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読書感想(25-1):組織変革の教科書 リーダーが知っておきたい人と心の動かし方

この記事は約7分で読めます。

今年も、日々忙しいミドルマネジャーの皆さんに役立つ情報を提供してまいります。宜しくお願いします。

昨年(2024年)11月に発刊されました、リクルートマネジメントソリューションズ社の方々が書かれた、組織変革に関する本を読みました。

古野・今城・武藤 著『組織変革の教科書』東洋経済新報社(2024年)

まず「はじめに」で、以下の文章が書かれています。

この文章を読み、”組織変革”というやや大げさに聞こえる取組みに限定せず、日常における人や組織のマネジメントで役立つことが(エビデンスなどと共に)色々と書かれているのではないかと思い、購入しましたが、期待通りの内容でした👍

応援団長
応援団長

新たな学び、改めての学びがたくさんあったのですが、本記事では2点、皆さんに共有します。日々のマネジメントを振り合えるきっかけにしていただけますと嬉しいです。

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①持続的な成長のためには、ビジョンの「共有」から

リクルートマネジメントソリューションズさんでは、持続的成長企業を「50年以上の歴史があり、30年以上にわたって持続的に株価がおおむね上昇トレンドにある日本企業」と定義し、その組織と人の特徴を明らかにしたようです。

ここに詳細は書きませんが、定性・定量分析の結果、持続的成長企業には以下のような「3つの組織能力」と「3対の価値基準」があったとしています。(55ページ)

3つの組織能力
〇 実行・変革力「徹底した行動とたゆまぬ自己変革」
〇 知の創出力「重層的なコミュニケーションや豊かな関係性による知の創出」
〇 ビジョン共有力「ぶれない軸を意味レベルで共有」

3対の価値基準(=いっけん相反するような価値観の両立)
■ 社会的使命の重視と経済的価値の追求
■ 共同体意識と健全な競争
■ 長期志向と現実直視

そして、

のだそうです。

業績向上の起点は、ビジョンが組織内にちゃんと(意味レベルまで)共有されていること

それができているから、ビジョンに向けて有意味な「知の創出」も起こるし、ビジョン実現のための「実行・変革」も行われる・・・という流れを想像しました。

注意したいのは、ビジョンは掲げていてもメンバーに共有されていない、つまり、メンバーがビジョンを全く意識していない組織が多く存在するという点です。

以下の2つのステップの間には大きな断崖があることを自覚する必要があります。

ステップ1.組織責任者として、クリアなビジョンを考え、打ち出すこと
注:最近話題の「シェアード・リーダーシップ」の考えから、ビジョンを独りで考える必要はない
ステップ2.ビジョンと、それを実現する意味や価値を「しつこい」と思われてもいい覚悟で何度でもメンバーに語ること

ステップ2を実践できていれば、メンバーはビジョンを単に認識するだけでなく、「この人は本気でビジョンを実現したいと思っているんだなぁ」と感じるでしょう。裏返せば、方針発表のときにしか語られないようなビジョンはメンバーに認識されず、ビジョン実現に向けた本気さや熱意を、メンバーは微塵も感じないでしょう。

green leafed plant
Photo by Ylanite Koppens on Pexels.com

※もちろん、ビジョンだけを掲げて、そこへどうやってたどり着くつもりかという道筋(=戦略)が示されないと、ビジョンは画餅に帰すでしょう。

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② やさしさだけではダメ。やはり厳しさがなければ。

リクルートマネジメントソリューションズさんでは、企業らしさを測定するDNAサーベイなるものをやったそうです。そして、財務データが入手可能な50社を、業績上位群10社と下位群10社に分けて、その違いを分析してみたそうです。

分析の結果、上記した「3対の価値基準」のうち、「共同体意識と健全な競争」に関連して、以下のようなことが述べられています。

厳しさのない、居心地が良いだけの会社は、いわば泥船。自分たちの乗っている船が泥船であることに気づかなければ、船はいずれ沈んでいく・・・。

ハーズバーグさんの2要因理論(→「日本の人事部」さんのサイトで解説)では、居心地の良さは「動機づけ要因」ではなく「衛生要因」に関係すると推察されますので、職場の一体感は従業員の不満解消の一助にはなったとしても、それが組織変革への動機づけにはならないでしょう。

しかも、

と書かれています。

今いる組織の居心地に大きな不満はない。そして、組織から変革に向けた挑戦を求められるような厳しさもない。そうすると、人はどうなるか・・・。リスクを嫌い、安定(現状維持)を求める。

現状維持が組織の衰退につながることはこれまでもこのブログで書いています。(→ 関連する記事へ

放っておいても自らに厳しさを課す従業員は決して多くないでしょうし、そんな人材はきっと優秀でしょうから、泥船会社に見切りをつけて、転職していくのではないでしょうか。

とどのつまり、他に行き場のない/市場競争力のない従業員だけが残り、ますます業績が低迷するという悪循環になることが容易に想像されます。

ですので、

ようです。至極当たり前の主張に思えます。

ここで考えたいのが、皆さんの会社は挑戦的な目標を掲げていますか、という点です。(目標とは、財務指標と達成水準のことです。ビジョンとは別物です)

もし、会社が挑戦的な目標を掲げているのであれば、そこで働くほぼ全ての人たちに課される個人目標も挑戦的な目標になるのは当然のことです。

もしそんな状態であれば、組織として成り立っていません。上位と下位の目標が連鎖していないということですから、組織である意味がなく、全体目標達成のための役割や責任の分担ができていないということになります。

会社の側からすれば、従業員自らが組織目標を踏まえて、すすんで挑戦的な目標を設定してくれるのであればありがたいのですが・・・

ということです。どうしても、人は易きに流れますからね。

当たり前のことを言うようですが、ミドルマネジャーとして、

ことが必要です。

そして、本の中にも書かれていますが、メンバーが挑戦に失敗しても決してマイナス評価はしないことが重要です。(目標が未達成であれば、成果という面ではそれなりの評価をしなければなりません)

目標自体が挑戦的な水準になっていて、メンバーがそこに向けて、最初に話し合った具体的な活動をしたのであれば、その活動自体は評価してあげないと、それ以降に挑戦しなくなります。

応援団長
応援団長

「うちの組織には、居心地の良さはあるけど厳しさがない(消えつつある)」と感じられるようでしたら、自社の評価制度を勉強しなおし、挑戦を日常化させる工夫を考えてみてはどうでしょうか。

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今日は、古野・今城・武藤 著『組織変革の教科書』東洋経済新報社(2024年)を読んで、ミドルマネジャーの皆さんに改めて考えてみてはどうかという点を2つ取り上げて書いてみました。

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