このブログで「コーチング」に関することを何度か書いている(関連するブログ)が、現場のマネジャーにとって「コーチング」は
*我慢できずに、つい自分でやってしまう
というケースが多いのではないだろうか。
「コーチング」をやっているというマネジャーに、現場でのコミュニケーションの様子を見せてもらうと、
*自分ではやっているつもりだが、実はできていない
というケースも散見される。
我慢できずに自分でやってしまうというケースは別かもしれないが、自分ではやっているつもり(だが、自信がない)というマネジャーにとって、何があればうまくコーチングできるようになるのか。
それに対するヒントを与えてくれる本を紹介する。
小倉広 著『コーチングよりも大切なカウンセリングの技術』日本経済新聞出版 2021年
著者は心理カウンセラーであり、組織人事コンサルタント。
マンガを交え、コーチングとカウンセラーの違い、ティーチングを含め、部下との接し方がとても理解しやすく書かれている。お勧め度☆☆☆☆☆
以下は私の感想。
① レポートではなくエピソードを聞く
カウンセリング型のコミュニケーションでは、このレポートを「何月何日何時何分」に起きた一度きりの一瞬のエピソードに転換して右脳(映像、イメージを扱う感覚的な脳)的に映像化します。・・・(中略)・・・。するとヒマワリさんが語っていたレポートとは異なる風景が見えてきました。(41ページ)
確かに、我々が職場で行う会話のほとんどはレポート(出来事を抽象化し要約したもの)で、左脳的(言語、数字を扱う論理的な脳)だ。
仕事では ”論理” が優先される。”感覚” や ”感情” が置いてけぼりにされやすい。
コーチングやティーチングを行うためにも、その前提として、相手の ”感情” や ”感覚” を丁寧に聴く取ることが必要。
ただし、カウンセリング型のコミュニケーションでは、相手(本人)に自己決定させることを重視していることを忘れずに。こちらから答えを提示しすぎないこと。
② カウンセリングでは問題解決しない
カウンセリングでは(必ずしも)問題解決はしません。(中略)カウンセリングでは問題解決すべきものと決めてかからず、まずは受容・共感を進めます。解決が前提ではないのです。(90ページ)
マネジャーは、上司として部下の支援を意識している。問題解決者として振舞う。
これは自然なことに思えるし、上司として必要なスタンスであり、行為である。
ただし、そのスタンスが強すぎると、部下が相談してきた場合、こんな対応をとってはいまいか?
*少し話を聞いただけで、「ああ、そういうことね」とばかりに、部下の話を遮ってアドバイスをする
*ちゃんとアドバイスしてあげたいからと、根掘り葉掘り聞きだす(取り調べのようになる)
その前に、まずは受容・共感。
明らかに悩む必要のようなことで悩んでいる可能性があるし、話を聞いてあげているうちに自分で答えを見つけたり、悩む必要がないことに気づいたりするかもしれない。
カウンセリングの主体者は相談者=部下。部下自身が問題解決するように仕向けるというスタンスを忘れずに。
③ 壁になる
上司が余計なことを言って方向を変えてしまわないことです。余計なことの代表的なものは、指示、助言、体験談、感想など。(128ページ)
部下とラリーをするのではなく、部下が壁打ちをする際の ”壁” になってあげること。
部下からの相談に対して、自らの体験談や感想はもとより、できるだけ質問すら行わない、相手の言葉をはじき返す ”壁” になる。
例)
相手:昨日映画に行ったんですよ。
自分:ほお、映画に行ったんだ。
相づち、オウム返し、「それで?」といった促し、「~ということ?」とこちらの理解を確認する、といった反応をすること。
あくまでも、問題解決の主体は部下。
この行為に不安を覚えるマネジャーは多いのではないか。それでは相談してくる部下が満足しないのはないかと。部下はアドバイスを欲しがっているのではないかと。
敢えて言いたい。
本当にそうなのだろうか?
そうではないケースも(結構)あるのではないか。
それでも不安な人。その背後に、組織風土はないだろうか。指示命令の風土。
部下は上司からの指示命令に従い動くもの、という風土(暗黙の価値観)があれば、部下は口をあけて、上司のアドバイスを待っている。
マネジャーとして考えたいのはその風土で良いのかという点。
上司の言うとおりにしか動かない(動けない)組織は衰退する。自分のコピーならまだしも、ミニチュアを作っているとすれば、縮小再生産をしていることになる。
組織の成長・発展のためには、自分より ”できる人” をつくるのはマネジャーの役割。
いつもとは言わないが、時には ”カウンセリング” のスタンスをもって部下に接してみる。そうすると、マネジャー自身に新たな発見がきっとある。
その発見は、マネジャー自身の価値を高めることになる。
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