コロナ禍以降に入社した新卒社員に関する話題(相談)が増えている。
離職、メンタル不全、成長が遅い・・・。
そういったことがそれまでに全くなかったわけではないが、2020年度・2021年度入社の新人は該当ケースが増えているようである。
入社して早々にテレワーク環境下におかれたことによる影響は小さくないだろう。(パーソル総研調査結果へ)
せっかく採用した金の卵である。離職してほしくはない。(採用費用もかかっているし)
新卒入社者だけではない。
新しい価値を創造するための人材(代表例:DX人材)の中途採用もますます重要性が増してきている。
仮に、優秀な中途人材を採用できたとしても、それを受け入れる組織のレディネスが整っていない場合、優秀だけにすぐに他社へ移ってしまう可能性もある。
コロナ禍により多少状況は変わったが、国内では以前より将来の人手不足が危惧されていた(パーソル総研調査結果へ)ことを考慮すると、新卒であれ、中途であれ、人材のリテンションは重要なテーマである。
そこで各社が ”オンボーディング” に力を入れ始めている。
”オンボーディング” とは、
新しく組織に参加してきた個人の円滑な適応をサポートするもの
である。(尾形, 2022)
前置きが長くなったが、今回読んだ本はこれである。
尾形真実哉 著『組織になじませる力」アルク 2022年
著者は、専門的には「組織社会化」というが、新卒者や中途者を組織になじませるプロセスの研究では国内第一人者である。
研究者の書いた本であるが、この本は実践的な内容である。
著者が想定している読者(人事部、新卒者、中途者、学生)ではないが、新卒者や中途者を受け入れる側の現場マネジャーも読むと大いに参考になる。
以下は、マネジャーに関係することへの私の感想。
① フィードバックの提供
上司からのフィードバックは、新卒採用者に対して大きな影響を及ぼすことがわかっています。(94ページ)
上司が行う、ポジティブで、成長につながる発展的なフィードバックにより、新卒社員は自分の成長に有意義と感じ、積極的にフィードバックを求めるようになるようだ。
結果として、仕事の知識やスキルの習得が促進される。
その際に注意したいのは、人事部が新卒社員に(組織になじむために)どのような行動をとらせようとしているのかを、現場のマネジャーが理解していることである。
人事部が言っていることと、現場のマネジャーが言うことが異なっていれば、新卒社員は迷ってしまい、組織に対する不信感にもつながる。
一義的には、人事部が現場マネジャーへ情報発信すべきだが、もしそうでない場合はマネジャーのほうから人事部に問い合わせて「新人にどんな行動を学ばせたいのか」を確認したいところである。
② プロアクティブ行動の理解と指導
プロアクティブ行動とは、「個人が自分自身や環境に影響を及ぼすような、先見的な行動であり、未来志向で変革志向の行動」と定義されます。(161ページ)
新卒社員を受け身の存在として扱うのではなく、自ら組織になじむための行動をとらせる必要がある。
上記した「新人にどのような行動をとらせたいのか」の解は、プロアクティブ行動である。
プロアクティブ行動の詳細は本を読んでいただきたいが、プロアクティブ行動を促すには、職場上司の役割は重大であると書かれている。
プロアクティブ行動の指導だけでなく、新卒社員が組織になじむための職場環境づくりや仕事の割り当てなども職場上司にしかできない役割がある。
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著者のこれまでの研究における主な結論。
若手社員の組織適応は、若手社員の問題よりも、環境が重要な役割を果たす。
その中でも、特に上司の役割は多大である。(203ページ)
新しく組織に加わる本人の ”なじむための” 意識やプロアクティブ行動はもちろん大切。
同時に、繰り返しになるが、新卒社員(や中途社員)をあずかるマネジャーの ”なじませるための” マネジメントも重要。
両者の取組によって、彼/彼女らが組織になじみ、イキイキと活躍できるような支援をすること。
結果として、職場全体も活性化されればこんなに嬉しいことはない。
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