先日のブログ記事で ”人的資本” に関することを書いた。(→ そのときの記事へ)
人的資本という言葉は、人事界隈だけでなく、企業経営においても大きな関心事になっている。
つい最近「人材版伊藤レポート 2.0」が公開されたが、持続的な価値創造に向けて、人的資本経営を推進していくことは、国を挙げての成長戦略と言っても過言ではない。
人的資本に関する情報を開示する風潮が少しずつ広まっているが、この動きに伴い、皆さんの所属する組織でも様々な取組みが出てくると思われる。
なぜなら、開示する情報によりステークホルダーからの評判が上がったり下がったりするので、評判を上げるために/下げないために何らかの施策を取るはずだから。
この状況は、現場のマネジャーにとって対岸の火事ではない。人的資本経営に関することは、日々の組織マネジメントにもつながるので、ウォッチしておいたほうが良いだろう。
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今回読んだ本は、出たばかりの本。『経営戦略としての人的資本開示』
人的資本経営、人的資本開示に関する歴史的経緯や概要は知ることができる。それが自分とどう繋がるのかを考えるヒントが得られる。
以下は私の感想。
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① サーベイ結果が答えを語るわけではない
人的資本経営は、これまで主流であった財務情報ではなく、非財務情報の開示がポイントである。
この本だけの主張ではないだろうが、非財務情報であっても、客観的で科学的な情報開示に向けて数値化することを推奨している。
例えば、既に多くの企業で行われているエンゲージメントサーベイ、360評価など、人的資本に関することをサーベイで数値化することがますます増えてくる可能性がある。
ここで注意。
私は、エンゲージメントサーベイや360度評価のような、人の見方/受け取り方に関するサーベイの結果(数値)を他業界や他社、他者と比較する意味はないと思っている。
大切なのは、その数値をもとに、当事者・関与者が何を語れるかだ。
皆さんの会社でも、毎年エンゲージメントサーベイや従業員調査のようなものをやっているだろう。そして、その結果が渡されるだろうが、そのあとはどうしてるだろうか。
今後様々なサーベイが行われ、現場のマネジャーに結果がわたされるだろう。その際にその結果をいかに上手に普段のマネジメントに活かせるか。
これからのマネジャーには、サーベイの結果を活用して、どのように職場をより良くしていけるかという能力が求められる。(→ 以前に書いた関連記事)
人的資本経営を推進する上での大きな観点であるダイバーシティ(DE&I)においても、多様な人材の集う職場をいかに活性化させていくかはマネジャーとしての重要な役割である。
② 皆さん、研修機会が増える?
人的資本の開示に関するISO30414の推奨項目の中に「リーダーシップ」がある。
企業の持続的な成長・発展にとって、トップはもちろんのこと、後継者育成という点からもリーダーシップ開発は重要なテーマである。
その「リーダーシップ」に関して、どのような情報の開示がありうるのか。1つには
一定期間内にリーダーシップ開発プログラム(研修)に参加したリーダーの割合(91ページ)
が挙げられている。
企業からすれば、開示する情報を見栄え(受講率アップ)よくするために、リーダーシップ研修に参加させる人数を増やすなどというナンセンスなことはしないだろうが、受け手であるマネジャーの皆さんの受け取りはどうだろうか・・・・。
- こんなクソ忙しいときに研修かよ!
- 人事がまた何か役割を押し付ける気か!
- どうせ役に立たない研修だろっ! ※ 以前に書いたブログ「研修を嫌う課長たち」へ
もしこんな態度では、研修をやる意味など全くない。本来の目的である、企業価値の向上や持続的な成長・発展に全くつながらない。
これでは、受講率のアップなんて見せかけの数字だ。
研修を準備する人事側の企画力や現場とのコミュニケーションはもちろん重要だが、一方で受講するマネジャー側も自らのマネジメントやリーダーシップ能力を向上させるまたとない機会だと考え、自分から果実を採りに行くくらいの気持ちがあると、開示情報(受講率)という数字に意味が出てくる。
③ 開示を重要視する若者たち
デジタルネイティブな大手有名私大の学生たちは、すでに就職先の選別基準として「開示」を重要視している(179ページ)
就職四季報に載っている情報である「開示度」の星の数を見ているようだ。
現状は有休消化率、残業時間数などの働き方改革に関連するような項目らしい。
今後は異動、報酬、キャリア支援、働き方の自由度などの情報も開示するのではないか。なぜなら、企業としては優秀な人材を惹きつけたいから。
せっかく採用した優秀な人材が離れてしまわないためにも、現場のマネジャーはマネジメントのプロフェッショナルとして振舞い、これまで以上に彼/彼女らの価値観を理解しながら指導・育成していくこと。
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人的資本、そしてその開示。現場のマネジャーにとってはフォローの風か、アゲインストの風か。
マネジメントのプロとしてやっていきたい人にとっては、自らを磨いていけるフォローな風か。
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