ここ10年以上にわたり、ミドルマネジャーに関わる支援をやってきている中で、ふと思ったことがある。それは、
最近、”リーダーシップ” という言葉を聞かなくなったなぁ・・・
ということである。
同時に、
”マネジメント” という言葉がよく聞かれるようになったなぁ・・・
とも思う。
この点は、私だけでなく、会社の同僚も同じ感想を抱いていた。
世の中の人が、どれだけ ”リーダーシップ” と ”マネジメント” の2語を使い分けているかは不明なのだが、何か原因があるのではと思い、それらに関連しそうな本を探索し、読んでいる。
その中で、今回取り上げたのは、高橋潔 著『ゼロから考えるリーダーシップ』東洋経済新報社, 2021年
著者は、立命館大学総合心理学部教授。ご専門は組織行動論、産業心理学。
この本の、本来のターゲット読者ではないのかもしれないが、現場のミドルマネジャーにお勧めしたい。
少し難い箇所があるかもしれないが、(40~50代対象の)おやじギャグが随所にあり、楽しく読めるし、リーダーシップが体系的に理解でき、現場で役立ちそうなヒントも書かれている。
以下は私の感想。
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① 部下の持ち味を生かす
以下は、”リーダー” ではなく、”マネジャー” の才覚の話。
平凡なマネジャーは、部下を使ってチェッカーをする。・・・(中略)・・・。一方、優れたマネジャーはチェスをする。(24~25ページ)
私は、チェスのこともチェッカーのことも良く知らないのだが、チェッカーは駒の動き方が全部同じらしい。一方、チェスは駒により動き方が異なる(将棋もそうだ)。
優れたマネジャーは、部下それぞれの持ち味を理解し、職場の目標達成に向けて、どう活かすかを考えている ようである。ところが現実は・・・
不平不満が起きないように、できるだけ皆に同じ目標を与えて、同じように扱うように心がけている。これは誤った「平等扱い」だ。
一方で、平等は良くないとして、仕事が早い/高い業績を出してくれる部下を優遇(ひいき)するようなケースも存在する。これも間違ったマネジメント。
優れたマネジャーは個人の違いを認めて、適材適所が基本前提だと考えている。(25ページ)
”適材適所” の意味するところが、もし「人に仕事を付ける」ということであれば、今の潮流である「仕事に人を付ける」という、ジョブ型人材マネジメントとは異なる思想である。
組織の掲げるビジョンや戦略を遂行する人材をいかに採用・配置・育成・処遇するかという具合に、今の潮流は ”適所適材” である。
これからのマネジャーは、適所で活躍する人材をいかにマネジメントできるか、である。
職場の目標を達成するために、ある役割(適所)を全うするために、部下(適材)が持っている強みを、マネジャーが上手に引き出せるか。これが、これからのマネジャーの価値になる。
② 人を教えることが好き
以下も、”リーダー” ではなく、”マネジャー” の才覚のこと。
優れたマネジャーが備えている第2の才覚。それは、人を教えるのが好きかどうかだ。(30ページ)
現場のマネジャーの皆さん、どうだろうか。人を教えるのは好きですか?
注意点は、私たちマネジャーが教えるのは子供ではない。大人であるということ。
伝統的な教師モデルは捨て去らなければならないのだ。(31ページ)
相手の良さを伸ばすコーチングに長けたマネジャーをめざすのがよい。(31ページ)
このブログで以前に書いているが、多くのマネジャーは良かれと思って、教師型モデルで接している。
関連ブログ記事へ
*コーチングの難しさ
*問題解決したがるマネジャー
良かれと思って、である。
教師型モデルがいつもダメだと言っているのではない。相手や状況によっての使い分けは重要。注意したい。
③ 楽観主義
以下の内容は、”マネジャー” ではなく、”リーダー” に必要な素養について。
Q. リーダーの反対語は何でしょうか?・・・(中略)・・・。答えは、「悲観主義者」だ。(41ページ)
「危機感によるマネジメント」という言葉があったが、従業員の危機感を煽ることは、ダラダラとして緊張感のなかった最初のときは良くても、結局は、組織全体の悲観に油を注いでしまう。(42ページ)
現在のように、閉塞感や停滞感の漂う社会において、好機を見出すには楽観主義が必要なようである。
だが、人の脳はポジティブな出来事よりもネガティブな出来事に支配されやすいらしいので、リーダーには 圧倒的な楽観主義 が求められる。
本の中にも書かれているが、あの稲盛和夫氏は「心に描いたとおりになる」と言っている。
私は又聞きなのだが、有名なラグビー選手であられた故平尾誠二氏は「イメージできないものはマネージできない」とおっしゃっていたらしい。楽観的に、ポジティブなことをイメージすれば、結果もそうなるのであろう。
いやぁ~、私は悲観主義者だからなー
という人も、「性格が変えられる」というのが、現代心理学の主流の考え方(44ページ)のようである。
個人的には、性格を変えるのは簡単ではない(が行動は変えられる)と思っているが、リーダーとして楽観主義が重要なのは納得できる。
自分はどうだろうか。まあ、どちらかというと楽観主義者かな。
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この本には、「へえ~」と「なるほど」が詰まっている。次回も続きを書く。
ちなみに、「ミドルマネジャーに関して、最近”リーダーシップ”という言葉を聞かなくなった」という点の分析は次回以降に。
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