最近、ビジネス系の週刊誌でも特集され、本屋さんでも平積みにされている本を読みました。
安藤広大 著『人の上に立ち続けるための思考法 とにかく仕組み化』ダイヤモンド社(2023年)
著者の本は、以前に『リーダーの仮面』を読み、このブログに感想を挙げています(→ 当該のブログ記事へ)。なお、著者が代表を務める識学という会社は、近年多くの企業に(研修として?)導入されているようです。
『リーダーの仮面』は、個人的に強く同意できる内容と強く反対したい内容の両面が書かれているものでしたが、今回の本は同意できる箇所がほとんどで、異を唱えたいと思うような箇所はほぼありませんでした。
以下の項目で感想を整理しています。
1.この本を手に取った理由
2.印象に残った箇所と考えたこと(マネジャーの皆さんへの示唆)
1.この本を手に取った理由
本屋さんでこの本を手に取った際、最初のページに
「あなたがいないと困る」 この言葉は、麻薬だ。
と書かれています。この言葉は、人をモチベートする ”殺し文句” のようにも思えるのですが、麻薬と書かれていることに興味を持ち、購入。
2.印象に残った箇所と考えたこと(マネジャーの皆さんへの示唆)
88ページ
過去に決まったことを、その意図もわからず引き継いだり、「昔からの決まりだから」と、リーダーが口にするのは、よくありません。
昔からのルールを検討して、今も必要だと考えるならば、「今も必要なルールです。私がそう判断しました」と、堂々と伝えればいい。
同意。
人の上に立つ者として、すべての言葉を自責で表現すべきだと思います。
部下に示す前に、上位者などの関係者と対話や議論を尽くし、不本意ながらも組織として決めたことは、「私」を主語にして部下に示すことで、部下も迷わず、覚悟を決めて業務に集中できると思います。
不本意だからといって、部下に愚痴をこぼしたり、納得のいっていない表情や態度で指示を下ろすことはやってはいけないことですね。それでは組織の統制が効かなくなります。
マネジャーも組織の「歯車」です。そういう言い方をすると否定的ですが、この本では、人の上に立てるのは「歯車として機能する人」と言っています。本を全部読めば、著者の真意は納得できます。
97ページ
「任せる」という言葉を属人化の文脈で使っているのです。本来の「任せる」は、まったく違います。「任せる」とは、明文化した責任と権限を与えることです。「何をしなければならないか」「そのために何をやっていいか」その線引きをするのです。
確かに。
権限委譲は、部下をモチベートするための要素としてよく言われますが、ともすると「属人化」を促進する行為になっているのかもしれません。
仕事の指示を出す際には、WHY(なぜこの業務が必要か)・WHAT(何をする必要があるのか/何を達成する必要があるのか)・HOW(どのように業務を進めるのか)を部下と話し合うと思います。
そのとき、WHYは上司から示すとして、部下にWHATとHOWを自ら決められる権限を委譲するのか、HOWだけの権限を委譲するのか・・・・その点をハッキリさせるということですね。
HOWまで上司がガチガチに指定することをマイクロマネジメントと言います。新人には有効的ですが、それ以外の人にやると、負の効果が満載みたいです。(→ パーソル総研の調べ)
102ページ
「もし、この責任を果たす上で自分の権限が足りないと感じたら、そのことを報告してください」と伝えておく必要があります。(中略)「権限が足りなかったから無理でした」という言い訳が通用しないことを伝えておくのです。
なるほど。
権限を獲得するために相談をしてくる・・・そんな状態は確かに理想ですね。
今の時代であれば、「人手が不足しているが、採用予算がないので何とかしてほしい」という相談が上がってきそうです。
期初に、目標自体と、目標を達成するための組織設計や採用活動を綿密に計画しておかないと、期中に「やっぱり無理ですわ」となってしまいますね。
104ページ
「能力」よりも「機会」が先にある
まさに。
処遇には精算的な処遇(賞与など)と投資的な処遇がありますが、機会を提供するのは投資的な処遇ですね。
「彼女/彼にはこんな役割を(最初は苦労するだろうけど)担ってもらいたい」と考え、機会を提供する。そして、将来の活躍に向けて、伸ばしたほうが良い能力を話し合い、その能力向上を支援するのがマネジャーの役割ですね。
部下自身が気づいていない点や、本人が自信を持てていない点があれば、新たな/別の役割や業務を持ち掛け、話し合い、挑戦を促してみる・・・・・といった関わり方が、できていそうでできていないなんてことはありませんか?
128ページ
「書いていないこと」で罰を与えたりしてはいけないのです。ルールにないことでは、絶対に厳しく指導しない。つねに責めるのは「仕組み」のほうです。
その通りですね。だから、期初の目標設定は重要です。
ルールというニュアンスとは異なりますが、期の初めに話し合って決めたことを起点に、褒めたり、叱ったりすることで、良い言動/そうでない言動が部下の中で自覚されてきます。
多くの企業が掲げる、価値観(バリュー)や行動指針の扱いも同じです。価値観や行動指針が組織に浸透しないのは、その通りに行動しても褒められないし、その通りに行動しなくても叱られないからです。
目標管理のような「仕組み」に組み込むことで、属人化されず、組織として浸透させることにつながります。
*************
この本に関しては、まだ感想があります。残りは、次回にしたいと思います。
皆さんもこの本を読まれていましたら、是非感想を教えてください!
コメント欄