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読書感想(24-6)企業価値を高める組織・人材マネジメントの思考と実践

opened book on top of table 図書館
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とても良い本でした。人事部門(HRBP、CoE)の皆さんにお勧めです。

石田雅彦 著『企業価値を高める組織・人材マネジメントの思考と実践』金融財政事情研究会(2021)

応援団長
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これからの時代を考えますと、現場のミドルマネジャーにとっても有益な内容が書かれいると思います。

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「はじめに」として、本の冒頭にこのような記述があります。

これがこの本のテーマです。

長らくの間、「メンバーシップ型」と呼ばれる人事制度下で過ごしてきた人たちからすれば、「ジョブ型」という黒船は、とても恐ろしく、忌み嫌う対象なのかもしれません。

では、「ジョブ型」が万能な制度かといえば、そうではないと思います。

著者の言う、「企業価値を高める」ための努力は、経営層や人事部門だけが行うものではなく、組織で働く全ての人にとって必要なものです。

各人がその道のプロとして価値を発揮し、会社の財務・非財務的な価値向上に貢献するにはどうしたらいいのかを考え、実践しないといけません。

なぜなら、どこの会社も厳しい競争環境に置かれています。各社とも必死のパッチですので、現状維持(を許すこと)は即ち組織の衰退につながるからです。

応援団長
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この本は、そうならないために考えるポイントがたくさん書かれています

今日は、この本の感想を2つだけ述べます。

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① ポテンヒット対策

「ジョブ型」になると、スキマ仕事を誰も拾わない、いわゆる”ポテンヒット”が増えるのではと危惧しているマネジャーは多いと思われます。

「メンバーシップ型」の時代、多くの会社が自社の価値観(バリュー)を掲げており、その中には「チームワーク」、「協力」、「協働」などといった、”ポテンヒット” を防ぐことを期待しているかのようなワードが謳われています。(参照サイト:経営グロースハッカーさんのブログへ

しかしながら、著者の言う通り、現実を見ますと、そういった価値観(バリュー)が会社内に共有・浸透し、従業員が日々実践しているかといえば、なんとも疑わしいのではないでしょうか。

価値観(バリュー)を「額縁の中に書かれている高尚な文言」ではなく、実務に直結した行動指針として、まずは従業員の意識に刷り込んでいかないといけませんね。(経営層やマネジャー層の率先垂範は必須)

会社として、”うちの社員にとっては当たり前の行動” をわざわざ評価項目に入れることへの是非はあると思います。例えば、アンダーマイニング効果(→言葉の解説:日本経営心理士協会さんのサイト)のようなものがありますので、価値観を浸透させる際の示し方・伝え方には注意がいるなを思いました。

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② キャリアを選択する自由の提供

前回のブログで書きましたが、これからの時代、社員が「自分の仕事を自分で選ぶ」ということが重要視されてくると思われます。(→ 前回のブログへ

多くの企業がジョブ・ポスティング制度(手上げによる異動の申し出)を導入しており、自らの仕事を自ら選べる仕組みが存在しています。ただ、以前は「事前に上司の承認が必要」といった条件がありましたね。今はそのような条件は設定していない会社が増えてきているようです。

そうなりますと、社員側はポジティブかもしれませんが、マネジメント側は苦労が増えますね。より多く、優秀な人材に来てもらうために、

ように、情報を準備したり、募集要項に ”魅力的に” 記載したり、面談・面接で ”魅力的に” 伝えたりできないといけません。当然、今いる社員に居続けてもらいたいなら、その人たちにも ”魅力的に” 伝えなければなりません。

前提としては、普段から職場や業務を ”魅力的に” する努力をしておかないといけませんね。

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この本の31ページにこのような公式が書かれています。

事業戦略を遂行するために、上記の組織能力を研ぎ澄ませることで、他社が模倣できない特質をつくっていく(30ページ)。そのために、現場マネジャーにも知っていただきたい内容が書かれています

人事・人材開発・組織開発のお仕事をされている方は、立教大学の中原先生のご著書『人材開発・組織開発コンサルティング』を実践する際に、今回紹介した本を読んでいれば、より具体的なコンサルテーションを現場に提供できるようになると思いました。

参考図書:中原淳 著『人材開発・組織開発コンサルティング』ダイヤモンド社(2023)