かないおじさん」を本人のやる気・マインドセットの問題だとして片付けようとするのは危険だ。

「働かないおじさん」たちも、なりたくてこんなことを言うようになったわけじゃないんだろうなぁと思う。つまり、本人だけの問題ではないと。

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どうして、”働かないおじさん” が定期的に量産されるのか、どうすればこの状況を変えられるのか。

今回紹介する本は、この点に関して、具体的に、多角的に、データを用いながら丁寧に書かれている。実は、著者は私の同僚なのだが、普段の仕事ぶりを知っているからこそ、この本をお勧めしたい。

  • ミドルシニアの活性化を図りたい人事担当者
  • キャリア研修を企画・実施・運営している研修担当者
  • おじさん世代
  • これからおじさんになっていく世代

といった方々にお勧め!

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以下は、このブログのコンセプトである「ミドルマネジャー」に関連させての感想。

① 管理職が具体的職業でない日本

日本では、この前まで総務部長をしていた人が人事部長へ、そして経営企画へ、というように職務をまたいで異動する「管理職」が多く存在します。それは「管理職」というものが具体的な職業に紐付いておらず、組織内の階層関係を示す「社内雇用区分」に近いものだからです。(95ページ)

このブログでも何度か書いているが、日本に管理職を専門職とみなす考えはない(ほぼない)。

管理職とは、長年組織に貢献してきたことを示すポジションか、スタープレイヤーだった人の名誉職といった見方が強いのではないか。

残念ながら、管理職は専門職(=プロフェッショナル)という自覚がほぼないので、組織を率いたり、束ねたりする「マネジメント職」としての自分を日々磨くという発想や行動が乏しくなる。

となれば、数年もマネジャーをやっていると慣れやマンネリ感も出てくる。それが部下にも伝わり、部下をモチベートすることが少なくなる・・・。こういった状態は決して良いものではない。

”働かないマネジャー” とまでは言われていないと思うが、”惰性でやっているマネジャー” と思われないように、管理職もプロとしての自覚と日々の研鑽が必須。

② 学びが職場に偏っている

日本人の学ばなさは、そのキャリアの歩み方によって、「学びが職場に偏っている」ことが一因です。(185ページ)

先日『ガイアの夜明け』というテレビ番組を見ていたとき、りそな銀行の元会長である細谷英二さん(故人)が「りそなの常識は世間の非常識、りそなの非常識は世間の常識」と、従業員の前で述べていらっしゃる映像をみた。(りそな変革時の一コマ)

この言葉は、当時のりそな銀行のみならず、現代のどこの会社にも警鐘として響くのではないか。

新卒として入社し、その会社で昇進し、マネジャーを担っている場合、常識に世間ずれが生じているかどうかだけではなく、職務遂行能力(=マネジメント能力)も世間ずれしていないかどうかも確認したてみてはどうかと思う。

マネジャーはその会社の風土や仕組み、ルールの下で組織をマネジメントしている。

部下もその会社に長くいる場合、部下は

  • マネジャーにこんなことを言っても、うちの会社では無視されるだけだ
  • 上司にこう言ったら、きっと・・・と答えるだろう
  • マネジャーはきっとこうしてくれるだろう

と、マネジャーの言動を予想し、だいたいその通りになる。だから、わざわざ言わない。

あなたのマネジメントはよその会社で通用する気がしますか?

この問いに対して、「別に転職するつもりはないので、今の会社で通用していればいいんじゃないの?」と思ったとしても考え直した方が良い。

これまでのブログにも書いているが、現在多くの企業が取り組んでいる、従業員のキャリア自律多様化が進めば、これまでのようなマネジメント方法だけでは通用しなくなる可能性は大きい。

例えば、本の中でも、キャリア自律や多様化の動きを組織にとっての ”遠心力” と表現しているが、組織を束ねるためには ”求心力” を生まねばならない。(そうでないと組織がバラバラになる)

多様性や求心力に関する過去のブログ

新たな状況に適応するためには学びが必要である(この本の中でも、変化適応力の重要性を謳っている)。では、どうすればよいか。

1つの方法は、社外の人との交流である。

自分のマネジメント方法は世間ずれしていないか。もっといいやり方があるのではないか。

他社でマネジメント職を担っている人と話をしてみると、多くの発見や気づきがあるものだ。

上記①の点に記載した、プロの管理職としての自覚と能力を高めるためにも、職場や会社を外れた場での学びの機会があると良い。

職場や同じ会社に閉じた世界の中で物事を思考し、自らの組織をマネジメントしないこと。

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多くの大手企業に役職定年という制度が存在する。

マネジャーを下りた後のことを考えることはもちろん重要だが、まずは今のマネジャーという役割を、より高い質で担っていくためにも、日々プロ意識をもって自らを研鑽していきたいものである。

もちろん私も。