直近5年間で読んだリーダーシップに関する本の中で、個人的に得るものが多かった本は、
高橋潔 著『ゼロから考えるリーダーシップ』東洋経済新報社(2021)
です。このブログでも感想を書いています(→ 当該の記事へ)。
高橋先生は、この本の後半(175~180ページ)に「リーダーシップをシェアリングする」として、”シェアド・リーダーシップ”という概念をご紹介されています。
興味深い内容であったのですが、短い文章でしたので「ふ~ん」といった感想で終っておりましたが、今回、その”シェアド・リーダーシップ”に関してより詳細に書かれた本を読みました。
堀尾志保・中原淳 著 『リーダーシップ・シフト 全員活躍チームをつくるシェアド・リーダーシップ』日本能率協会マネジメントセンター(2024)
とても理解しやすく、実践的な内容でした。
本日は本の内容に関連させながら3点について書きます。
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1.少し先の未来をイメトレ
チームの各メンバーがリーダーシップを発揮しているチーム(全員活躍チーム)を創るための、具体的な5つのSTEPがこの本に具体的に書かれています。
STEP1は「イメトレしてはじめる」です。イメージトレーニングです。
Step1ですから、マネジャーとして、まず、
①自身が担当しているチームの事業・仕事がどうありたいか
②メンバーにはどう活躍してほしいか
③自分自身はどうありたいか
を内省し、少し先の未来(約3年)までイメトレする(99ページ)
ことから始めようと言っています。
①~③の中で、②のチームメンバーの活躍ぶりの未来像を描くという点は「通常のリーダーシップ本にはない観点だな」と思いました。
リーダーシップに関する本でも「ビジョンを描きましょう」とは謳っていますが、それは上記の中で言えば、①のことが圧倒的に多い気がします。
ポイントは、(全員活躍チームを創っている)多くのマネジャーが「事業・仕事」と「チーム全体もしくはチームメンバー」の少し見たいをセットで考えていた(107ページ)
ようです。
確かに事業・仕事だけでなく、チーム全体や各メンバーの活躍を、まるでプロジェクターから映写されているイメージのように、自分の頭の中に描き、チームメンバーの頭の中にもそれを共有し、共感を得ることができればいいですね。
イメトレするのは1年後(短期)ではありませんよ。少し先の未来(3年先)です。
ここ最近、このブログでしつこく言っているのですが、マネジャーは、単年度思考は卒業しましょう!
2.何度でも繰り返す
マネジャーは「チームで大事にしたいこと」をメンバーがいつでも思い出せるよう、様々な形で繰り返し何度でも伝えていくことが重要(147ページ)
これは、全員活躍チームを創るための5つのSTEPのうち、STEP2で言われていることです。「チームとして大事にしたいこと」を徹底し、チーム内に安心安全をつくることが目的のようです。
「チームとして大事にしたいこと」を発表するマネジャーは結構いますが、私の個人的経験を言えば、
1.「チームとして大事にしたいこと」を期初に1度言うだけで終えているマネジャー
2.定期的に同じ「チームとして大事にしたいこと」を伝えてはいるが、伝え方に「本気で大事にしたい」という感じがないため、部下に聞き流されているマネジャー
が結構多いのではないでしょうか。
マネジャー自身が本気で大事にしたいと思っていないのか、「一度言えば理解してくれるだろう」とメンバーの受取り方を甘く見ているのか・・・。
とにかく、チーム内に安心安全な状態を創るために「チーム内の決め事」を用意する際は、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、あらゆるメディアやツールを活用しながら、あらゆる場面を使い、決め事がメンバーの目や耳に触れる機会を用意することです。
「伝わっているはず」だと思うことは、もれなく「伝わっていない」と思ったほうがいいでしょう(148ページ)
まったく同意。この点は、「チーム内の決め事」に限らず、「組織ビジョン」や「部下への期待」なども同じく、繰り返しの伝達が重要だと思います。
3.ともに方針を描く
全員活躍チームをつくる5つのSTEPのうち、Step3は「ともに方針を描く」。
メンバー全員が、チームの活動方針づくりから参画し、相互にリーダーシップを発揮し合いながらゴールを目指します(170ページ)。
これを聞いて、マネジャーの皆さんはどう思うのでしょうか・・・。
方針を立てるのはマネジャーの役割であり、責任だ。メンバーを巻き込むなんてあり得ない!
とか。他にも、
方針作りに部下を関与されると、マネジャーとしての存在価値を失う気がするなぁ
とか。あるいは、
部下も多忙だから、方針作りに時間を取らせるのは酷だな。労働時間の制限もあるし。
とか。もし、こういった思考をお持ちな場合、一度脳みそを溶かしてみてはどうですか?良いことのほうがいっぱいある気がします。例えば、
*上位方針へ意識・理解が高まる
*自分を関与して決めた方針なので、目標へのコミットメントが高まる
*メンバーの思考が短期でなく、中期的になり、目先以外のことへの関心が生まれる
*自分が関与して決めた方針なので、継続勤務意欲が高まる(リテンション)
などです。マネジャーも組織をマネジメントしやすくなると思いますよ。
うちの部下はそんな話には乗ってきませんよ。面倒臭がるだけです。
本当にそうですかね?
誘ってみないと分からないですよ。マネジャーが主旨や想いをしっかりと伝えれば、全く誰も乗ってこないということはほぼないと思いますけど・・・・。
※ 集まって話し合う際の、具体的な方針作りの方法(ポイント)は本に書いてあります(179~200ページ)ので、ここには記載いたしません。
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今日は『リーダーシップシフト』に書かれていることをヒントに、3点書きました。
この本はほんとに具体的で実践しやすい本です。エビデンスをもって語られているので説得力があります。
オールド・ファッションなリーダーシップ概念を今だに引きずっている経営層・マネジャー層には是非読んでいただきたい本です。
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