「人材育成・組織開発を考える部屋」にもお立ち寄りください!

360度評価は育成目的でこそ(その4)

アンケートシート 360評価
この記事は約4分で読めます。

これまでのブログ(前々回)(前回)で、360度評価に関する5つのポイントを紹介してきている。それは以下のものである。

1.設問
2.事前案内
3.協力者選び
4.結果のフィードバック
5.フォローアップ

今回は、最後である5番目の「フォローアップ」について書いていく。

4番目の「結果のフィードバック」で、マネジャーは自らの成長課題と行動計画を考える。職場が今よりイキイキとした姿になり、より大きな組織成果をあげるために、マネジャーとしてどう振舞うかを明確にするのである。

さあ、あとは実践あるのみ・・・・・なのだが、ここに大きな壁が潜んでいる。

計画倒れになりやすい

360度評価の結果のフィードバックから刺激を受け、「よし、頑張るぞ!」と心に決めて考えた行動計画のはずなのに、現場に戻ると実践しないか、徐々に実践しなくなる。

なぜそうなるのか。マネジャーの立場からすれば、言いたい理由は色々あるだろう。

例えば、突然人が変わったような発言や行動を見せることで、部下からどう見られるのかと思うと恥ずかしくて実践できない。あるいは、会社から成果やスピードが強く求められ、分かっちゃいるが、ついつい従来の自分で対応してしまう・・・・など。

加えて、これまでの組織運営上、よほどの不都合やトラブルが生じていなければ、何としてでも自分の行動を変えなければならないという動機にはなりづらい

これでは、360度評価を行った意味がまるでなくなる。だからこそ、フォローアップが重要である。

上長の巻き込みができれば

フォローアップのやり方は色々とある。代表的なものは、上長の巻き込みだ。360度評価の対象が課長であったのなら、部長を巻き込むということだ。

そんなに大げさなことではなく、主幹部署から部長に「課長の変容ぶりを見てあげてください!」とお願いすることである。課長がどのような行動計画を立てたかは、フィードバックの後に、課長自身から部長に説明させるのが理想である。

前回のブログで記載したが、360度評価の結果フィードバックは、本当は対象者の(育成責任者である)上長が行うのが理想である。しかし、上長にそこまでの役割を担ってもらうのは現実的に難しい。

せめて、360度評価を受けて以降の課長の奮闘ぶりを観察し、彼/彼女らの頑張り、行動変容を応援してもらいたい。

オンライン会議でのフォロー

最近はZoomやTeamsなど、オンライン会議は当たり前になっている。これを活用しない手はない!

360度評価の結果フィードバックから1~2か月くらい経過したら、主幹部署から各マネジャーにコンタクトし、オンラインで実践状況を教えてもらうのも良い。「行動計画、やってますか?やってみてどうですか?」と。

行動計画を忘れかけていたり、忙しさにかまけて実践していない状況だったりした場合、ネジを巻きなおす良い機会になるはずだ。

※ このときに、主幹部署の人がコーチングの知見を持っているのであればコーチ役を担ってもらいたい。

グループ単位でのフォローアップ

オンライン会議は個別でなくてもかまわない。結果のフィードバックをグループに対して行った場合、そのときのメンバーを3~4名単位にわけて、彼/彼女たちどうしで行動計画の実践状況について対話する場を用意するのである。

グループの中に頑張っている人がいた場合、さぼりがちな人にとっては刺激剤となるはずである。頑張っている人から、「最近職場が元気になってきた」とか「部下の●●さんに笑顔が増えてきた」とかいう発言を聞いたなら尚更である。

グループでのフォローアップには、行動変容の促進だけでない効果もある。それはネットワーキングである。

「仕事の助言やコメントをもらえるマネジャー」はそうでないマネジャーと比べて職場業績が高いという研究結果もある。 ※ 出典:中原淳『駆け出しマネジャーの成長論』中公新書 2014年

マネジャーは孤独である。ひとりで悩み、考えながら指示をだしたり、判断をしている。

そんな中で、同じ会社のマネジャーどうしというのは、直接の利害関係がなく、そこそこの深い話し合いができる ”ちょうど良い” 関係である。

月に1度、30~60分間で充分なので、オンライン上でグループで集まり、360度評価の結果フィードバックで立てた行動計画を振り返り、情報交換や対話をする場をつくることをお勧めしたい。

**************

これまで360度評価について述べてきたが、上手に活用すれば、マネジャーの成長につながる有益なツールである。せっかく行うのであれば慎重に、丁寧に、徹底的に。