このサイトは、ミドルマネジャーの皆さんに役立つ情報を届けたいという思いで運営している。
今更だが、「ミドルマネジャーって誰のことを言っているの?」という疑問が解消されていないといけないので明言しておくと、日本企業の呼称で言うところの「部長」と「課長」を指している。
”ミドル” として括ってはいるが、「部長」と「課長」では大きく役割が違う。
至極当たり前の話なのだが、個人的には、役割の違い をミドルマネジャー本人や人材育成担当者がどれだけ意識・理解しているのかなぁと思うことがある。
お客さんから、部長に関することで以下のような言葉を聞いたことがある。
- 課長として活躍していた人が部長になって以降、全く目立たなくなった
- 課長がプレイヤー化し、部長が課長化している。部の運営を誰もやっていないようなものだ
- 研修は課長まで。部長以降は ”それなりの人物” を登用しているので、研修なんぞ不要だ
それぞれの論点は異なるが、今回のブログで「部長と課長の役割の違い」を整理して伝えることにより、上記のような言葉に対する、何らかの示唆やヒントを提供できればと思う。
”マネジメント” と一言でいうけれども
ミドルマネジャーの役割は、文字通りに ”マネジメント” である。
では、”何を” をマネジメントするのか。部長は?課長は?
マネジメントの種別の仕方は色々とある。
*人のマネジメント/モノのマネジメント/お金のマネジメント
*戦略のマネジメント/組織のマネジメント/矛盾のマネジメント などなど
今回は下記の参考書籍をもとに、2つに分けたいと思う。マクロのマネジメントとミクロのマネジメントという。
マクロのマネジメント
より大きな立場に立ち、様々な人間集団がいる組織全体の、人々が働く仕事の状況や環境を設計するマネジメント
ミクロのマネジメント
1つの人間集団の刺激を考え、束ねを考える、人間集団を直接に率いるマネジメント
参考書籍:伊丹敬之 著『経営を見る眼 日々の仕事の意味を知るための経営入門』東洋経済 2007年
本の中には表現されていないが、私個人は、部長はマクロのマネジメント、課長はミクロのマネジメントが中心的な役割 と考えている。
部長は方針や仕組みで組織を動かし、課長は直接コミュニケーションで組織を動かす、そんなイメージである。
部長は戦略を考える、課長は戦略を実行させる
もう少し具体的に見ていこう。参考にするのは以下の書籍。
坂本雅明 著『戦略の実行とミドルのマネジメント』同文館出版 2015年
この本では、部長と課長をデータに基づいて比較し、各々に期待される役割が書かれている。
どんなことが書かれているか、部長と課長、それぞれの上位5つを挙げると以下の通り。
部長には ”方向性” や ”戦略” という言葉が出てくる。課長には “部下” という言葉が多く出ている。これは、上記した「マクロ」と「ミクロ」のマネジメントの違いに符合する。
部長は 方針や戦略(人々が働く仕事の状況や環境の設計)を通して組織に影響を与え、課長は 部下(人間集団)に直接コミュニケーションをもってして影響を与える。全く役割が違う。
このブログの前半に書いた、部長に関するお客さんの言葉について、その組織の状況を類推すると以下のような感じではなかろうか。
お客さんの言葉(再掲)
- 課長として活躍していた人が部長になって以降、全く目立たなくなった
- 課長がプレイヤー化し、部長が課長化している。部の運営を誰もやっていないようなものだ
- 研修は課長まで。部長以降は ”それなりの人物” を登用しているので、研修なんぞ不要だ
類推1:(視点が短期)
部長が、戦略を描いたり、組織構造をデザインしたりしていない。目先の問題解決のために時間を使っている
類推2:(マネジメント職をマネジメントできない)
部長が、プレイヤーの指導・育成はできるが、マネジャーの指導・育成ができない
類推3:(課長との違いを認識できていない)
部長が、課長と同じような動きをしている。(課長を飛び越えて)一般従業員とのコミュニケーションに行っている
類推4:(武器を持たされていない)
部長本人は部長らしく振舞いたいとは思っているが、部長として何をすべきか分からず、自信が持てていない。(結果として、期待されるパフォーマンスが発揮できていない)
いかがだろうか。
ミドルマネジャーは、企業の持続的な成長のための ”扇の要” である(と私は思っている)。
部長の皆さん、ここまで読んでみて、「課長との役割の違い・・・自分の中では確かに不明確だな」とか「部長の役割をきちんと学んでいないなぁ」とか思ったのであれば、体系的に学んでみてはどうだろうか。
次回のブログでは、そのあたりに少し触れる予定。
課長の皆さん、いずれ部長になるかもしれないので、今のうちから部長の役割を理解しておくことは有益だ。更に、部長の役割を理解することで自らのフォロワーシップ向上にも役立つ。
人材育成担当者の皆さん、「部長くらいになる人物は放っておいても大丈夫」という思い込みはないだろうか。現場で迷惑を被っている課長、一般従業員は結構いるかも。
コメント欄