リーダーやリーダーシップに関する研究は、国内外で昔から行われている。
- どんな人物がリーダーになっているのか?
- 活躍しているリーダーはどんな行動をとっているのか?
- 変革を起こすリーダーの特長は?
いずれも、リーダーとして活躍している ”今” に着目している。
テキトーなことを言うとアカデミアの皆さんには叱られるかもしれないが、私の記憶だと1980年代頃から、リーダーになる過程(過去)に着目し、どんな経験を積むことで優れたリーダーになっていくのかという研究が行われるようになってきた。
以前のブログに書いているが、『ハイフライヤー』や『仕事で「一皮むける」』には、どのような経験が人を成長させるのかに関する興味深い知見が書かれている。
参考図書:モーガン・マッコール 著『ハイフライヤー』プレジデント社 2002年
参考図書:金井壽宏 著『仕事で「一皮むける」』光文社 2002年
その後、「経験からいかに学ぶか」ということが注目され、経験学習という概念が人材業界で注目されるようになってきた。
大いなる個人的見解だが、国内にこのムーヴメントを広めたのは、北海道大学の松尾睦先生(当時は小樽商科大学)だと思う。私にとって、先生の2007年の著書『経験からの学習』は衝撃的なものだった。
参考図書:松尾睦 著『経験からの学習』同文館出版 2006年
松尾先生は、実際に活躍しているマネジャーを対象に、マネジャーになるまでに「どんな経験から何を学んだのか」に関しても研究され、本を出版されている。
参考図書:松尾睦 著『成長する管理職』東洋経済新報社 2013年
※ この本の内容紹介は、以前にブログでしている(→そのブログへ)
私は、松尾先生の手先ではないが、先生の本は(他も含め)、いずれも圧倒的に読みやすい!現場のマネジャーにも理解しやすく書かれている。
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さて、松尾先生が国内に広めたと言っても過言ではない、デイビッド・コルブ氏の経験学習モデル(サイクル)。今では人材育成に携わる人にはよく知られた概念である。
こんな感じのサイクル。
時計の12時から時計回りに・・・
- 経験:日々のマネジメント(部下とのやりとり、チーム運営など)
- 振り返り:経験したことを振り返る
- 学び抽出:経験から導出した、今後に活かせるマネジメント教訓
- 実験:マネジメント教訓を翌日以降のマネジメントで試してみる
経験学習、つまり経験から学ぶとは、0時からクルっと、このサイクルを回すことである。
この経験学習サイクルだが、重要なことを示している。それは・・・
人は、経験しただけでは成長しない
ということ。
経験しただけとは・・・経験学習モデルでは0~3時しか過ごしていないということになる。
新人の頃は別だ。新人は知らないことばかりで、全てが学びなので、経験したなりに成長する。
しかし、ボチボチ成長して、ある程度ひとりで仕事ができるようになると、それ以降の成長が止まっているような人が存在する。
マネジャーも似ている。
マネジャーになりたての頃はわからないことだらけなので、色々と経験し、徐々にマネジャーらしくなってくる。
しかし、一定期間が経過すると、”いつものパターン” で組織をマネジメントしている。
マネジャーは忙しいので、自らのマネジメント経験を振り返る余裕がないのだろう。が、それではまずい。
解決策としては
- 月に一度でも、自分のマネジメントを振り返る時間を作る
- 自分のマネジメントスタイルを念頭に置きながら、組織マネジメントに関する本を読んでみる
- 仲の良いマネジャーがいれば、組織マネジメントに関しての悩みや工夫を報告しあう時間を作る
- 近々マネジャー研修などの集まる場があれば、他参加者と積極的に悩みや工夫を共有しあう
他者と話し合う場合、「いま、こんなことで困っているんだよね」とか「こんなやり方でうまくいっているよ」と状況を共有するだけでなく、”それを自分の環境に置きかえてみると・・・”と、常に学びや教訓を導き出すということを意識的に行ってみる。
そうすれば、得られた学びにより、皆さんはマネジャーとしての価値が高まる。
経験学習サイクルを回すのは、ほんのちょっとの意識と継続実践。これが他マネジャーとの差別化にもなる。
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マネジャーとして、振り返る(内省する)ことの意義や価値が書かれた本。おすすめ。
参考図書:松尾睦 著『成長する管理職』東洋経済新報社 2013年
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