戦略の遂行、目の前の業績管理、顧客からのクレーム対応、部下のエンゲージメント/メンタルヘルス向上、コンプライアンスの徹底などなど、無理ゲー状態にある現代のマネジャー。
ほんと、毎日大変ですよね。
そんなマネジャーの負担を少なくできるのか。
今回読んだ本は、その点について触れている。
サイボウズ取締役である山田理氏の著書『最軽量のマネジメント』サイボウズ式ブックス(2019年)。
表紙に「マネジャーにすべてを背負わせるのはもうやめよう。」と書いてある。
このブログの記事では ”マネジャーはどうすべきか” を書いていることが多いが、山田氏は
「これからのマネジャーはどうすべき」かという重荷ではなく、「どうすればマネジャーの仕事を減らせるのか」という軽やかさを示したい
と言っている。
この本を読んで、マネジメントが少しでも楽になれるヒントが得られるか。
以下は私の感想。
**************
① キャリアビジョンは持っていなくてもOK
サイボウズは、すべての社員が自走型の人材として活躍してほしい、とは思っていません。いろんな人がいていい、と考えています。(210ページ)
最近話題の「キャリア自律」。
上司と部下の間で行われるキャリア面談では、部下の Will・Can・Must を聞きなさいといった指導をしている会社は多い。(→ Will・Can・Must ってなんだ?という人向けの記事へ)
過去にキャリア面談なんて経験したことがない現代のマネジャーは、戸惑いながらも、部下にWill(将来やってみたいこと)を質問する。
すると、部下の答えは「特にないです」。
こんなケースを耳にする。
企業は、将来を見据えての構想づくりや種まき、実験も大切。同時に、目の前の業務を回し、日銭を稼ぐことも同じだけ大切。
キャリアビジョンなんて持っていなくても、決められた業務を丁寧に遂行してくれる人だって会社にとって貴重な資本だ。
社員のキャリア自律は重要だが、全ての社員がキャリアビジョンを持つべきという、おかしなメッセージが現場に拡散していないか注意。
キャリアに関する思考だけではない。会社には色んな人がいていいじゃないか、という思想(ダイバーシティ&インクルージョン的な思想)がマネジメントを軽くする。
ここでは説明を端折るが、なるほど。
② 質問責任を果たす
マネジャーにはメンバーに対する「説明責任」もありますが、自分が何かわからないことがあるならば、同じように、上に対する「質問責任」があります。(232ページ)
上から下りてきた指示内容を自分が理解していない場合、それを部下に伝えようとすると、部下はますます指示内容を理解できないだろう。
部下からの質問に対して、憶測で答えたり、当たり障りのない話で煙に巻く。最悪なのは「俺もよく分かんないんだけど」と言って済ませること。
本にも書いてあるが、こういったことは上層部と現場の断絶を生むことになる。
そうすると、余計な仕事が発生したり、誤った事態が起こったりして、マネジメントの負荷が増す。
上司から指示を受ける時点で分からないことがあったら、必ず質問する。
上司も「分からない」という場合は、確認して教えてくださいと依頼する。この一言が言えない組織は、マネジメントが軽くならない。なるほど。
③ この会社に居続けたいと思わせる
「早く辞められる」とはつまり、ほかのどの会社でも活躍できる素晴らしい人になってくれる、ということ。(中略)「それでもいいからサイボウズで働きたい」と思ってくれるような会社にするのが、経営陣の役割ですし勝負どころだと考えています。(257ページ)
ほんとにその通りだと思う。
現場のマネジャーから「部下のキャリア自律を促した結果、もし「会社を辞めたい」って部下が言ってきたらどうすればいいんですか?」という声が出ることがある。
上司としては、部下の意思を尊重し、どんな選択も応援するのが第一義ではないだろうか。
部下が優秀であれば尚更、引き止めたい気持ちになるのは理解できるし、引き止めてはいけないということではない。
ここで言いたいのは、キャリア自律を促す取り組みとは別に、社員が「この会社で働き続けたい」と思うような取り組みが必要だということ。別次元の課題である。
**************
この本を読んでみて、内容を実践すればマネジメントが軽くなるかと言えば、たぶんYES。
ただし、マネジメントの基本(マネジャーの基本役割)を理解していることを前提にしないと、この本に書かれているだけを実践しても組織は回らない。
コメント欄