「人的資本経営」は着実に日本企業の中に浸透してきているようです。(→ 経産省の関連する調査データへ)
そもそも「人的資本経営」とは何でしょうか。経産省のサイト(→ 経産省のサイトへ)によれば、
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方
と書かれています。
一読すると、言葉や文章に特別な新鮮さはなく、実践してるかどうかは別として、昔から多くの企業がそんな経営を志していたのではないかと思います。
この定義を読んで、ミドルマネジャーの皆さんはどんな感想を持ちますか?
■人材やモノ、お金を “資源(リソース)” とは呼んでいたけど、“資本(キャピタル)”ってどういうこと?
■うちの会社は、昔から「人を大事にしている」から、何を今さらという印象
■言っていることは分かるような、分からないような・・・。これってなんか新しいことなの?
こんな感じではありませんか?
皆さんの所属している会社が「人的資本経営」の実現を謳っている場合、うちの会社は何を目指しているのか、これまでの経営と何が違うのか、自分の仕事(マネジメント)にどう関係するのかといったことを真剣に考えなくてはなりませんね。
ですが、実情はどうでしょうか。

人的資本経営がこれまでの経営とどう異なるのか、違いを明確にしないまま、なんとなく分かっているつもりになっていませんか?
あるいは、

毎日忙しいし、周囲のミドルマネジャーを見ても、これまでと変わった感(や、変わらないといけない感)がないので、人的資本経営をちゃんと意識・理解しなくても構わないと思っていませんか?
だとすれば、

それはまずいですよ。
今回のブログでは、人的資本経営におけるマネジメントに関するお話をします。
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変化適応しない人の将来 →居場所はなくなる or 処遇が下がる
まず、人的資本経営は、従業員にとって「かなり緊張感のある経営である」と理解する必要があります。

企業経営は社会に貢献するために行うものです。ですから、「中長期的な企業価値の向上」のためには、中長期的に社会に貢献し続ける必要があります。
言わずもがな、ビジネス環境の変化の速度と激しさはどんどん増しており、企業として、中長期的に社会へ貢献し続けるためには、変化へ継続的に適応することが欠かせません。そのためには、そこで働く人たちが変化へ適応し続けなくてはなりません。

人的資本経営とは、人材(=人的資本)が変化に適応し、持てる価値をフルに発揮することで、企業価値の向上に貢献してもらえるようにマネジメントしまっせ、ということなのです。
皆さんの会社のビジネス環境も変化は速く激しいですよね。1年前と何も変わってないなんてことはないですよね。ということは、そこで働く人材も変わっていかないといけませんよね。(そうでないと、他社との競争に負けてしまいますから)

ですので、働く人の変化適応を支援するのが、ミドルマネジャーの重要な役割です。
ここで注意しておきますと、人的資本経営は、どんな人でも大事に扱う経営はありません。
人的資本経営のもとでは、中長期的な企業価値の向上になりそうであれば、優秀な人材を獲得するために投資をし、変化に適応しようとする社員のために投資し、実際に高い価値を創出してくれた社員に更に投資します。
反面、人的資本経営のもとでは、変化適応を拒む人、変化適応できない人/しない人には厳しい評価や処遇しか与えられません。ちゃんとやっている人の手前もありますので、優しい評価や処遇を与えてはいけません。

人的資本経営でなくても本来はそうあるべきなのですが、これまでの日本(の人事制度)はそういう人でもそれなりに処遇してきました。が、今の時代、それでは企業としての体力がもう持ちません。
人的資本経営を謳っている会社の経営層は、ここまで私が書いてきたことをちゃんと踏まえて、従業員にメッセージを出していると思います。(メッセージが正しく届いているかどうかは別)
経営層だけでなく、ミドルマネジャーも人的資本経営の本質を踏まえて、組織をマネジメントしなければ、人的資本経営は実現できずに、競争に負け、会社はいずれ消えてなくなるか他社に吸収されてしまいます。

ミドルマネジャーも変化適応が必要ですね。マネジメントのプロとして、継続的に、組織や人材のマネジメントについて学び直さないといけません。
どうすればいいでしょうか?
このブログでも何度か取り上げていますが、人的資本経営の1丁目1番地は「経営・事業戦略と人材戦略の連動」です。 ※人材版伊藤レポート2.0
自分のマネジメントが人的資本経営の本質を踏まえたものかどうかを検討する問いとして、まずは以下の3つを考えてみてください。
1.自分の関わる事業のビジョンと事業戦略を確かに理解しているか
2.会社の掲げる人材戦略を確かに理解しているか
3.事業戦略を遂行する際に、人材戦略を意識したマネジメントになっているか

多くのミドルマネジャーが、2番と3番は怪しいのではないでしょうか。
1on1ミーティングのやり方だとか、コーチングだとかいったハウツーを学ぶよりも、まずは上記3点が確実にOKかどうかを内省してみてください。人的資本経営における「マネジメントの質の向上」はそこがスタート地点です。
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今日は人的資本経営におけるマネジメントについてのお話でした。
※ご意見やご質問などは、hanabishi.708@gmail.com へ。
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