今回読んだ本は、『Future of Work 人と組織の論点』。
有名なコンサルティング会社であるコーン・フェリー・ジャパンの各コンサルタントが、ジョブ型、ダイバーシティ、エンゲージメント、キャリア自律などの最近話題のテーマについて、背景や現状、対策などを書いている。
人や組織にまつわる最近の課題を網羅するにはお勧め。
以下は私の感想。
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① 古いリーダーシップ
本の中では、時代の求めるリーダーシップに関する章がある。その中で、以下のようなことが書かれていた。
コーン・フェリーでは20世紀に主流だったリーダー像をControl(統制的)、Consistency(画一的)、Closed(閉鎖的)の3つのCで表現している。(70ページ)
産業革命後の大量生産時代に優先されたのは効率性であり、Control、Consistency、Closedに象徴されるリーダーシップは理にかなっていた(71ページ)
ようである。
顧客ニーズも多様化、従業員の価値観や働き方も多様化。そんな状況下で、決められた指示通りに組織を動かそうとする(Control)ことや、どんな状況であろうが、誰が相手であろうが、画一的な対応をする(Consistency)ことがもはや時代に合っていないということ。
最近、大手企業からきたマネジャー研修に関する相談で
指示・命令型マネジメントから支援型マネジメントへの変革
というテーマが相次いでいる。Control や Consistency を重視したマネジメントから変えたいようである。
とはいえ、従業員側も Control されることに慣れている節があるので、マネジャーが指示・命令型から支援型になったら驚くか、戸惑うか、気味が悪いと思うだろうな。
そう考えると、リーダーシップの問題だけ解決しても組織は良くならない。フォロワーシップも変革しなければ。(→ フォロワーシップに関するブログ記事)
② 内省はやっぱり大事
理想は1週間に一度の振り返りだが、最低でも1か月に一度は60~90分程度の内省のための時間を確保してほしい(110ページ)
自分のリーダーシップを磨くために、定期的に時間を確保して内省したほうがいいよ、という話。
本には、自分に投げかける質問例が載っている。
例:この1か月間に起きた新しい出来事は何か?その体験から何を学んだか? など
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自分の能力向上のために、振り返り・内省をすることの重要性はこのブログでも何回か書いているが、私が関わっているある研修の事例からも強くお勧めしたい。(→ 内省に関するブログ記事)
以下のような事例である。
大手企業での課長研修(毎年実施中、今年4年目になる)。この研修は2回シリーズになっており、本研修とフォロー研修に分かれている。(各1日間)
本研修とフォロー研修の間は約4か月間あるのだが、この期間に本研修での学び(部下や組織をより良い状態にするための取組)を行動計画に落とし込み、日常で実践し、毎月1回振り返りをすることになっている。
そして、フォロー研修では取組に関する発表をしてもらっている。そこでは以下のようなコメントが頻出する。
- 最初は、振り返りなんて面倒くさいなぁと思っていたけど、やってみると気づくことがいっぱいあって、反省したことを次の月に活かしてみたら部下とのやりとりがうまくいった
- 何となく過ごしているとあっという間に1か月が経つが、時間をとって振り返ってみると、色々と反省するところがあって、やり方を変えると部下の反応も変わるので、マネジメントが楽しくなってきた
研修後でなくてもかまわない。とにかく、定期的に自分のマネジメントを振り返る時間をとること。
マネジメント能力の向上のヒントがたくさん見つかるはず!
③ 日本の社員エンゲージメントが低いのは当たり前?
欧米をはじめとする海外の場合、あまりに社員エンゲージメント水準が低い社員は成果もだせていないことが多いため、自ら活躍できる職場を求めて転職するか、もしくは離職を勧告される。(167ページ)
最近話題の”エンゲージメント”
エンゲージメントのスコアの高い会社は業績が良いなど、経営層にとっては興味をそそられる話題なため、エンゲージメント向上は近年の経営課題にもなっている。
そのエンゲージメントについて、国際間比較では「日本は低い(ほぼ最下位)」と言われている。
その理由は様々あれど、その一つに「日本の雇用慣行がある」という話。
- 嫌でもやる気がなくなっても辞めない。居続ける
- 職能資格制度下でソコソコのお給料をもらっている状況を投げ捨てて、転職する勇気もない
- 成果の出ない社員を(社会通念上)解雇できない
だから、エンゲージメントの低い人が多く回答するので、スコアが(海外と比べて)低い。
いまのエンゲージメントの低さは、日本が創ってきた産物。社員個人の努力やマネジャーの働きかけでこの状況を打開できるわけがない。
日本人の社員エンゲージメントに相関の高い設問項目として、以下のものが挙げられている(183ページ)。
1位:長期キャリア目標の達成見込み
2位:自社の経営陣への信頼
3位:社員一個人に対する尊重
これをヒントに、エンゲージメントを高めようと考えた場合、エンゲージメントの低い社員とキャリア面談を行い、「長期キャリア目標」を考えるように働きかける。
やっぱり今回も ”キャリア支援” か。(→ 最近のバズワードであるキャリアに関するブログ記事へ)
ここまでキャリア支援の重要性をあらゆる点から言われると、とにかくやるしかない・・・。
2位に「経営陣への信頼」とあるが、経営と人事が一体となって、部下のキャリア支援をする、現場のマネジャーへの支援を整えてもらいたい。
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今回読んだ本は、日本企業を取り巻く人・組織に関する課題が整理された内容でした。
一人のマネジャーでは対処できない大きな課題ばかりですので、部下とのコミュニケーションのやり方を変えるといったソフト面での対応だけでは到底解決できません。制度や仕組みといったハード面の変革も必要です。
とはいえ、マネジャーとして、自社の置かれている状況をマクロの視点で考えてみることは、自らの視座を高めたり、視野を広げたり、組織ビジョンを策定したりするなどにとって大切なことだと思います。
時間に余裕があれば、読んでみては。
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