元同僚のパーソル総合研究所の小林祐児さんが、また面白い本を書きました。タイトルは・・・
罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法
センセーショナル!! ということで、さっそく読みました。
「罰ゲーム化」とはどのようなことを言ってるのか。そして、管理職は、どうして「罰ゲーム」と称されるような役割になっているのか。この状況をどうすれば修正できるのか。小林さんは、豊富なデータと知見をもとに多面的に分析し、論じています。
一気に読みました。面白かったです。
経営層の皆さん、人事部門で働く皆さん、現役管理職の皆さん、管理職に対して思うところのある皆さん、そういった方々に読んでいただき、皆で話し合う場があればいいのになぁーと思いました。
以下は私の感想です。少しはネタバレすると思いますが、ご了承ください。
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筋トレ発想からの脱却
「罰ゲーム化」を修正するために、小林さんは4つのアプローチを提言しています。ただし、「その前に」ということで、管理職問題に対策を打とうする多くの企業がハマってしまう罠について述べています。その罠とは、
管理職の負荷が高いのは、管理職自身のマネジメント・スキルが足りないからだという発想
だそうです。そして、その発想により、人事部門は
問題の原因を管理職自身のスキルや意欲といった属人的なものに集約させ、研修トレーニングのメニューを見直したり、追加することを実施(152~153ページ)
しようとする・・・。小林さんはこういった思考を、マネジメント課題の「筋トレ発想」と呼んでいます。
管理職は忙しい中、研修に集められ、戦略に何の紐づきもない、部下とのコミュニケーションに関するスキル研修(「1on1」とか「傾聴」とか「対話」など)を受講させられ、一部の人を除いて、多くの管理職がますます研修を嫌いになっていく・・・。そして、
人事と現場の距離が開き、他の重要な人事施策の有効性にも悪影響を及ぼす(155ページ)
これ、納得感アリアリです。
私のこれまでの経験からして、多くの会社がこんな感じですね
人事部門は、なんでもかんでもマネジャーのスキル不足に原因を帰着させ、マネジャーにスキルさえ付与すれば何とかなるだろうと思っていたり、「マネジャー研修さえ提供すれば、人事部門としての責任は果たした」とばかりに研修ベンダーに内容を丸投げしていたりと、「罰ゲーム化」に一役買っているのかもしれませんね。(もしかして、罰ゲームのキープレイヤーかも?)
その結果、経営(事業)と人事がこれまで以上に、機能的にも心理的にも離れていき、昨今言われている ”人的資本経営” の実現には到底たどりつかない事態になっていく・・・。
筋トレ発想、マズいっす。
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フォロワーシップ・アプローチ
「罰ゲーム化」 を修正するために、小林さんは4つのアプローチを提言していますが、そのうちの1つが「フォロワーシップ・アプローチ」 というものです。
このアイデアには私も強ーく賛同します!
以前に、このブログで「やってほしいですよね、「被〇〇研修」」というタイトルの記事を書きました(→ 当該ブログへ)。私も同じようなことを考えておりました。
近年では、管理職がメンバーに対して、ハラスメントが気になって、組織として言うべきことが言えない/やるべきことがやれない状況があると想像されます。
そこで、経営企画部門や人事部門が「組織の一員として守るべきルールや持つべき考え方、制度の正しい理解」などをフォロワー(従業員)側に研修や通達によりきっちり打ち込む。
とはいえ、書面による通達だけだと効果は怪しいですし、フォロワー側への1回きりの研修効果も怪しいですが、フォロワーシップ・アプローチによって助けられる管理職はきっといると思います。
※ 他の3つのアプローチも興味深いものでした。
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管理職としての価値を高めるために
この本(第5章)には、「罰ゲーム」の作り手である企業向けに提言しているだけでなく、「うちの会社は何もしてくれない」と嘆く管理職の皆さん向けにも幾つかの提言などが書かれています。
例えば、ジョブの定義が曖昧な日本の管理職は転職市場で評価されづらいという状況を踏まえ、転職市場において、管理職としての自分の市場価値を高く主張できるように、保有するスキルや能力を言語化し、伝えられるようになることが大切であると言っています(213~214ページ)。
ネットの情報を見ますと、管理職の転職は以前よりも多くなってきているようですが、転職前提でなくても、自らのスキルや能力を言語化し、伝えられる状態になることはなにかと有益だと思います。自己認識の高まりが自らのマネジメントに好影響を与え、今の組織で更に活躍できる可能性が広がると思います。
管理職の皆さん、自分の保有能力の棚卸をしませんか。オンライン面談などでお付き合いしますよ!
他にも提言が書かれています。「罰ゲーム化」 している現状を嘆いたり、愚痴を言ったりする気持ちはわかりますが、管理職として生き残る/成長する/楽しむためにできることはまだありそうです。
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読み終えて、多くの「なるほど」がありました。確認できたこともありましたし、今後の業務に活かせそうな発想も得られました。
事業会社の人事部門(人材開発・組織開発)にお勤めの皆さんや現役管理職の皆さんと、この本を通して、勉強会や事例共有会などをやってみたいと思いました。
同じような考えをお持ちの方、是非やりとりしましょう!
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