人材育成に関する研修を20年以上やってきているが、部長を対象とした研修機会は少ないと感じる。
同じミドルマネジャーでも、課長と違い、部長になった人を対象として「新任部長研修」をやっている会社は案外少ないのではないだろうか。
なぜだろう?
育成機会を企画する部門(人事?)が、「同じミドルマネジャーなのだから、新たに学ぶことはないだろう」と思っているのか。
はたまた「部長にもなろうという人なのだから、優秀なはずだ。研修など不要」と考えているのか。
単に「部長は忙しいから、研修で時間を拘束なんてできない」という不文律が働いているとか・・・。
経緯や事情は会社によって異なるが、いずれにせよこの状況は部長本人にとってのみならず、部下、そして会社にとって良いとは思えない。なぜか。
当たり前だが、
部長と課長では期待役割が全く異なる
からだ。
今回読んだ本は、ヒューマン・アセスメントを長年やっているベテランコンサルタントの書いた本。
米田巌 著『部長の資格』講談社現代新書 2013年
長年の経験から、「あなたの周りの困った部長」を18タイプに類型化して紹介したり、部長としての能力開発方法などが書かれている。
これから部長になろうとする人、現在部長の人にとって、活躍するためもヒントが書かれている。
以下は、私の感想。
① 部長に「入学試験」はないに等しい
日本の部長は課長と違って、マネジメント能力についてきちんとした「入学試験」をクリアしているケースは少なく、部長の能力の棚卸しはできていない(105ページ)
確かにそんな印象はある。
部長に求められる能力要件はあるとしても、それを昇降格に活用している会社はどれだけあるのだろうか。(まあ、日本企業だと余程なことをしないと降格はない)
最近話題の ”ジョブ型” に基づき、部長のグレードに対する役割定義書(Job Discription)をつくっている会社は増えてきているので、今後は風潮が変わってくるのかもしれない。
② 個人と組織を対象としたリーダーシップ
課長の場合、個人のリーダーシップでもやりようがありましたが、部長に求められるのは組織リーダーシップです。個人リーダーシップよりもより強く、大きく、広いものが要求されます。(111ぺージ)
個人に対する影響力(リーダーシップ)なら、コミュニケーション能力で何とかなるが、組織に対する影響力になると、それだけでは足りない。
ビジョンや仕組みなどを活用し、組織を動かしていかなければならない。
このあたりのことは、以前のブログで書いている。(関連ブログへ:部長は”枠”をつくる)
③ 言動を変えるには覚悟が必要
一般的に言って言動開発は一つのコンピテンシーについて3つのキー言動を3か月やれば他者の目にも変化が分かるようになります。これを更に2年間継続して実践すれば、変身がはっきり見えてきます。(202ページ)
ほお。
自分の言動を変えて、ミドルマネジャーとしてさらに活躍するのはそれくらいの継続努力が必要なのか。
一つのコンピテンシーにつき、3つのキー言動という点は参考になる。確かに、1つの言動しか目標設定していないと、日常で当てはまる場面が少ないから意識することが少なくなりがちだ。
複数の言動を予め目標設定しておくと、「あっ」と思い出すことが多くなる。
自分もキー言動を3つ設定しよう。
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