以下の本を知人に紹介され、読みました。(Nさん、ご紹介いただき、ありがとうございました!)
冨山和彦 著『ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか』NHK出版 2024年
本の内容は、全体を通して「そうだよなぁ」と共感・同意できるものでした。
大企業に長く勤めているホワイトカラーの人(特に、自己啓発をしていない人)は、本の「第4章 悩めるホワイトカラーとその予備軍への処方箋」に書かれている内容を読んで、自らの将来を考えてみてはどうかと思います(が、そもそも本を読まない人が多いから無理なのかな・・・)。
著者曰く、AIの登場で、ミドルマネジャーは相当の覚悟と自己研鑽が求められる時代になってきているようです。(詳細は、本を手に取ってみてください!)
以下は私の感想です。
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冷徹さをもって人材をマネジメントする
この本を読んで、最も共感したのは以下の文章です。
人材の新陳代謝を冷徹に進めなければ、かえって人々を不幸にする時代なのだ。(45ページ)
「冷徹に進める」を補足して、「まやかし、一時しのぎ、ごまかし、問題の先送り、間違った優しさを一切捨てて、冷徹に進める」と表現すると、私の共感度は更に増します。
そんな人材マネジメントでは企業価値も労働生産性も一切高まらないことは、これまでに多くの日本企業やマネジャーが経験済みなはずです。
いわゆる「失われた30年」を振り返った時に、 ”覚悟のない、中途半端な人事制度” や ”非の打ちどころのなさそうな人事制度だが、魂がまるでこもっていない制度運用(=人材マネジメント)” が、現在にどんな状態をもたらしているか/いないか、企業もマネジャーもしっかり振り返ってみたいところです。
ビジネスにおける日本や日本企業の国際的地位は維持どころか、どんどん低下している現状。(2024年12月、日本が韓国に国民一人当たりGDPで抜かれたようです。世界22位に↓)
多くのホワイトカラーの人は、「VUCAの時代だよね~」と誰かに聞かれるとほぼ「YES」と答えるでしょう。つまり、皆がビジネス環境の変化の速さと激しさを何となく理解しています。にも関わらず、環境の変化に適応する努力、所属している会社がどうなっても生き残っていくための努力をほぼやっていないのが現実だと思います。
この辺りについて、”学ばない日本人ビジネスパーソン”を示すデータは世間にあふれていますし、このブログでも関連する記事を何度か書いています。(→ 関連するブログ記事へ)
このままでは、これまで以上に国際的地位はますます低下していくんだろうなーと思います。そして、つまらない国になっていくんだろうなーとも考えます。
従業員一人ひとりに対して、「労働生産性の向上」や「付加価値の創出」に挑戦するよう、会社やマネジャーは覚悟をもって要求する。その要求を断ったり、トライしたけど成果をずっと出せないのであれば、当人に別の道(=転職、転籍、部署異動など)を考えるように提案することが必要です。
自分(たちは)生産性も向上できないし、付加価値も創出できない。その間に、競合他社は生産性を向上させ、付加価値を創出している。こんな状態は続けば、自分(たちは)はどうなりますかね。著者が言っている通り、そう遠くない将来に多くの人が不幸になる気がします。
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従業員を囲うのはナンセンス
こんなことも書かれています。
ジョブ型雇用によるプロフェッショナルが生み出す付加価値と、それに対する報酬という対応関係をつくらずに成功したのが過去の日本だ。社会が変わり、対応関係をつくらねばならない状況になったときに、これまで自分がそういう世界で生きてこなかったから、困ってしまうのが実情だ(214ページ)
その通りに困っている会社、人、多いんじゃないですかねー。
有意な人材に通有性の高いスキルを身につけさせず、企業固有スキルで終身ロックオンするという「釣った魚には(逃げないように)餌をやらない」調の「ケツの穴の小さい」人材経営はもはや成り立たない(215ページ)
そんな会社、多いですね。
通有性の高いスキル(=ポータブルスキルと言ったりします)を社費で身につけさせることを嫌がったり、「どこの会社でも通用するスキルを身につけられるぞ!」という一言が部下に言えないマネジャーって、世の中にたくさんいますね。(辞められては困るという心理が原因???)
そんな思考、もはや時代遅れです。
「もらっている給料分の付加価値を出しているか」である。・・・(中略)・・・。これまでの終身雇用制のもとでは、就職した瞬間からそれを考えなくなる。自問自答しなくても、何となく過ごせてしまうからだ(224ページ)
私としては ”あり得ない” です。自分が給料以上のパフォーマンスを発揮できているかどうかは気になって仕方ないですし、自分の市場価値を図るのに転職サイトなどに載っている給料情報は一つの目安になると思っています。
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確かなマネジメントができる人に
著者は、大企業(終身雇用・新卒一括入社・年功序列)の中で育ってきた人(ホワイトカラー)たちを「漫然とホワイトカラー」と表現しています。そして、この「漫然とホワイトカラー」な人たちの労働生産性の低さを指摘しています。
そして、ミドルマネジャー(中間管理職)に関して、以下のようなことが書かれています。
AIによってもっとも駆逐される可能性の高いデスクワークが販管費にあたる人件費、つまりは中間管理職系と顧客対応系の仕事である。・・・(中略)・・・。逆に出世するなら中間「経営」職、すなわち自ら課題提起をし、自ら解を模索し、自ら決断して指示を出す、ミニCEO型の経営職を目指さないと危険である。(219~220ページ)
いかがでしょうか。
皆さんの会社が、もし「トップダウン」の社風であれば、ミドルマネジャーが「ミニCEO型の経営職」のようにふるまうことは「生意気だ!」とか「黙ってろ!」とか言われそうで、しんどいですね。その場合、まず社風から変えないと・・・。そうでなければ、そんな会社は卒業しますか!
幸いにもそうでなければ、ミドルマネジャーは「ミニCEO型の経営職」を目指して、まずは「マネジメントの基本」をしっかりと学ぶことが必要だと思います。つまり、「漫然とミドルマネジャー」を早期に脱皮することです。
例えば、以下のような「あるあるマネジメント状態」を改善することです。
■マネジメントを経験と勘だけで行うこと
■ビジョン(未来像)になっていない「なんちゃってビジョン」を掲げること
■本気で実現しようという意思のないビジョンを部下に語ること
■いつ/いつまでに実現するという期限のない、ゆるいビジョンを掲げること
■単なるスローガンのようなものを戦略として掲げること
■上位組織や下位組織との間に目標が連動していないこと
■設定した目標に関して、期中に振り返らないこと/部下にフィードバックを提供しないこと
■ローテーションさせていれば人材育成になると思っていること
徐々にAIが侵食してくるマネジメント関連業務として、事業戦略の進捗管理や、事実やデータの管理などがあるのでしょうけど、上記に列挙したようなことを改善し、”マネジメントのプロフェッショナル” として自らを洗練しておくと、いずれは著者の言う、中間「経営」職として、付加価値労働生産性の高い人材になれるのではないかと思います。
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ミドルマネジャーの皆さんの自己研鑽だけを求めるのではなく、会社はミドルマネジャーの皆さんが覚悟をもった人材マネジメントができるような支援をもっとやっていくべきですし、従業員側にも会社にぶら下がるような態度を止めるような教育をしてもらいたいですね。
そうでないと、ミドルマネジャーの皆さんが倒れてしまいます。
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