今日は、以下の本からの学び。
鈴木竜太・服部泰宏 著『組織行動 組織の中の人間行動を探る』有斐閣, 2019
ビジネスの世界で、”ダイバーシティ(多様性)” という言葉が聞かれるようになって久しいが、「経営に ”多様性” を活かそう」と聞くとどのような取り組みをイメージするだろうか。
女性活躍推進、障害者雇用くらい?
人材の多様性は大きく2種類に分けることができる。
1.表層の多様性
2.深層の多様性
表層の多様性は、外から容易に識別可能なもの(例:性別、年齢、人種、民族など)。
深層の多様性は、外から容易に判断しにくいもの(例:パーソナリティ、価値観、習慣、趣味など)。
さて、皆さんの職場の多様性は豊かだろうか。
深層の多様性は、異なる人々の組み合わせと相互刺激により、集団に新たなアイデア創出や成果の向上をもたらすことが指摘されているらしい。
つぶやき①:
言っていることがわかるが、まずリアル現場では、他人のパーソナリティや価値観を知る方法がない。
世の中に、様々なパーソナリティ診断ツールがあるのだが、自己診断で活用するだけで、それをチーム単位で実施し、それをもとに相互理解を目的に話し合うような組織はまだまだ少ない。
※多様性の進んでいる(というより、昔から当たり前の)海外ではよく行われている。
つぶやき②:
多様な意見を尊重するとした場合、異なる意見を最終的にまとめたり、合意形成に持っていくのが相当大変だ。そこにはコンフリクトも生じるだろうし。
そう考えると、多様性の持つベネフィットを活かすには、マネジャーに「対話促進力」や「ファシリテーション力」、「合意形成力」などが必要と思われる。
もちろん、自分とは異なる考えや価値観を受け入れる胆力、包容力も必要だ。
フォルトライン
表層の多様性に関する興味深い内容がある。
フォルトラインとは「組織の断層」と訳されており、近年注目されている概念のようだ。
組織における多様性の ”次元” を考えるらしい。
例えば、ある職場に10人のメンバーがいるとする。そのうち5人は「30代、男性、大卒、正社員」、残りの5人は「40代、女性、高卒、契約社員」とすると、ここには(年齢、性別、学歴、雇用区分)という4つの次元があるということになる。
人は、似た次元の人どうしで固まってグループをつくる傾向があるようだ。
だから、上記の例の場合、職場が二分され、断層(フォルトライン)が発生する。そうなると、多様性のもつベネフィットなど発揮のされようがない。
多様性の持つベネフィットを享受するためには、年齢・性別・学歴・雇用区分、いずれも様々な人が入り混じるように組織をつくると、職場を二分していた断層が薄れる。
いくつかの実証研究で、複数の表層レベルで人々が混在すると、集団内での対立は減少し、パフォーマンスが高くなるようだ。
結論として、多様性を経営に活かすなら、
中途半端な(表層の)多様性ではなく、徹底的な多様性の推進が重要
だということ。
チームを編成する際、できるだけ表層の多様性が豊富なメンバーを集めることの工夫はできそうだが、それは必要条件であって、集めたメンバーが気兼ねなく、自分の意見を言えるような場づくりができなければ、多様性のベネフィットは得られない。
多様性から果実を得るには、やはりマネジャーの力量が大切である。
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