近年の人事界隈でのバスワードとも言える ”ジョブ型” 。
わかったつもりになっている自分を少しでも正そうと、海老原嗣生 著 『人事の組み立て ~脱日本型雇用のトリセツ~ 』日経BP 2021年
を読んだ。私の感想としては、 ①おもしろい ②ためになる ③読みやすい。
人事担当の皆さんに限らず、現場のマネジャーの皆さんにもお勧めしたい!知っておきたい知識満載だし、自分と部下のキャリア形成、組織マネジメントにも役立つヒントが見つかる一冊である。
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以下は、印象に残った3点とつぶやき。
①ジョブ型とは、まず ”ポストありき” である
(つぶやき)
おおっ!そうなのか。役割定義が明確で、その役割について賃金(の範囲)が明確に決まっていればジョブ型・・・ではないのか。
ポストありきなので、そこには定員数があり、空きがなければ人は動かない(昇進・昇格はない)/動かせない。つまり、社歴が長いからといってマネジャーに昇進させるが、部下はいないという、いわゆる ”担当課長” とか ”専任マネジャー” といった処遇はなくなるかも。
とすれば、マネジャーはマネジャーとしての役割発揮がこれまで以上に厳格に求められ、”マネジメントのプロ” にならねばならない。
プレイングマネジャーという存在はどうなるのか?プレイヤーとしての活躍はもう不要になるのか?
②欧州のほうが構造上、若者に厳しくミドル・シニアに優しい
欧州はポストで賃金が決まるので、ポストが変わらなければ何歳だろうが賃金は変わらない。ミドル・シニアのようなベテランになるほど、経験が豊富にあるので仕事を効率的にこなせる。
そうすれば短時間労働で済むし、休暇も取りやすい。賃金面を割り切っていれば、ミドル・シニアの皆さんには優しい環境だ。 しかし、そんなベテランが ポストに居座れば、経験やスキルの劣る若者は職にさえ就けない。
(つぶやき)
欧州のミドル・シニアは、本人が望まなければポストは不変なので、将来キャリアなんて考える必要がない。
多くの(伝統的な)日本企業で行われている、ミドル・シニア向けのキャリア研修というのは、終身雇用・年功賃金を前提にした取り組みなんだなぁ。
一般従業員にジョブ型を入れるとなると、ミドル・シニア向けのキャリア研修は不要になるのではないか。
ミドル・シニア層とのキャリア面談に悩んでいるマネジャーは多いが、将来はキャリア面談の必要性がなくなるかも。
③帰宅を阻む二神教社会。2つの神とは、顧客と上司
上司からの評価により賃金が上下する日本では、評価を得るためにちょっとしたことでも頑張りがち。顧客からの「明日までに提案書を出してほしい」とか「商品を入れている箱の角が折れているので返品対応してくれ」とかにも。”お客様は神様” のスピリッツで対応する。
(つぶやき)
働き方改革に関連する、労働時間が減らない日本、その理由について。
確かによくあるなぁ。こんなことに対応してると労働時間が減らないし、無駄とも思える時間外賃金が発生する。
著者が言う問題の根っこである
①日本型雇用と社会慣習が相まった一筋縄ではいかない問題
②労働者を守る体制の不全
を正すには、国をあげての取り組みが必要だ。ましてや、労働時間の削減や生産性の向上を、従業員個人の裁量に委ねても何も変わるはずはない・・・・。
人事制度にジョブ型を入れたとしてもヒトの働き方は変わるのだろうか・・・。かといって、何の手も打たないのはいけないけど。
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これからの働き方をいろいろと考えるヒントをくれた本である。
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